戦後処理
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魔王様、はみゅエルさんに何言うんだろう?
「よう! いつも来てくれてありがとな! エグゼクティブエンペラーのアーデルハイドだ」
魔王様……まだエグゼクティブエンペラーを名乗るのを諦めてなかったんだな。
「みゅ?」
「はにゃ?」
魔王様がはみゅエルさんの向かいの丸椅子に座った。 アレンさんネフィスさんはビックリしている。
「2人ともクッソ可愛いなー! 一度挨拶したかったんだよ。 アレンとネフィスの騎士服仕立ててくれたんだって? ありがとな! さすがセンス抜群だな」
魔王様、心にもない事を……。 はみゅエルさんは「クッソ可愛い」と言われた時点でこれ以上ないくらいニマニマしてる。
「当たり前なのぉ☆」
「アレンがナンバーワン維持できるように頑張ってな!」
「にゅ?」
「あれ? 今アレンとネフィスが一番大事にしてるのはお前らだって聞いたけど?」
1ミリも聞いてません! むしろネフィスさんはアダマンタイト結界を張ってます!
「えへへ~しょうなのっ⁉ アレンきゅん☆」
「ネフィスきゅんったらぁ……♡」
「あはは、恥ずかしいからそういう事言わないでくださいよ代表」
アレンさんが話を合わせた。 でも肯定はしていない、アレンさんのせめてもの抵抗に聞こえる!
ネフィスさんは無言。 ビンダのしすぎでグロッキーだ。 というか、「はい」とも「いいえ」とも言いたくないんだろうな……。
「だからまぁ、アレンとネフィスはお前らみたいに可愛い子が好きだからよ、あんま暴言吐くなよ~。 金持ちらしく貴族みたいに綺麗な言葉で嫌味を言え!」
「はぅ……わかったのだ」
「はみゅぅ~……」
「高額卸す時は俺にも飲ませてくれよ! 俺は高い酒しか飲まないからな! 俺が出るって事はお前らの勝ちみたいなもんだ!」
高額を卸したら「魔王様が出る」という宣言により、はみゅエルさんの承認欲求を満たした上にさりげなく煽ってる……。
「……いいよっ☆」
「にゃるる……お任せなのだ♡」
「じゃあ仲良くな! またな!」
そして魔王様はキキカリンさんの席へ。
「ようカリン、キキ! やったな! 最高だったぜー」
魔王様がはみゅエルさんに聞こえないくらいの声で喋ってる。 私は集音魔法で聞こえるけど。
「えっ⁉ 魔王⁉」
あ、そういえば魔王様が直接カリンさん達とお話しするのは初めてだ。
「おう、魔王のアーデルハイドだ。 店での役職はエグゼクティブエンペラーだからそう呼んでもいいぞ? フフン」
「だ、代表……止められなくてすみません」
「ルフラン気にすんな! クッソ面白かったぞ! やっぱカリンはグラス割らないとな~!」
「私、そんな風に思われてたの……」
カリンさんはそれ以外のイメージがないです!
そして従業員のほとんどが祭りを楽しんでてごめんなさい!
「んでよ、ブヒエルにはそれとなく暴言禁止しといたからカリン達もあんま騒ぐなよ? 煽るのはいいけどな!」
「ブヒ……ッ! くくくっ! わ、わかり……ました!」
「ブフォ! はい……!」
キキカリンさんは魔王様の「ブヒエル」呼びにお腹を抱えてる……。
「いや~今日のお前らの煽りは最高だった! 特にキキの『伝票で殺す!』はホスクラ最強魔法だからな!」
最強魔法……。
「じゃあ今月はルフランのナンバーワン目指して頑張ってくれ! またな!」
その後、魔王様は貴族の席から順に挨拶と騒ぎのお詫びをして回った。 みんな魔王様登場に驚きつつも嬉しそうだった。
……下座に座った魔王様からご機嫌伺いをされたらそりゃ多少優越感があるか。 でもなんか魔族としては悔しい!
「よし! 戦後処理は終わったぞー!」
魔王様がバックヤードへ帰って来た。 戦後処理って……確かにそうだけど。
「みんな魔王様のお姿と威厳にビックリしてたね! さっすが~!」
「代表が来るってのは一種のステータスだからな! まあ、俺は魔族だからあんま関わりたくないかもだけど」
「ここでは魔族じゃなくてエグゼクティブエンペラーだよ!」
「魔王様だよぅ!」
思わずアーニャにツッコんでしまった。
「ニーナノリ悪いねー。 あ、じゃあさ、人族の信仰を集めるために魔王様の姿絵も飾ろうよ! 魔王様が一番イケメンだし!」
「やだよ恥ずかしい。 俺は魔王城だけでお腹一杯だ」
魔王様の姿絵……魔王城に肖像画が沢山あったな、あれは麗しかった。 魔王様の姿絵なら私も3枚買う。
そして営業が終わり、ネフィスさんはシャンパンビンダラッシュのせいで血を吐いて死んでいた。
ネフィスさんが悪いわけじゃないから可哀そうだけど、今日かなり売り上げたからこれもナイトさんの宿命だ。
メイリアさんに介抱されてたからとりあえず大丈夫だと思う。
私は2階へ上がり、ご飯も食べずにベッドへ倒れ込んだ。
今日だけで製本所に本屋、印刷屋、名刺、そして戦争……よくぞ生還した私……。
明日は何もありませんように……。
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翌朝、3週目4日、リサさんからアレンさんルフランさんの名刺が出来たと連絡があった。
……60枚あったはずでは。 いやもう何も言うまい。
朝食を食べながらみんなと今日の予定を話していると、メイリアさんもエルドラドに行きたいとの事で一緒に行く事になった。
ディアブロの転移陣へ転移して一緒にぽてぽてとリサさんのお家まで歩く。
「メイリアさんは何の用事なんですか?」
「……飛蝗って分かったから殺虫剤の試作が出来た……実験する……」
「えっ⁉ もう出来たんですか⁉」
「……キャロルさんの本に、有効な素材と錬成を試行錯誤している記載はあった……あとは錬成の成功と実験だけだったから何種類か作製してた……」
メイリアさんの先を見る目はすごい。 ……そして私で人体実験しないよね?
「エルドラドに飛蝗いましたっけ?」
「……いる……採集した時に見つけた……」
「そうなんですね。 あ、リサさんのお家に着きました」
とりあえず名刺を受け取ろう。 リサさんのお家のドアをノックしたら高揚感が溢れ出ているリサさんが招き入れてくれた。
……トランス状態で徹夜したな。 ドルムさん達も……。
「ナンバー0から14と101から115を2人分コン!」
アレンさんとルフランさんの名刺を受け取り、3万ディルをリサさんにお渡しする。
「わぁ! 全部表情が微妙に違いますね! 特にナンバー1桁台は気合いが入ってます!」
「……すごい……綺麗……」
「出来がいいのを若いナンバーにしたコン!」
銀のカードに金で描かれた姿絵はリサさんの絵によって金以上に輝いている気がする。
「では引き続き頑張って下さい!」
「お任せコン!」
リサさんのお家を出た。
「……ニーナ……土がある所で実験してもいい場所どこかな? ……念のため結界張るの手伝ってもらえる? ……」
「? 2階層で聞いてみましょう。 よく分からないけど結界なら任せてください」
メイリアさんと2階層へ向かった。




