ところで勇者っている?
「世界のけーさつとは何じゃ……?」
「警察ってのは憲兵の事だ。 俺様が世界の治安を調整する。 魔族の好感度アップキャンペーンだ!」
「好感度アップならアタシに任せてっ☆」
意味が分からないよぅ! 魔王様が憲兵なんておかしいよぅ! ラウンツさんはスルー!
……ハッ! これはもしかして暗に人界征服を示唆しているのでは⁉
魔王様が戦争を鎮圧することで人族からの信仰を得、じわりじわり治安維持という名の人界征服を……ふっふっふ! 魔王様さすがです! 私にはバッチリ伝わってますよ!
その意味を込めて魔王様に親指を立てグーサインをしたけど無視された。 あれ? ……しくしく。 でも王様にバレるわけにはいかないですもんね! ナイスポーカーフェイスです!
「確かに魔族の力をもってすればどの国もお主に従うしかなかろうが……征服と変わらんのではないか?」
ギクゥッ! 王様に早速バレてる!
「俺がいつオルガを征服した? 店をやってるだけだろ」
「……そうであるな。 お主は本当に酒場を経営するだけじゃのぅ……騙されておる気がしないでもないが」
カンのいい王様は嫌いですぅ! これから征服します! ごめんなさい! でも人族は殺さないですから!
「はー、人族の魔族への不信感は根強いな! 仕方ないけど。 あっ! そういえばこの世界に勇者っていないのか?」
「ゆ、ゆーしゃ?」
また魔王様が意味不明な事を言い出したよぅ! ゆーしゃって何っ⁉
「ホラ! 神から魔王を倒す啓示を受けたやつとかさ、魔王を倒すために異世界から召喚したりとかさ! よくあるだろ⁉」
よくあってたまりますか! 異世界なんて話は転生した魔王様とそれを知ってる私しか思いつかないよぅ! 私だって最初は魔王様の厨二病だと思ったもん!
「……は? 啓示? い、異世界……? そもそもゆーしゃとは……」
ほらぁ! 王様が残念な子を見るような目で魔王様を見てるよぅ! 魔王としての威厳ががが! もうやめてぇ!
「えっ⁉ マジかよ、勇者って概念すらないのか? 勇ましい者って書いて勇者だよ、ゆ・う・しゃ! 特徴としては大体イケメンだ! 女好きでハーレムパーティ組んでたりするぞ!」
「……宰相」
「わかりかねます!」
宰相さんもお手上げらしい。 私も分からない。
「マジ? おーう……そっか、勇者いないのか……。 確かに昔ルーガルにカチコミした後いくら待っても勇者来なかったな……」
魔王様がなぜかショックを受けている。 そもそも「魔王を倒すゆーしゃ」なるものがいたら魔王様が困るのでは?
「まぁいいや。 それよりオルガからの食糧はアレイルの南側で流通が止まってるぞ、なんとかしてやれ」
「何? ……アレイルに入ってからの事は我が国ではどうにも出来ぬ」
「そっか。 まぁアレイルとの会談が決まったら教えてくれよ、それまでに準備しとくから」
「会談か……儂、もう王位譲ろうかな」
王様が遠い目をしている……。
「あ、あとアレイルに嫁いだディオルと話していいか? 見つからないように勝手に潜入するからこっちの心配は無用だ」
オルガの第一王女様だ。 アレイル城でそれらしき人は見つからなかったな。 っていうか……その役目絶対私だよね⁉
「む? ……もう好きにするがよい。 ついでに儂からの手紙を届けてくれ。 それが少しはディオルフィーネの警戒心を解くじゃろう」
「サンキュー! やっぱ国王は話が分かるな! ははは!」
……王様は何も考えたくないだけだと思う。 王位譲るとまで言っちゃってるし。
王様から手紙は後日渡すと言われ、私達はお城を後にした。
魔王様に作戦会議だ! と言われ、ディメンション2階のダイニングでお茶を入れた。 何の作戦? ……嫌な予感しかしない。 魔王様とラウンツさんとテーブルを囲んだ。
「勇者を作るぞ!」
「つ、作る? 勇者って人ですよね?」
「おう! 強そうな人族に神のフリして念話で啓示を与えて、なんかすごい剣でもやれば勇者の出来上がりだ!」
また魔王様の仕込み……。
「よく分からないわぁ……なぜ勇者を作るのかしらぁ? 魔王様を倒す役目よネッ?」
「よし、そこから説明するか」
魔王様のお話はこうだ。 アレイルに魔王を倒す勇者なるものが誕生すれば、アレイルも力を手に入れるのでルーガルの武器を輸入しなくて済むと。 そしてその分のお金を虫害復興に充てられるから国力が復活して戦争を起こす必要が無くなると。
ええ……たった一人の人族だけでそんなに上手くいくかなぁ……無理だようっ!
「魔王様の演出に期待ネッ☆ でもアレイルとルーガルで交わされた契約って武器取引だけかしらぁ? ニーナちゃんが盗聴したおハナシだと、アレイルはルーガルにハメられちゃった感じなのよネッ?」
「それなー、アレイルに吐かせたいなー。 とにかくアレイルをルーガルの呪縛から解放させないと何も始まらねぇ。 とりあえずディオルに接触してみようぜ! 第一王子に嫁いだからなんか知ってんだろ」
「ぎゃぴっ! それ絶対私がやるんですよね⁉」
「察しがいいなニーナ! ははは! 安心しろ、俺様も付いて行ってやる!」
魔王様一人で行ってっ!
「またアレイルに潜入よぉっ☆」
そして魔王様とラウンツさんは勇者擁立の作戦会議をし始めた。
「なんか超聖属性の付いた剣をドルムに作ってもらおうぜ!」
「イイわネッ☆ でも勇者にそんな物与えて魔王様は平気なのかしらぁ?」
「聖属性は気持ち悪りぃけど、まぁ俺様より強い奴なんていないだろ!」
「それもそうネッ☆ 魔王様のお力の前ではみんな無力よぉ!」
む、魔王様が勇者に圧倒的なお力を見せる所……それは拝見したい!
「後は神のフリするやつは誰がやるかな~」
「アタシに任せてちょうだいっ☆」
神がおネエじゃ人族が混乱するっ! 神々しくない!
「あっ! あのっ! アーニャが演技上手ですし、きっとノリノリでやってくれますよ!」
「お、アーニャはモノマネ上手いからな! アーニャを月の女神にしよう!」
「確かにアーニャちゃんならそれらしい台詞もアドリブで言えそうねぇ……残念だけど譲るわぁ!」
よし! おネエの女神は回避された!
「後はアレイルでそれなりに強いイケメンを探さないとな~」
「ま、魔王様……なぜイケメンなのですか? 顔は関係ないのでは……」
「あん? 勇者って言ったらイケメンで女好きって決まってんだよ!」
そもそも勇者などいないのだからそんな決まりは無い。
「それにな、イケメンの方が人気が出るだろ? アレイル中に勇者を周知させるにはイケメンだ! 人ってのはなんだかんだ見た目から入るからな」
「確かにおブスちゃんより可愛いコの方が応援したくなるわっ☆」
よくわからないけど魔王様を止められる者はこの世界にいない、諦めよう。
「アレイルで魔力の多いイケメンを探すから楽しみにしとけよニーナ」
「ぎゃぴっ! また私!」
「スカウトで鍛えたアタシとアーニャちゃんの魔眼が火を噴くわよぉ☆」
うう……ディオルフィーネお姫様とイケメン探しでまた潜入かぁ。 やだようっ!
146話からホストパートに戻ります!




