2回目の決戦日 アレン回想 後編
「「「それでは! 『それでは!』 素敵な! 『素敵な!』 姫から! 『姫から!』 一言! 『一言!』 頂きまっしょい! 『オーイ!』」」」
「ネフィスくんいつもずっと一緒にいてくれてありがと!」
「「「アーリガッザーイ! 『アリガッザイ!』 それでは! 『それでは!』 姫様! 『姫様!』 ありがとうございます! 『ありがとうございます!』 うーソレソレ! 『ワンツーいやほい!』 ナンバーワン! 『ナンバーワン!』 王子が! 『王子が!』 目指すは! 『目指すは!』 ナンバーワン! 『ナンバーワン!』 ディメンション全員パーリーピーポー! 『今夜もフロアはお酒の戦場!』 酒をー浴びるぜ! 『ごっつぁんです!』」」」
次のコールの席を確認するために内勤を探したら、シャンコが終わった各席のシャンパンペールとグラスを片付け始めていた。
コールラッシュはキキちゃんで一旦終わりという事だろう。さすがにこれ以上お客様達をポツンと一人に出来ない、助かった。
ネフィスはこのままキキちゃんに着くから僕はみゅうの席だ! ダッシュで戻った。
「むぅっ! アレンきゅんっ! どういうことにゃのっ⁉」
みゅうが「プンプン!」と声に出して言っている。無言のしゅりの顔からはゴーストのように表情が消え失せていた。
「え? 何が?」
「『ずっと一緒』って朝までってことぉっ⁉」
その質問は想定内、キキちゃんが発言した瞬間から対策は考えた。
僕はビックリした表情を作ってみる。というかそのオツムで理解出来ていた事に本当にビックリだ。やっぱり女のカンは怖いな。
「……あはははは! そんな訳ないよ! 店でそういうのが禁止されてるのは知ってるよね? うちの店の代表は魔王だよ⁉ 僕もネフィスもまだ死にたくない」
「みゅ……でもぉ……」
「あの子は常連だからただそれだけ。それより僕がみゅうのお店に行ったのはギリギリだったんだよ? これからもネフィス以外には内緒にしてね?」
みゅうの耳元に息がかかるように顔を近づけて囁いた。おっと、みゅうの化粧の臭いは苦手だ。
「……うんっ☆」
ワインを手に取ってみゅうから顔を離した。キキちゃんの一言なんて取るに足らない事のように話題を変える。
「みゅう達の飾りはいつだろうね? 楽しみ!」
「ふふん! もう勝負はついてるのだっ☆」
きっとみゅうの想像とは正反対でね。
「……ネフィスきゅんまだ?」
しゅりの機嫌は直らなかった。ネフィス……後は頼んだ。
ネフィスに念話して戻って来てもらい、僕はまた一通り指名客回りをする。次のコールが始まるまでに終わらせないと!
シャンコが再開されたのはミアの席、アンナちゃんだった。
……泣いてる。ミアはいいお客様に恵まれたな。お客様はナイトを映す鏡なのかもしれない。ミアは純粋で天真爛漫だから。
「なんとなんとー! 『なんとなんとー!』 美しい姫から! 『美しい姫から!』 ユニコーンとペガサス頂きましたァーーー!」
「「「アッザース‼」」」
……みゅう達だ。この後のタワーのフォローはどうしようかな。
取り急ぎ戻り、みゅうの隣へ座る。
約束通り代表も来てくれ、ドカッ! とネフィスの隣に座った。……代表ってなんか貫禄が凄いんだよな、魔王としてというよりナイトとして。
「あっ! 代表ぉ〜♡ ぺがしゃす入れたにょぉ〜♡」
「おう! 流石だな、お前らの勝ちだ! ははは!」
「みゅみゅっ☆」
……代表の言動を上手く使えって事だ。コールが進む中、この後の対策をいくつか考えおく。
「「「それでは! 『それでは!』 素敵な! 『素敵な!』 姫から! 『姫から!』 一言! 『一言!』 頂きまっしょい! 『オーイ!』」」」
「ユニコーンより高いおしゃけ入れたにょ~♡ モエリとかクリハーとかぁ、眼中ににゃぁい♡」
よかった、しゅりは汚く罵らなかった。
「「「…………」」」
ナイト達はみゅうの一言を待っていたけど、みゅうが何も言わないのでコールが再開された。
「「「…………アーリガッザーイ! 『アリガッザイ!』 それでは! 『それでは!』 姫様! 『姫様!』 ありがとうございます! 『ありがとうございます!』 うーソレソレ! 『ワンツーいやほい!』 ナンバーワン! 『ナンバーワン!』 王子が! 『王子が!』 目指すは! 『目指すは!』 ナンバーワン! 『ナンバーワン!』 ディメンション全員パーリーピーポー! 『今夜もフロアはお酒の戦場!』 酒をー浴びるぜ! 『ごっつぁんです!』」」」
「これでアレンきゅん何位⁉」
「えっと……4位かな? ネフィスは2位だと思う、1位はミアだ」
今はね。
「しゅり、よくやった」
「ネフィスきゅんっ♡ しゅりのおかげで2位にまでなれたんだよぉっ? 明日もがっ!」
ネフィスがしゅりの口を手でふさいだ!
「さて、俺は裏に戻るわ。じゃぁな! ははは!」
代表が空気を読んで席を抜けてくれた。
「バカ、代表の前で言うなよ。あーあ、もう勘付かれたぞ、明日は会えないな」
「はにゃっ⁉」
ネフィス……上手い。代表を使ってしゅりから店休日デートに誘われる前に断った。みゅう達で休日が丸々潰れるのは死ぬほどキツイ、ありがとう。
「みゅみゅっ? あれにゃにしゅるのぉ?」
シャンパンタワーがホール中央へ移動させられた。
僕は無言でスッと立ち上がってクーの席へ向かう。
「アレンきゅん? ……え? ……ちょっとぉーーー!」
「「「さあー始まりました! 『始まりました!』 なんとなんと! 『なんとなんと!』 シャンパンタワー! 『シャンパンタワー!』 6段! 『6段!』 ぶち込んで! 『ぶち込んで!』 くれたのは! 『くれたのは!』 こちら! 『こちら!』 素敵な! 『素敵な!』 姫と! 『姫と!』 王子! 『王子!』 ありがとうございます! 『ありがとうございます!』 ディメンション全員集合! 『集合ー!』」」」
マイクのヴァンがピンと伸ばした手で僕とクーの席を示し、ナイト達がゾロゾロとタワーへ向かって来る。
「さぁおいでプリンセス、魔法の仕上げだ」
これから何が起こるか分かっていない無垢な姫の手を取り、タワーの前へエスコートした。
まさか自分が今まで起こっていた異次元の喧騒のど真ん中に来るとは思ってもいなかったんだろう。へっぴり腰でよたよたと、でも諦めたように僕に付いてきた。
「「「さーディメンションのナイト全員集まったところで! 『オイ!』 タワーの! 『オイ!』 準備! 『オイ!』 できた! 『オイ!』 ところで! 『オイ!』 1本目いきまっしょーい! 『オーイ!』」」」
ポンッ!
「一緒に上から注いで?」
そう言いながらクーとシャンパンの口をタワーの頂点へ接吻させる。
ああ……懐かしいな。たった1ヶ月前の事なのに。
「「「それでは! 『それでは!』 素敵な 『素敵な!』 思い出を! 『思い出を!』 姫様! 『姫様!』 ありがっとーーーい! 『ソレソレソレソレ!』 さあモエリ白! 『モエリ白!』 ついじゃってーついじゃってーついじゃってー! 『ついじゃってーついじゃってーついじゃってー!』 ついじゃってーついじゃってーついじゃってー! 『ついじゃってーついじゃってーついじゃってー!』 ついじゃってーついじゃってーついじゃってー! 『ついじゃってーついじゃってーついじゃってー!』」」」
「「「ハイッ! 15本完了! さータワー完成したところで! 『オイ!』 姫と王子の! 『姫と王子の!』 一言! 『一言!』 頂きまっしょーい! 『オーイ!』」」」
凪いだ水面に、今まで散々コールの流れを見てきたクーが静かに一滴の波紋を拡げた。
「……か、看板の顔……に……ど、泥を塗ることは……許しま……せん……」
「ありがとうございます……」
クラリゼッタ様。
「「「アーリガッザーイ! 『アリガッザイ!』 それでは! 『それでは!』 姫様! 『姫様!』 ありがとうございます! 『ありがとうございます!』 みんなでシャンパン頂きまーす! 『頂きまーす!』」」」
頂点のグラスは貴方の物です。
クーへ差し出したグラスの先に、ぼうっと彼女の幻影が見えた。
アレン回想編 ~Fin~
まだ戦後処理が残っていますねぇ……後は魔王様の解説?
ニーナ「魔王様教えてくださいぃ!」




