2回目の決戦日前哨戦! 後編
ララさんがクリスタルハートを入れたっ!
「ララちゃん意外とセシルくんにゾッコンだね! 音楽いっくよー!」
「「「『ッハイ! ッハイ! っはいはいはい! ッハイ! ッハイ! っあーいやそれ!』 『ッハイ! ッハイ! っはいはいはい! ッハイ! ッハイ! ワンツーいやほい!』 た・の・し・いナイトの遊び方ァ!『ハウトゥー!』 す・て・き・なお酒を卸してよ! 『ギヴミー!』 愛・情・表・現飲めるならァ! 『OK!』 いくぜーディメンション! 『集合ー!』」」」
「「「ナイト! 全員! 集まったーところで! 『トゥナイ!』 飲めやー騒げや今宵の宴は! 『宴は!』 王子と姫の独壇場! 『独壇場!』 今すぐ君にー会えるなら! 『ッエイ!』 騒ぎ出す! 胸騒ぎ! 『ハイハイハーイ! ハイハイハーイ!』 踊れー騒げー最高の夜に! 『ハイハイハイ!』 クリスタルハート! 『クリスタルハート! いただっきゃす!』」」」
セシルさんがララさんの腰に手を回し見つめ合っている……。 私からだとセシルさんの後頭部しか見えないけどララさんの顔は真っ赤だ。
「「「それでは! 『それでは!』 素敵な! 『素敵な!』 姫から! 『姫から!』 一言! 『一言!』 頂きまっしょい! 『オーイ!』」」」
「え、えっと……好きっ!」
「「「アーリガッザーイ! 『アリガッザイ!』 それでは! 『それでは!』 姫様! 『姫様!』 ありがとうございます! 『ありがとうございます!』 うーソレソレ! 『ワンツーいやほい!』 ナンバーワン! 『ナンバーワン!』 王子が! 『王子が!』 目指すは! 『目指すは!』 ナンバーワン! 『ナンバーワン!』 ディメンション全員パーリーピーポー! 『今夜もフロアはお酒の戦場!』 酒をー浴びるぜ! 『ごっつぁんです!』」」」
「キャー! ララちゃんが告白したよっ! セシルくん色恋かな⁉」
アーニャが興奮してる……トッドさんの時みたいにララさん応援隊とか作らないといいけど。
「セシルやるな~。 あいつはムッツリタイプだな、ははは!」
「魔王様! セシルくんはどうやってララちゃんを落としたの⁉」
「そこが分からないから面白れぇんだろ!」
「今度指名してみよっかな!」
アーニャ自ら色恋に引っかかりに行くの? それってもう色恋じゃないんじゃ……。
そしてついにラストオーダーとなり、ヴァンさんのお客様や他のナイトさんのお客様が次々にシャンパンなどを入れた。
シャンパンの度にヴァンさんがビンダ指名されるのは予定調和だ。 特にヴァンさんのお客様の間には謎の連帯感がある……。 ヴァンさんの席でシャンパンしか入らないのは絶対ビンダで潰すためだよねっ⁉
シャンコが鳴り響く中、ちょっと売り上げの途中経過をコーディさんに見せてもらった。
えっと、大体ヴァンさん257万、ミアさん234万、セシルさん231万、ルフランさん208万、ネフィスさん146万、アレンさん123万かぁ……。
アレンさんがナンバー落ちだ。 「ナンバー」と呼ばれるのはナンバー5まで、という風潮がいつの間にか出来上がっているのだ。
ルフランさんはカリンさんとセリーヌさんがいるから今月も一気に駆け上がるんだろうな。
「嘘……ララちゃんいくら持ってきたの⁉」
「えっ⁉ 何々アーニャ!」
「モエリブラックまで入れたよ!」
ぎゃぴっ⁉ 30万!
「あはは、これで今日は終わりです。 セシルが暫定1位ですよ」
コーディさんがキャッシャーから身をのけぞって私達に教えてくれた。
「ララちゃん本気出し過ぎ!」
「セシルさん……恐ろしいですっ! ダークホースですっ!」
「ぶはは! セシル化けたな!」
魔王様は喜んでるけど私の心臓が持たないようっ! こんなに使わせて大丈夫なのっ⁉ ララさんイベントとか起きないよね⁉ 勘弁してぇ!
「「「それでは! 『それでは!』 素敵な! 『素敵な!』 姫から! 『姫から!』 一言! 『一言!』 頂きまっしょい! 『オーイ!』」」」
「セシルくんがちんちん魔法に負けるわけにはいかないから!」
「「「アーリガッザーイ! 『アリガッザイ!』 それでは! 『それでは!』 ビンダの! 『ビンダの!』 ご指名は? 『ご指名はっ!』」」」
「ヴァンくん飲んでいいよ!」
「やっぱり! みんな俺に何の恨みがあるのぉおおおおおーーー⁉」
「「「ご指名! 『ご指名!』 ヴァン! 『ヴァン!』 グイグイ! 『グイグイ!』 グイグイググイの! 『グイグイググイの!』 感謝の! 『感謝の!』 気持ちを! 『気持ちを!』 込めまして! 『込めまして!』 『ごっつぁんでーーーす!』」」」
「俺もう酒キライだーーーーー!」
ヴァンさんが泣きそうな顔でトイレへダッシュしてる……。
「ララさん、今日の時点で1位になりました。 ありがとうございます」
セシルさんの会話! 気になる! アーニャとコッソリフロアを覗いた。
「うん! カリンちゃんが手強いからナンバーワンは無理かもしれ────」
セシルさんがララさんの耳元に顔を近づけた! 何々⁉ 集音魔法にありったけの魔力を込めた。
「明日来てください。 直接ナンバー結果を伝えたいです」
「っ⁉ ふぁ、ふぁい!」
……ちょっとーーー! どういう事⁉ 明日もお店に来てって事⁉ まだ搾り取るつもりなの⁉ セシルさんっ!
「魔王様! 聞こえた⁉ セシルくん枕かな⁉」
「どうだろうな~。 アーニャは枕に賭けるか?」
魔王様がニヤニヤしてる。
「枕に賭けるよ! だってこんなに使ったんだもん!」
「え? あ……セシルさんのお家に呼ぶって事ですか?」
「そうじゃない? ニーナは何だと思ったの? あ、ニーナ、セシルくん枕だと思う⁉」
「ええ……セシルさんは枕であってほしくないよぅ……」
「ちょっと決戦日の後に尾行して〈影移動〉で覗いてきてよ!」
「ひぇっ! やだようっ! 万が一のことがあったら見たくないっ!」
「えー! 気になるよー!」
「アーニャが枕に賭けたって事はもう答えは出てるでしょ!」
「ヒドイ! たまには当たるんだから!」
アーニャは無視して営業後の片付けを始めた。
「あっ! ヴァンくん死んでるね! 早速実験実験!」
ソファでキャサリンを抱きながら永遠の眠りについているヴァンさんにアーニャが近づき、うつむいて胸の前で両手を組んだ。
「闇夜の狂乱に蝕まれし子羊よ……今ここに月の女神の聖なる光を以って浄化する……嘆きの魂よ! 月光より暁へと変貌する理に遵従せよ! 〈解毒〉!」
アーニャから発された聖なる光とやらはヴァンさんの身体全体を包み込んだ。
ってか、これだけ仰々しい詠唱をしたのに技名は〈解毒〉なんだ……カッコ悪い。 いや、普通でいいんだけど。
「ん……? アーニャちゃん何……スゲェ! 光ってる! 聖魔法⁉」
「フッフッフ……どぉ? 具合治った?」
「おお! なんかすごく! うっ……!」
ヴァンさんは口元を押さえながらトイレへ走った。
「うるおろろるろろろおおおおおおおおええええええええええ!!!!!」
……だよね。 魔力感知してたけど、アーニャから発されたのはただの聖属性の光だもん。 簡単に言えば生活魔法の〈発光〉だ。
「クッ……やはり効かない……だとっ⁉」
「アーニャちゃん、詠唱というのは魔力を言霊に乗せて魔法の効果を高めるものよ。 先に魔術式を理解していないとオリジナル魔法を作るのは難しいわ。 聖属性魔法を使いたいなら魔術式を教えてあげましょうか?」
アーニャのデタラメ詠唱を見かねたルルさんが声をかけた。
「ぎゃあ! 私魔術式は無理っ!」
「……でもそのカッコイイ詠唱をメイリアちゃんのために使いたいと思わない?」
「クッ……!」
「アーニャ、俺も勉強付き合ってやるから」
「え? ……レイスターも私のカッコイイ詠唱を唱えたいんだね! しょうがないなぁ~門外不出だよ⁉」
「ち、ちげぇし!」
お兄ちゃんは厨二詠唱を唱える大義名分が欲しいんだと思う……頑張ってね。 厨二病の2人ならきっと出来るよ!
ララ「せ! 先月使わなかった分があったから!」




