表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
136/285

魔王とルル

 魔王様とルルさんのお部屋へ。


 私達が部屋の前に着いた瞬間にドアが開き、ルルさんが(こころよ)く招き入れてくれた。 魔王様が念話したのかな?

 ……ルルさんのお部屋は綺麗だな。 魔王様はルルさんに勧められて椅子へ。 ルルさんが立ったままだから私も立ったままだ。


「メイリアちゃんの魔術式の件かしら?」


「んじゃそれから聞く」


「? 術式の解読は終わったけれど、広域展開への改変はこれからよ。 お急ぎかしら? あとはシャナちゃんからも別件で協力要請があるわ」


「シャナ?」


「ええ、殺虫剤に関わる件よ。 メイリアちゃんのユニークスキルを植物以外でも使用できるようにしたいって。 具体的には飛蝗(バッタ)の卵ね」


「あん? 卵を成長させんのか?」


 そしてルルさんは、メイリアさんがシャナさんキャロルさんに相談したのと同じ内容を魔王様にお話しした。

 ひぇ! 虫の卵ごときを採りに行くためだけに魔王様を使いっ走りにしようとしてるなんて言っていいのぉ⁉ キャロルさん大丈夫かな……ドキドキ。


「ふ~ん……ルルはどう思う? メイリアについて」


「……メイリアちゃんが抱えている事についてかしら?」


「おう、ニーナが元気ないって言ってたからよ」


「そうね……まず私が最初に心配したのは広域展開術式を使用する時にかかるメイリアちゃんの身体の負担よ。 下手に無理したら死ぬわ。 これは遅かれ早かれ魔王様にご相談しようと思っていたのだけれども」


 えっ⁉ 死⁉ だだだ、大丈夫なの⁉ メイリアさんっ!


「そうか。 あとは?」


「虫害を起こしている飛蝗(バッタ)で実験出来なかった場合でかつ、その飛蝗(バッタ)に殺虫剤の耐性があったら最悪だわ。 大金に加え大勢の人と国、そして魔王様を巻き込んで失敗したら……と考えると私なら夜も眠れないもの」


 あっ! 確かに……。 メイリアさんなら何でも出来ちゃうと思ってた……。


「そらそうだな。 他には?」


「メイリアちゃんの魔法で卵を孵化(ふか)させるのは難しいと思うわ……ユニークスキルは理屈じゃないもの。 『植物にだけなぜか出来る』なら『植物だけにしか使えない』と、答えが出ているようなものよ。 これもメイリアちゃんは何としてもやらなければと抱え込んでいるんじゃないかしら? 無茶よ」


「確かにな。 まだあるか?」


 なんか魔王様たんたんとしてるなぁ。


「そんなところかしら。 細かい事だとちゃんとしたご飯を食べてほしいけれど、きっと人体実験も兼ねているからやめさせないほうがいいわね。 メイリアちゃんからしたら、少しでも情報があれば安心するのでしょうから」


「わかった。 ルルもなんかあったら俺に言え」


「ありがとうございます。 今のところメイリアちゃんの事だけよ。 私は無理なら無理って言うわ」


 ルルさんが肩をすくめた。

 えっ⁉ いつも魔王様の無茶振りに耐えてるじゃないですかぁ……。


「……ルルはちゃんと俺に頼るやつだからな、大丈夫か。 じゃあまたな!」




 ルルさんの部屋を出た。


「魔王様ぁ、ルルさん我慢してませんか? ルルさんのケアをもっとちゃんとしてあげてくださいぃ!」


「あん? 俺はルルの限界を知っている、大丈夫だ」


「魔王様の命令にノーと言えるわけないじゃないですかぁ……」


「ん~、そういう事じゃなくてな、本当に俺は知ってるんだ」


 ジト……と魔王様を見つめる。 無言の抗議だ!


「……はぁ、そんな目で見るなよ。 マジだって。 その証拠に、俺は昔ルルが限界を迎えた時に仕事を休ませた」


「えっ⁉ そんな事があったんですか⁉」


「おう」


「何があっ……」


 ……たのかは聞かない方がいいかな?


「……ルルは研究者気質だろ? 真面目過ぎて色々あったから俺が魔王命令で解放させた。 復帰してからはシャナを弟子に取ったり、あとはお前の知るルルだから安心しろ、もう昔の話だ」


「そうだったんですね……」


 ルルさん、お仕事で何かあったのかな? でもナイーブな内容っぽいから聞かないでおく。 とりあえず魔王様の言う通りルルさんは大丈夫らしいからよかった。




 そして次はメイリアさんのお部屋へ行くらしい。

 あああ! 何を言うのー! 使いっ走りの件だけは許してあげてください!


「メイリアー俺だ、入ってもいいかー?」


「……魔王様?……」


 ガチャッ! と急いだ様子でドアが開いた。 ごごごごめんねメイリアさん! 魔王様が来てビックリしたよね!


「よう! 相変わらず元気ないな!」


 失礼な事を言いながら魔王様はスタスタとメイリアさんの部屋へ入り椅子に座った。

 魔王様に私達も座れと言われたので、メイリアさんはベッドの上の本を急いで片付け、私とメイリアさんがベッドへ腰かけた。


「メイリア、なんか悩んでんだろ」


 えっ! いきなり⁉ 確かにルルさんのお話を聞いたらそうだけど……あわわ!


「……いえ……大丈夫です……」


「いやーさぁ! さっきニーナと見積もりの話をしてたんだけど、俺もニーナもノリで殺虫剤作るって言っちゃったもんだからぶっちゃけ後悔した! ははは!」


 私はノリじゃないよぅ! ……ちょっと後悔したのはホントだけど。


「でもそれは過程が大変な事に対してだ。 実行する事については後悔しない! だからな、俺でも大変だなーって思うくらいだからメイリアも大変なはずなんだよ。 何かあるだろ? 心配な事~とか、迷ってる事~とかさ!」


「……大丈夫です……」


「…………」


「…………」


 ま、魔王様もメイリアさんも黙ってしまった。


「……こういう時、本当に大丈夫なやつは大丈夫な根拠を勝手に説明するはずなんだけど」


「…………」


 あ、ちょっとメイリアさんが動揺してる。


「メイリアは我慢強いからな~。 よし、魔王命令だ! 計画の進捗(しんちょく)を教えろ!」


「……かしこまりました……」


 あ、魔王様頭いい、進捗を報告させてメイリアさんが抱えてる問題点を指摘してルルさんから聞いた話に持っていくつもりだ。

 メイリアさんが机の上の資料を見せて魔王様に説明し始めた。


「……なるほど、虫害と花の地域や面積の情報が足りないな。 俺が仕入れる。 後は何かないか?」


「……あとはルルさんが、どれくらいの大きさの広域展開術式を組んでくれるかだけです……」


「まだ隠してるだろ」


「…………」


 メイリアさんが固まった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ