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アレイル都市に潜入

 集音魔法で村人の声を拾う。


「おかぁ……ごはんたべないの?」


「忙しいから作りながら食べたよ! 村長さんの所に行かなきゃならないんだ、留守番よろしく頼むね! しっかりお食べ!」


 ……村長さんのお話を聞こう。 身体強化で視力を上げた。 あ、あの大きい家かな?


「まずい……食料支援が来ない……東には来ているのか……?」


「あなた……まずはうちの村の事を考えないと……」


「わかっている……だが……子減らしはないだろう!」


「……奴隷商人は悪魔ね。 人の不幸だけは敏感に察知してその生き血をすすろうとする……どこから沸いてくるのかしら」


「まだ冬はなんとか乗り切れるかもしれん……春にさえなれば……」


 ……村長さんとその奥さんらしき人は声を震わせグスグスと鼻を鳴らしていた。

 人減らしの話まで出てるの? 何で? オルガから輸入した食料はどこへ行ったの⁉ ここはアレイル都市から近い方なのに!


「ニーナ」


 お兄ちゃんの声でハッとする。


「あ……ここらへんは虫害があったみたいだね……」


「うん、俺の集音魔法でも聞こえた」


「……まずは調査が先……」


 メイリアさんにより調査を再開することになった。 メイリアさんとお兄ちゃんの眉間に深いシワが寄っている……。




 アレイル西側を何時間か調べていたら大きな都市がうっすら見えてきた。


「お! あれがアレイル都市か?」


「……多分そう……」


「潜入うまく出来るかな」


「……この辺りは虫害が無い、今は他を調査する……」


「早く終わらせよう」


 潜入にワクワクしていたお兄ちゃんのテンションが今は低い。


 潜入……やだよぅ。 卵採りの後に話し合った作戦のほとんどが私の〈影移動〉で忍び込む案ばかりだったし! クラリゼッタさんのお屋敷だけでもヒヤヒヤしたのにぃ……。




 今度は北へ向かってしばらく調査していたら、メイリアさんがそろそろルーガルの国境だと言った。

 そこから少し東へ進んだところで陽が落ちて今日の調査は終了した。


「……キキューも探したけどよく分からなかった……」


「あ、メイリアさんキキューも探してたんですね。 お姫様がきっと情報をくれますよ!」


「……うん……とりあえず魔王様に念話する……」


 魔王様が私達のいた所へ転移して来てくださって回収し、みんなまとめてディメンションへ転移させてくれた。


「村人の話は悲惨だったな……現実は残酷だぜ」


 魔王様のお言葉にみんなの表情は沈んだ。 村人の話を聞いたからだ。


 明日も調査らしい。 とりあえずディメンションで寝れるのでよかった。




──────────────


 翌日、4週目4日、今日もアレイルの虫害地域調査に来ている。


「……終わった……魔王様に念話する……」


 メイリアさんがそう言うとすぐに魔王様が転移なさって来た。 魔王様はとっくに終わっていたらしい。 ……魔王様一人でよかったのでは⁉


 そして魔王様は私達を連れてキャロルさんグループも回収し、アレイル都市の近くまで転移した。


「よーし! 潜入だ!」


 ワクワクしてるのは魔王様だけだようっ!


「楽しみだぜ!」


「イケメン探そうね! キャロルちゃん!」


「あたし魔族じゃないとガチ恋はムリめー! 遊びならいいケド!」


「アタシ好みのコを探すわよっ☆」


「アレイルの街並みが楽しみコン!」


 私とメイリアさん以外ははしゃいでいる……。

 何でっ⁉ さっきまでみんな神妙な面持ちだったのにっ! いざ街の目の前に来たらテンション上がっちゃった系⁉

 でもそれより私には気になる事が!


「魔王様ぁ、潜入の具体的な目的を聞いてないんですけどぉ? 潜入が目的になってません⁉」


 みんなの動きがピタリと止まった。


「お、おう! 考えてるぞ⁉ え~っとな、目的はだな……アレイルの裏で動いてる何かだ!」


「フワッとしすぎですぅうっ!」


「うるさい! とにかくなんか見つけろ! 国王にでも張り付け!」


「ぎゃぴっ! いきなり国王ですか⁉ 私が行くんですよねっ⁉ 明日にしましょうよぅ!」


「まだ昼だ、却下する」


「うぅ……。 魔王様達はどう潜入するんですかぁ? 私は影に潜れば姿を消せますけど……」


「それはこう……シュッ! っと転移してシュッ! と逃げてだな!」


「……街中を観光したいだけですよね?」


「……いいからニーナ行って来い! 噂話を集めるんだ!」


 むぅ! 私だけ人使いが荒いようっ!


「見つかって大騒ぎになっても知りませんからねっ⁉ 行ってきます!」


 ぷんだ!




──────────────


「……ニーナちゃん元気になったかしらぁ?」


「うちの妹は人につられるへっぽこだから大丈夫ですよラウンツさん」


「えっ? みんなガチテンションブチアゲじゃなかったの⁉」


「それはキャロルちゃんだけだよ!」


「マジー⁉」


「さて、ちょっと真剣に潜入するぞ」


「「「はい!」」」




──────────────


 むぅ~魔王様め! 潜入なんてドキドキするよぅ! やだようっ!


 とりあえずアレイル城の上空へ〈飛行〉で移動し、城下街を見下ろした。 オルガより大きいかも。 オルガと同じで街は円状の壁で囲われている。

 はぁ……とりあえず肉眼で見える影に潜り込んで徐々に城の中へ移動しよう。


 ……お城の屋根の影から潜り込んだらすぐに王様のいるお部屋らしき所に来てしまった。

 あああああ! そうだよね! 王様ってお城の上の方のお部屋にいるよね⁉ こんな時だけ運が良くなくていいのにっ!


 (きら)びやかな部屋で豪華な服を着たすっごい王様らしき人が家来と話してる……。


「……ですから国王様、今更かの国との約束は反故(ほご)にはできませぬ……」


「……くっ……ルーガルめ……」


 ルーガル⁉ 魔王様が昔一撃入れた国ぃ!


「時期が悪かったのです」


「初めは軍事力強化だけの話じゃったろう! なぜこのような事になっておる⁉」


「虫害は想定外です……何卒ご決断を……」


「もうよい! 下がれっ!」


「……はっ」


 その後アレイル国王はイライラした様子でじっとしていた。 ……他を回ろう。




「なぁ、なんで国はこんな時まで武器を買ってるんだろうな?」


 軍人さんかな?


「バカ! 誰が聞いてるかわかんねぇぞ! ……戦争……するのかな」


「あのビラ誰が()いたんだろうな……」


 ビラ?




「食糧支援要請の承認はまだか!」


「まだ一部だけです!」


「都市の備蓄はもういっぱいだぞ⁉」


 その後もお城にいる人のお話を聞いて回ったけど、みんな覇気が無かった。 軍人さんが言っていたように、戦争になるかもと憂いているのかもしれない。

 もうアレイル国内では戦争の噂が広まっているんだ……やっぱり戦争するんだ……分かってたけど。


『ニーナ、そっちはどうだ?』


 魔王様から念話だ! 声が低い、何かあったのかな?


『一通り情報は集めました。 そういえばオルガのお姫様が嫁いでいるんですよね? その方は見つけられませんでした』


『ああ、それはまだいい。 とりあえず俺の魔力をたどって戻って来い』


『かしこまりました』




 魔王様達は元いた場所、アレイル都市から離れた上空にいた。

 あれ? みんなの顔が真剣だ。


「ニーナ、これを見つけた」


 そう言って魔王様が差し出したものは1枚の紙だった。


 ……えっ⁉ なぜこんな事が書かれているの⁉




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