2回目の決戦日 ラストオーダー合戦! 決着編
そんなの……そんなの……予定に無かったはず……ッ!
お兄ちゃんとラウンツさんがシャンパンタワーを台ごとダンスホール、つまり一般席の真ん中へ移動させてる……。
一瞬こっちを見たお兄ちゃんと目が合った。ニヤニヤしてるっ! 何を企んでるのっ⁉
「ヤバイヤバイ‼」
私の後ろでジルさんが叫びながらシャンパンを冷やしてる! モエリ白だ!
「クックック……やっぱりカリンちゃんタワーきたね……」
「タワーは一番目立つものね……流石よ……」
アーニャとルルさんは完全にカリンさんだと思ってる……。
魔王様をチラ、と見ると「フンッ!」ってドヤ顔で笑われた。くっ……!
ヴァンさんのマイクでタワーのコールが始まる!
「「「さあー始まりました! 『始まりました!』 なんとなんと! 『なんとなんと!』 シャンパンタワー! 『シャンパンタワー!』 6段! 『6段!』 ぶち込んで! 『ぶち込んで!』 くれたのは! 『くれたのは!』 こちら! 『こちら!』 素敵な! 『素敵な!』 姫と! 『姫と!』 王子! 『王子!』 ありがとうございます! 『ありがとうございます!』 ディメンション全員集合! 『集合ー!』」」」
タワーの前に来たのは……えぇっ⁉
「カリンちゃんじゃないの⁉」
「まさか……」
アレンさんが初回の女の子をタワーの前へエスコートしてる⁉
「モッ、モエリ白6段だけで総計195万ですよ⁉ あ、あの子お金持ってるんですか⁉ 初回でタワーってどういうことですかっ⁉」
その答えはアーニャからもルルさんからも返ってこない。もちろん魔王様からも。その間に内勤全員がバタバタとモエリを取りに来た。
待って……待って……現時点でルフランさんとアレンさんの差は約285万……。このタワーの後にカリンさんのペガサスが入って差は350万に開く……だけどそこにミュリエルさんのユニコーンとペガサス総計390万が来たら……アレンさんがひっくり返すの⁉ 6位から⁉
「「「さーディメンションのナイト全員集まったところで! 『オイ!』 タワーの! 『オイ!』 準備! 『オイ!』 できた! 『オイ!』 ところで! 『オイ!』 1本目いきまっしょーい! 『オーイ!』」」」
ポンッ!
「「「それでは! 『それでは!』 素敵な 『素敵な!』 思い出を! 『思い出を!』 姫様! 『姫様!』 ありがっとーーーい! 『ソレソレソレソレ!』 さあモエリ白! 『モエリ白!』 ついじゃってーついじゃってーついじゃってー! 『ついじゃってーついじゃってーついじゃってー!』 ついじゃってーついじゃってーついじゃってー! 『ついじゃってーついじゃってーついじゃってー!』 ついじゃってーついじゃってーついじゃってー! 『ついじゃってーついじゃってーついじゃってー!』」」」
アレンさんが、おずおずとした女の子と一緒にタワーグラスの頂上からシャンパンを注ぐ。
私の脳内に溢れ出す数々の疑問と同じように、どんどんタワーグラスにシャンパンが溢れ、零れ落ちていく……。
カリンさんを見ると心なしか怪訝な顔をしていた。
はみゅエルさんはポカンと口を開けてその様子を見ている。
モエリ白6段……この状況……。
「「「『ついじゃってーついじゃってーついじゃってー!』 ハイッ! 15本完了! さータワー完成したところで! 『オイ!』 姫と王子の! 『姫と王子の!』 一言! 『一言!』 頂きまっしょーい! 『オーイ!』」」」
フロアがシン……と静まり返る。
「……か、看板の顔……に……ど、泥を塗ることは……許しま……せん……」
聞こえてきたのは女の子の蚊の鳴くような声。
「ありがとうございます……」
アレンさんがゆっくりとそう言いながら右手を左胸に当てた。
「「「アーリガッザーイ! 『アリガッザイ!』 それでは! 『それでは!』 姫様! 『姫様!』 ありがとうございます! 『ありがとうございます!』 みんなでシャンパン頂きまーす! 『頂きまーす!』」」」
アレンさんが頂上にあるグラスを女の子へ渡す。女の子ではなくグラスを見つめるその目は……?
「「「ジャンジャン飲め飲めー! ジャンジャン飲め飲めー! ジャンジャン飲め飲めー! ジャンジャン飲め飲めー! ジャンジャン飲め飲めー!」」」」
ナイトさんが全員、次々とシャンパングラスを空けていく! アレンさんは相変わらずものすごい勢い! ミアさんは「お祭りニャー!」と両手に持ったグラスを掲げてから飲み干し始めた。
「「「それでは! 『それでは!』 姫の愛を! 『姫の愛を!』 全て頂きましたァ! 『アーッザーーース!』 うーソレソレ! 『ワンツーいやほい!』 ナンバーワン! 『ナンバーワン!』 王子が! 『王子が!』 目指すは! 『目指すは!』 ナンバーワン! 『ナンバーワン!』 ディメンション全員! 感謝の気持ちを込めまして! 『あーりがとうございまーーーす!』」」」
……タワーが終わった。先月と同じく、タワー台に散乱した空のグラスはただの残骸と化した。
「……あの子誰かな⁉ もしかして本当に貴族⁉」
「いえ、所作が明らかに一般人よ……でも……」
ルルさんが「でも……」に続く言葉を発しないのは私と同じことを考えているからだ。初回タワーなんて普通はあり得ない、でも……でも……でも……!
「あっ! ついにカリンちゃんだよ! 何入れるのかな~⁉」
「ぎゃぴっ⁉ って事はミュリエルさんがラスト⁉」
「え? ブヒエルちゃん? ……あ、そっか、片方はまだ何もしてないね。じゃぁ……ラストのアレンくんが連続ナンバーワン⁉」
「恐ろしいわ……アレン君……っ!」
どどど、どうなるのぉ⁉
「「「さあ本日ラストー! 『ラストー! ッハイ! ッハイ! っはいはいはい! ッハイ! ッハイ! っあーいやそれ!』 『ッハイ! ッハイ! っはいはいはい! ッハイ! ッハイ! ワンツーいやほい!』 た・の・し・いナイトの遊び方ァ!『ハウトゥー!』 す・て・き・なお酒を卸してよ! 『ギヴミー!』 愛・情・表・現飲めるならァ! 『OK!』 いくぜーディメンション! 『集合ー!』」」」
来た! カリンさんのペガサス!
……「本日ラスト」? これで終わり⁉ えっ⁉ ルフランさんがナンバーワン⁉
アーニャとルルさんも混乱しているようで「え? ラスト? ブヒエルちゃん弾切れ?」「そんな……」と驚愕している。
身体強化でググっと視力を上げ、キキマカリンさんの席に群がっているナイトさん達の隙間から2人を覗く。
ルフランさんが肩に腕を回しているカリンさんの表情は強張り、緊張していた。
「「「ナイト! 全員! 集まったーところで! 『トゥナイ!』 飲めやー騒げや今宵の宴は! 『宴は!』 王子と姫の独壇場! 『独壇場!』 今すぐ君にー会えるなら! 『ッエイ!』 騒ぎ出す! 胸騒ぎ! 『ハイハイハーイ! ハイハイハーイ!』 踊れー騒げー最高の夜に! 『ハイハイハイ!』 ペガサス! 『ペガサス! いただっきゃす!』」」」
「「「それでは! 『それでは!』 素敵な! 『素敵な!』 姫から! 『姫から!』 一言! 『一言!』 頂きまっしょい! 『オーイ!』」」」
「ナンバーワン……は……?」
「お前が俺の勝利の女神だ!」
ルフランさんが心から喜んでいるように見える! 今まで見た事が無いくらい笑顔がキラキラしてるっ! 避妊案件だ! メイリアさんに眼球を捧げておいた方が良かったかも!
「……っ⁉ ……やったぁ……やったあーーーーー‼ ホント⁉ ホントにナンバーワンッ⁉」
「俺がナンバーワンだ!」
「……ルフランッ!」
カリンさんが感極まってルフランさんに抱き着いた!
ガシャーーーン‼
あああっ! たぶん抱き着いた勢いのせいでグラスが落ちたよぅ! でもそんなのお構いなしに2人はぎゅうぅっと抱き合っている。
「「「アーリガッザーイ! 『アリガッザイ!』 それでは! 『それでは!』 姫様! 『姫様!』 ありがとうございます! 『ありがとうございます!』 うーソレソレ! 『ワンツーいやほい!』 ナンバーワン! 『ナンバーワン!』 王子が! 『王子が!』 ナンバーワン! 『ナンバーワン!』 ルフランが! 『ルフランが!』 ナンバーワン! 『ナンバーワン!』 ディメンション全員! 感謝の気持ちを込めまして! 『あーりがとうございましたァーーー!』」」」
ルフランさんカリンさん……おめでとう……ここまで長かったね……。そしてやっぱりグラス割ったね……。
お兄ちゃんが割れたグラスを片付けて、ラウンツさんがカリンさんの濡れた服に洗浄魔法をかけてあげていた。
「何この魔法⁉ 私にも教えて! 客に使うからっ!」
「人族には難しいらしいわよっ⁉ でもカリンちゃんなら来店した時に教えてあげてもいいわぁっ☆」
ラウンツさん……おネエ封印はどこへ? もっとアーニャみたいに厳重に封印していただきたい。ついでにネグリジェとベビードールも。
そういえば……本当にミュリエルさんは何も入れてなかったの? アレンさん何位⁉
そしてキキカリン・はみゅエル戦争はどっちが勝ったの⁉
151話 ~メニュー表~ にタワーと卓番を追記してあります。
次回は魔王様の解説? いえいえ、まだまだたぎりますのでお楽しみに!




