やっと見積もりのお仕事が!
今日は3週目6日、いつも通り名刺を受け取りにメイリアさんとエルドラドへ。
名刺を受け取りメイリアさんと実験場で作物を採集する。
「メイリアさん、今日は何の人面野菜ですか?」
「……ライ麦と人面キャベツ……」
「まさかとは思いましたが本当に人面シリーズでいくんですね」
でもメイリアさんが成長させた人面キャベツは顔が無かった。 あれ?
ユニークスキルを使ってはぁはぁ苦しそうなメイリアさんが呼吸を整えてから人面キャベツをもぎ取ると、くわっ! と葉っぱが開いた!
「ひぃ! 口があるよぅ! 怖い!」
真っ赤な口の中には粘液が糸引いたギザギザの歯がっ!
ぴゃっ! と思わずメイリアさんから距離を取る。 私は結界の外にいるから平気なんだけど。
そしてメイリアさんはすぐさま人面キャベツを凍らせた。
……最初に凍らせてから採集すればよかったのでは? メイリアさんがニヤニヤしてる……絶対私の反応を楽しんでたよねっ⁉
「そ、そういえばメイリアさん、まだ見積もりには取り掛からなくて大丈夫ですか?」
アーニャにいじめられるからお仕事が欲しいとは言えない。
「……ん……そろそろやる……ディメンションに戻ろう……」
ホッ、よかった、やっと見積もりのお仕事が! よぅし! 頑張るぞー!
ディメンション2階のメイリアさんの部屋へ戻って来た。 ……相変わらず本や錬成道具が散乱している。
「……実験してた……しょうがない……」
実験していない時が無いのはもうバレバレである。 だけど私は大人だ、「そうですよね」と返す。 それより見積もりを!
「……見積もりだけど……まず魔界の国立錬金施設を押さえなきゃいけない……そして錬金術師の人員も……あとは野生のキキューを採集する人件費……これは魔界とオルガで短期で人を雇わないといけない……その他の材料は────」
……メイリアさんのお話を聞いて私は心底後悔した。 魔王様を焚きつけた過去の自分にエタフォをお見舞いしたい。
国立錬金施設って借りるのにいくらかかるのっ⁉ 錬金術師をかき集めるのってどうやるのっ⁉ 錬金術師とキキュー採集のお給料はいくら⁉ 輸送費は⁉ メイリアさんは1日でどれくらいキキューを成長させられるのっ⁉ それによって雇う人数とスケジュールがっ! ……あああああああ! 初めてのことだらけだようっ! 新任の私じゃできないようっ!
でも魔王様にメイリアさんと見積もりを作れって言われたし……魔王命令に対する答えは「やる」か「絶対やる」しかない、トホホ。
とりあえず湧いて出てきた疑問をメイリアさんに質問すると、意外にもスラスラ答えが返って来て一安心した。 うう……メイリアさんの知識と能力が羨ましい。
「なるほどですね! 素材と人件費の相場は分かったのであとはキキュー採集のスケジュールが分かればなんとかなりそうです!」
「……国立錬金施設関係は魔王様に相談するといいと思う……」
「はい! 魔王様に職権乱用してもらいます! ほぼ貸し切りにするなんて私にはできません!」
「…………キキューだけど……まだ1日でどれくらい育てられるか分からない……ルルさんの回答待ち……」
「わかりました。 出来るところから始めますね! 私は魔王様に念話するので部屋に戻ります」
自室に戻ってきてメイリアさんのお話をメモした紙を机に置いた。
ふぅ、とりあえず書ける所まで書いて……よし。 次は魔王様に念話だ、その前に質問を書き出しておこう。 えっと、これはメイリアさんなんて言ってたっけ……。 先ほどの会話を思い出す。
……メイリアさん、部屋に戻って来ても元気なかったな。 大人しいのは元々の性格だし、ユニークスキルを使った後に疲れてるのはいつもの事だけど……。
『魔王様魔王様、見積もりの件で今よろしいですか?』
『お、ニーナ今部屋か? 行っていいか?』
『ひゃ、ひゃい!』
魔王様、魔界からでも魔眼で見えるのかな、すごいな。
なんて思ったのもつかの間、魔王様が部屋に現れた。 よっぽど書類仕事が嫌らしい。
「お、おはようございます。 見積もりですが、国立錬金施設について魔王様にご相談がありまひゅ!」
「おー、あそこな。 あの日のうちに上に話通しといたぞ、そのうち貸し切るから準備しとけってな!」
「……なんて言っていました?」
「オッケーだってよ!」
……絶対施設のお偉いさんも「はい」か「イエス」しか言えなかっただけだよぅ! 施設の偉い人、お疲れ様です!
「……私達より先に動いているなんてさすが魔王様、ありがとうございます。 では見積もりを作成するので施設代を教えていただきたいのですが」
「おう、聞いておく」
「ありがとうございます。 あと錬金術師とキキュー採集などに関わる人件費を分かる範囲で算出してみたのですが────」
魔王様に先ほど書いた紙を見せながらご相談した。
「……魔王様、これ軽く億超えませんか?」
「これだけ大規模だとな……。 ヤベェ、ニーナに乗せられてついカッコイイ事言っちまったから取り返しつかねぇ……」
「えっ⁉ 魔王様ノリで言ったんですか⁉」
「お前のせいだ! 魔王的にあそこでカッコつけるしかないだろ!」
「魔王的にってなんですか⁉ 魔王様は魔王様でしょう!」
「俺はただのエグゼクティブエンペラーだ! 魔王は本職じゃない!」
「まごうことなき本職ですぅ! お願いですから協力してくださいよぉ! 私ひとりじゃ無理ですぅ!」
あっ! しまったつい本音が!
「あー……確かにニーナ1人じゃ無理だな、魔界の財務部に作らせるわ。 これは国家規模だ。 ニーナはメイリアから情報が下りてきたら整理して俺に伝えてくれ」
「か、かしこまりました。 ありがとうございます……」
ホッ、よかった。 私はメイリアさんと魔王様との橋渡しをすればいいらしい。
「あ、魔王様そういえば」
「あん?」
「メイリアさん、なんだか元気が無い気がします。 ご飯もエルドラドで実験した物しか食べてないですし……」
「そうか……メイリアが始めた事とは言え責任重大だからな。 ……よし! ルルのとこに行くぞ!」
「え? あ、はい!」
なぜルルさんの所へっ⁉
某光通〇的な風潮漂う魔王城w 魔王様のせいではなく魔族の気質です。




