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ダンジョンはじめました

ブクマ評価ありがとうございますm(*_ _)m

 ……朝だ。……そうだ、人界に来たんだった。

 昨日はダンジョン入口前の木々を切り倒して広場を作って、そこにテントを張って野営したのだ。


 のそりと寝袋から這い出て、テントの外に出るとすでに誰かがいた。

 あの茶髪と赤髪はお兄ちゃんとコーディさんだ。切り株に腰掛けうなだれている。


「お兄ちゃんコーディさんおはようございます。どうしたんですか?」


 お兄ちゃんだけでなくコーディさんも元気がない。黒い角は輝きを失っている。


「おはよう……昨日ラウンツさんの恋バナに付き合ったり色々な……。ニーナ! 俺は早く街の宿の個室で寝たいぞ! 頼むから頑張って人族呼んできてくれよな⁉」


 お兄ちゃんに肩をガシッとつかまれガクガク揺さぶられる。ものすっごく死活問題らしい。


「わ、わわかったよぉぉう! 離してぇぇええ! あれ? 魔王様は?」

「魔王様だけ城へ帰った……ズルいよな!」


 お兄ちゃんもコーディさんも泣きそうだ。


「が、頑張ってくるよ……」




 看板二つを持って街へ……って重い! 空間魔法でふよふよ浮かせ歩いていくことにした。


 ぽてぽて歩いて森の出口に来たのでまずここに一つ看板を立てる。「ダンジョンはじめました」の文字とダンジョンへの方角が描いてある。よし! いい感じ!


 次は街へ向かってぽてぽてと歩いていく。


 街の外壁が見えてきた。砲台がまた私の方を狙ってる……。

 あ、壁の上に昨日の偉そうな人が見えた。


「今日は何しに来た⁉」


 ひぇ! ダンジョンを作ったのでお店をします! 来てください!


「──っ! ……ダ、ダダダ……ッ! ダッダッ!」

「…………」


 あっ! 偉そうな人がいなくなっちゃった! どうしよう……。

 そうだ、今のうちに街の入口に看板を立てちゃえ!


 とととっと街の入口へ近付いて看板をグリグリと地面に刺す。


「うお! 何してるんだ⁉」

「ぎゃぴっ⁉」


 看板を抱えながらダダダッとしか言わない私に見かねてか、偉そうな人が他の軍人さんと一緒に外壁の入口から出てきた。

 とっさに看板の裏に隠れる。


「ダンジョンはじめました……?」

「おっ! お店……っ!」


 お店をします!


「店? ダンジョン前で店をやるのか?」


 ブンブンと首を縦に振る。


「この辺りにダンジョンなんて無いぞ?」

「どういうことだ?」

「ダンジョンはじめましたって……まさか作ったのか⁉」

「んなバカな」


 そうです! 正解です!

 またブンブンと首を振る。


「……何だか臆病な魔族だな。……まぁいい、調査に行く。おい! 百人隊を編成しろ!」


 ひゃ、百人⁉ 早くここから逃げよう!

 両手を上げてわーーーっと逃げた。


 あうっ! これじゃ昨日のゴブリンと一緒だよぅ!




「ハァ……ハァ……」


 ダンジョン前の広場に戻って来た。身体強化を使っても疲れるものは疲れる。


「あ、ニーナ! おかえり!」

「ニーナ! どうだった⁉」


 アーニャとお兄ちゃんが声をかけてくれた。……お兄ちゃんは自分のために結果を知りたいだけだけど。


「ちゃんと看板を立てられたよ。それで軍の人が百人調査に来るみたい……」

「おお! ニーナよくやったぜ! 軍が安全だと確認したら冒険者が来るかもな!」

「ニーナさんありがとうございますっ……!」


 お兄ちゃんとコーディさんがすごい喜んでる……。


「アラッ! ニーナちゃんお疲れ様! アタシ達は五階層まで地図を作ったわよぉっ☆」


 ラウンツさんが地図を見せてくれた。


「早いですね……」

「敵が弱かったからね! 封印を解くまでもないよ!」


 アーニャはスルー。


「軍が来るならお店番を決めなきゃいけないわね、私は魔道具の件があるからお店にいるわ」


 ルルさんは人界に詳しいからお店番にはピッタリだ。


「……素材欲しい……」


 メイリアさん、素材が欲しくてうずうずしてる……。


「メイリアさんはすでにたくさんポーションを用意してくださいましたから、行ってきて下さい! 僕が店番をしますよ」


 コーディさんも財務部だからお店番は適任だ。


「コーディちゃんとルルさんだけで守りは大丈夫かしらぁ?」


 ラウンツさん優しい。でも……コーディさんと一緒にいたいだけとかじゃないよねっ⁉


「大丈夫よ、私も魔道具と魔法で戦えるわ」

「僕も財務部一の武闘派ですから大丈夫です!」

「はい! 私もお店番をするよ! 魔物が弱いからつまんないし、いつイケメンが来るか分からないからね!」


 アーニャ、心の声が漏れてるよ……。


「じゃあ三人を残して地図作りの再開ねっ☆」


 地図作りは私とお兄ちゃん、ラウンツさん、メイリアさんで行く事になった。

 さっきまで地図作りをしていた人は戦闘用の装備だ。アーニャとコーディさんはスーツに着替えるらしい。

 私とメイリアさんは特に戦闘用装備は無い。


「そういえばメイリアさんってどうやって戦うの? 私は魔法だよ」


 カウンター越しにメイリアさんへ話しかける。


「……毒ガス噴射したり、毒をかけて溶かしたり……あと魔植物で戦う……」

「魔植物?」

「……これ……」


 メイリアさんが亜空間から何かの種を取り出し魔力を込めると、手のひらににょきにょきと棘の付いたツタが生えてきた‼


「ひぃ!」

「……マグマグネの棘、毒ある……これで悪い子おしおき……」


 メイリアさんがカウンターの上にバチーン! とマグマグネをムチの様に振るうと、棘が飛び散ってきた‼


「ぎゃぁぁああああああ‼ 毒ぅ⁉ 死ぬぅ‼」

「ニーナちゃん大丈夫⁉」


 そばにいたルルさんがバッと振り返る。


「……はい、毒消し……」


 毒消し! 早く!


「うぎゃぁぁぁあああ‼ まずい‼」

「……ふふ……良薬口に苦し……」

「メイリアちゃん……ニーナちゃんで遊んじゃダメよ? もうっ……」

「……ん、もうしない……」


 メイリアさん怖いよ! 人体実験されてるみたい! そしてやっぱり持ってたよ毒っ‼




 ダンジョンに入る前から疲れた……。でも私の魔力感知が便利だからと連れていかれる……うぅ。


 五階層までは森で、スライムやキラービーなどがいた。みんな身体強化で突っ走る。


 六階層も森だ。ここからは地図を作りながら行くので歩いていく。魔物はミニバジリスクが増えてきた。

 途中、メイリアさんが草を採ったり氷漬けにして倒したキラービーを亜空間にしまっていた。……ニヤニヤしてる、嬉しそう。


「あっ! やっと宝箱だぜ!」


 お兄ちゃんが叫んだ。


「お兄ちゃん、ダンジョンには宝箱があるの?」

「うん、この石の箱がそうなんだ。宝石とか入ってるぞ~!」

「わぁ! すごいね!」


 一応罠を警戒してリーダーのラウンツさんが宝箱を空ける……。


「何もないわぁ!」

「これじゃ冒険者が来ないぞ!」

「あわわ……そうなの?」

「……冒険者……宝箱目当てで来る……」


 メイリアさん詳しい! もしかして素材を採りに未成年でダンジョンへ⁉ ……素材のためならやりかねない。


「何か入れとかないとヤバいぞ?」

「……小さい金塊なら持ってる……入れとく……」

「メイリアちゃんがいてよかったわぁっ!」




 その後、地図を作りながら空の宝箱に金塊や銀塊を入れていくという作業をしつつ、十階層への階段まで来た。


「大体、十階層ごとにボスがいるんだ」


 お兄ちゃんが言い終わる前にラウンツさんが階段を下っていく。

 ちょ、作戦会議とかしないの⁉


「ギャオオオーーー!!!!!」


 ひぃ! 階段の先には大きなバジリスクがぁ! 怖いよぉおおお‼


「イクわよぉっ! うぉおおおおおお‼」


 ラウンツさんが走り出し、お兄ちゃんとメイリアさんも続く。ま、待ってぇ!


 ラウンツさんの大剣とお兄ちゃんの剣がバジリスクに届くのと同時に、メイリアさんのマグマグネが眼球を貫いた。


「ゴォォォォオオオオオオオオ‼」


 と雄叫(おたけ)びをあげたバジリスクの眼球のあった場所から、眼球とその他知りたくないドロドロが(したた)り落ちてきて、バジリスクは完全停止した。


 私だけ何もしてないぃ……。


「お疲れ様っ☆ メイリアちゃんの毒えげつないわぁ……」

「……脳梁(のうりょう)……溶かした……」

「……あ、あれは食らいたくねぇな」


 私さっきあれを食らったんだけどぉぉおおおお⁉

 すぐ毒消しを飲まなかったらドロドロになってたよ! やっぱりメイリアさん怖い‼


 そんな私を見て、メイリアさんが私の肩にポンと手を置く。


「……大丈夫……さっきのはマグマグネじゃない……新しい疲労回復ポーションの実験……」


 どっちみち実験体にされてた!


 メイリアさんはくるりと(きびす)を返し、バジリスクの前にしゃがみこんだ。


「……これ……キングバジリスク……人族からしたら強いと思う……毒も吐く……」


「アラッ! じゃぁダンジョンの難易度的には弱すぎず強すぎずってところかしら? よかったわぁっ☆」


 メイリアさんが毒袋が欲しいというので、キングバジリスクを解体してから宝箱を探した。


「あったぞ、ボス部屋の宝箱」


 お兄ちゃんの声にみんなが駆け寄る。

 ……また石の箱だ。


「なんか石の箱って地味だね、せっかくボスを倒したのに」

「ダンジョンにある物は全部マナから出来てるからな、こんなもんだニーナ」


 マナとは魔力を構成する最小単位の分子のことだ。お父さんの本で読んだ。


 ラウンツさんがそっと宝箱を開ける……。


「また空よぉ! どうしましょ!」


 また⁉ せっかくボスを倒したのにぃ! ……私が何もしていないのは内緒だ!


「……金貨を潰して金塊入れとく……いいポーションも……」

「メ、メイリアさんありがとう。あとでたくさん魔王様に請求しておくね?」


 お金の事なら財務部の私にお任せだ!


「……ありがと……あの……もう宝箱に入れる物がない……」

「十階層まで宝箱があればとりあえずいいわぁっ! メイリアちゃんありがとっ☆ じゃぁ戻りましょっ!」


 ラウンツさんの声でみんな走り出した!

 ひぃ! また走るのぉ⁉




「あっ! おかえり!」


 私達がダンジョンから出ると、アーニャがカウンターからぴょこんと顔を出した。


「ただいま……十階層まで行ってきたぞ」

「疲れてるわねレイスター、どうしたのかしら?」


 お兄ちゃんとラウンツさんがルルさんに宝箱空っぽ事件を話す。


「……それは……魔王様にパーティ念話するわね」


 ルルさんがパーティ念話を繋げてくれた。


『魔王様、今よろしいかしら?』

『いいぞ、どうだった』


 ラウンツさんが、軍が来る事と宝箱空っぽ事件を話した。


『マジか……出来たばっかのダンジョンだからマナが足りないのかな? とりあえず十階層以降は行かないよう人族に言っておいてくれ! 宝箱に関しては考える』

『魔王様、補充用の金塊や宝石を送ってください。あと、メイリアさんに大金貨十枚お支払いをお願いしますっ!』


 ここは財務部として私がビシッと言わなければ!


『……わかったよ……。あー完全に赤字だ! クエストを達成するためのクエストを達成するためのクエスト発生だよ……どうしよっかなー!』

『……人族が来るかもしれないのでそろそろ失礼いたしますわね……』


 ルルさんがそっと念話を切った。


 魔王様の言った後半のくえすとがなんちゃらかんちゃら……ってのはよく分からないけど、赤字経営かぁ……。魔王様どうするんだろ?




2021/11/6改稿。

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― 新着の感想 ―
[良い点] まさか自分でダンジョン作っちゃうとは!? それでお店を始めて、ビジネスに繋げるという アイデアは良いですね。 でも開始時の運営費で 赤字みたいですね、さてここから挽回できるのか!
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