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キャサリン

 今日は3週目5日、5週目3日が決戦日だからもうすぐだ。


 私は今日も朝からメイリアさんとエルドラドへ。 リサさんから名刺を受け取るためだ。 メイリアさんは実験。


 ディアブロへ転移すると相変わらずシアさんシャナさんキャロルさん達がいた。

 ローテで来てる魔王軍の人がお父さんじゃなくてよかった……。

 そしてもう冬なのにシアさんはビキニアーマーのままなんだな……寒くないのかな。 獣人さん特有のモフモフはほぼ頭と尻尾だけなのに。


「あっ! メイリア! 殺虫剤の件早く教えろし!」


「……キャロルさん……後で来ます……」


 メイリアさんはキャロルさんへの挨拶もそこそこに、私と一緒にエルドラドへ。


 私はリサさんからミアさんネフィスさんの名刺を受け取り、2階層へ向かう。


「メイリアさん今日も小麦と人面にんじんを植えるんですか?」


「……今日は大麦と……人面大根……」


 なぜわざわざ顔がある魔植物シリーズで攻めるのっ⁉


 そしてメイリアさんは今日はその場で人面大根を食べなかったけど、人面大根から「ォオォォ……ォオォオォ……」って(うめ)き声が聞こえてきて怖いんですけどっ⁉

 もしかして昨日の人面にんじんも鳴くの⁉


「……ちょっとディアブロのお店に寄る……ニーナありがと……」


 ……さよならを言い渡されてしまった。

 帰ってもやる事がないよぅ! またアーニャにクビにされたって言われないように何かお仕事を!


「あ、あの、お仕事が無いので付いて行ってもいいですか?」


「……ん……」


 メイリアさんにまた残念そうな顔をされた。 しくしく。




 メイリアさんの後を付いてディアブロへ戻ってきた。


「……キャロルさん……」


「……ん? あ、おか〜!」


 ……「おか〜」とは? キャロルさん語は未だ習得できそうにない。


「……これが試作品とレシピ……使用した素材からして毒性のリスクはかなり低いと思う……」


 そう言いながらメイリアさんが試作品と紙をキャロルさんへ渡した。


「あり〜! 奥のテーブル行こうよ!」


 ……ありがとうのことかな? ってことはさっきの「おか〜」はおかえりなさい?


 3人でテーブルへ向かうとシャナさんも興味津々で付いてきた。

 メイリアさんとキャロルさんの間では難しい単語が飛び交っている。 ……あと恐らくキャロルさん語も。 専門用語なのかキャロルさん語なのか区別がつかない。


「……それで飛蝗(バッタ)に耐性があるか調べたいけど……もう冬だからいないかも……アレイルにも入れない……」


「そんなの簡単じゃん! 魔王様にパシッて来てもらえばいーんだよ! 卵なら見つかるっしょ⁉」


「……え……確かに魔王様なら転移できるけど……でも卵にはほとんど効かない……」


 ……ええ! キャロルさん、魔王様を使いっ走りにする気⁉


「卵はメイリアのユニークスキルで孵化(ふか)できるんじゃね? いーなー! あたしも時間操作魔法欲しかったー錬成時間待たなくて済むじゃーん! マジ今まで隠してたとかズルゥー!」


「……植物にしか使えない……」


「根性だよメイリアー! 気合いでなんとかなるっしょ⁉ ついでにあたしにも教えて!」


「私も魔術式を拝見したいですわ! なぜ植物にしか効かないのかが分かれば植物以外への応用も出来るかもしれないですわよ⁉ さぁ! さぁ! メイリアさん教えてくださいませ!」


 キャ、キャロルさんとシャナさんの2人がしゃべるとけたたましい! メイリアさんもタジタジだよぅ!

 でもメイリアさんは意外にも魔術式を書き始めた。


「……素晴らしいですわっ! こんな魔術式見た事なくってよ⁉ 研究のしがいがありますわ! ルルさんにもご相談しなければ!」


「えー! あたし全然イミフ! 時間操作魔法は諦めた!」


 キャロルさん……さっきまで根性とか気合いとか言っていたのはどこへ……? 他人限定なの⁉


「とりま、メイリアの研究手伝うから今持ってる他の案件あたしにちょうだい!」


「……?……」


「だから飾りボトルとか香水とかぁ~魔界の分もあたしが作るし! 発注スケジュール書いて!」


「……ありがと……」


 あ、そっか。 メイリアさんはディメンションの物を色々と作ってるんだった。 ……キャロルさん優しい。

 そしてメイリアさんが発注予定を書いている間、キャロルさんは念話し始めた。


『あ、もっしー! おじいちゃん生きてる? あーはいはいウケるウケる! ってかぁ~ちょっと死ぬ前に調べてほしい事があるんだケドー!』


 キャ、キャロルさんは話しながら念話するタイプなんだな。 ……おじいさん、死にそうなの? 大丈夫⁉ キャロルさんの大音声で死にませんように。


『うんうん、じゃーまたねー! よろ!』


 キャロルさんの念話が終わり、メイリアさんも発注予定を書き終わったようだ。


「ウチのおじいちゃん毎年『あと3年で死ぬ』って言うんだよねー! 死ぬ死ぬ詐欺ウケる!」


 ああ、老人ジョークか。 よかった、キャロルさんは死にそうな人をコキ使う人ではなかった。




 その後もメイリアさん達は難しいお話をしていたけど、私は何もやる事が無かった。 うう……いたたまれないよぅ!


 と、その時、製本所のベロニカさんから2冊出来上がったと念話がきた。

 やったぁ! お仕事だ! これで胸を張ってこの場を退席できる!


「あ、あのっ! 本が出来上がったので私は行きますね! お仕事です!」


 みんなにいってらっしゃいと言われ、転移陣でディメンションを経由して製本所へ。

 製本所で本を受け取った際、ベロニカさんにディメンションのシステムなどを聞かれた……。


 とりあえず魔王様に報告だ! またディメンションへぽてぽてと戻る。 ……うぅ寒い。 走って帰った。


『魔王様魔王様、本が2冊出来上がりましたよ!』


「よう! 見せろ!」


 ぎゃぴっ! 念話した瞬間来た! ……また書類仕事から逃げてきたな。


 魔王様へ本を差し出した。


「やっと男本が完成したぜー!」


「お、おとこぼん……?」


 なんとなく嫌な響きだよぅ!


「おう、初回客に見せて、気になるナイトを呼びやすくするためのものだ!」


「な、なるほどですね……お店で使うってそういう意味だったんですね。 それにしても、男本って呼び方は何とかならないですか?」


「あん? 男本は男本なんだよ! キャサリンがなぜキャサリンなのかと一緒だ!」


「キャサリンさん……たまに聞きますけど一体どなたの事ですか?」


「人じゃねぇ。 あの~あれだよ、ソファに置いてある(ひじ)置き!」


「えっ⁉ あの長方形の固いクッションみたいな物の事ですか⁉」


「おうそうだ。 あれがキャサリンだ!」


「……なぜキャサリンさんなんでしょう?」


「それは歌舞伎町七不思議のひとつだな……」


 かぶきちょーって何っ⁉ ……もういいや。 いちいちツッコんでも私にはきっと理解できない事なんだろう。




 そして今日の営業が始まる。


 ……きょ、今日も見積もり作成しないのかな? またアーニャにいじめられるよぅ! メイリアさんお願いだから私にお仕事を!




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[良い点] 死ぬ死ぬ詐欺…ぐふっ!終わる終わる詐欺の私にクリティカルヒット! てか、キャサリンってなんですか!?本気で知りたい!
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