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本屋さん!

 ニヤニヤしてる魔王様が逆に怖いようっ! っと思ったら私の頭をポンポンしてくれた。


「まあニーナにしては頑張ったな! 後は俺様に任せろ」


 ? どうやら合格点はもらえたらしい。


「なあボンド、この街に本屋って他にあるか?」


「え? はい、もう1店舗だけありますよ」


 魔王様の笑みがますます深まった! 悪い事考えてるっ!


「ほう……じゃあこの本はボンドの店だけで売ってやる」


 えっ? なんで上から目線なのっ⁉ 他の本屋さんにも置かないと売れないよぅ!


「はて? どういう意味でしょう?」


「結論から言うとだな、この本はスゲー売れる! 初版はプレミア、つまり付加価値が付いてそのうち10万でも売れるぞ! 10年後には100万超えるかもな! それをボンドが独り占めできるってワケだ!」


「初版……なるほど」


 何々? どういう事? 確かに古い本の初版はものすごく高いけど。

 魔界では初版以外は全て手書きの写しで、人界と違って全く同じものは無いからだ。 でも人界でも初版は高いの?


「『初版』と記載して製本するのは50冊だけにする、んで残りの50冊は『第2刷』として製本する。 ボンドには初版と第2刷両方納品するから初版は在庫残しておけ。 意味は分かったか?」


 ええ……初版なのに嘘つくのっ⁉


「な、なんという事を……」


「別に最初の刷りが50冊だっただけだ! これから刷るからな、嘘は言っていない。 んで、買取は10冊ずつでいいぞ、売れなかったらうちの店で売るからいい。 だから3万で買って3万5千で売れ!」


 確かにこれから製本するから嘘じゃないけどぉっ! なんか違う気がするっ!


「うう~ん、わかりました。 売れ行きを見ながらある程度初版を残しておけば将来的に稼げそうですね! でも3万5千で売れるかなぁ……」


「客の目に付くとこに置いときゃいいんだよ! 平置きしろ!」


「ひ、ひらおき?」


「このカウンターに横にして置いとけ。 あ、表紙じゃ中身わかんねぇな、中を開いてここに置いておけ! 勝手に客が欲しがるぞ」


「おお……確かに私の読みかけの本を置いておくとお客様が何の本か聞いてきますね。 なるほど、中身を見せて飾ると……」


「そうだ! でも見せるのは開いてあるページだけだ。 全部見せたら買う意味無くなるからな。

 とりあえずやってみろよ! 絶対売れるから! 高い方が逆に価値のある本だと勘違いして買ってく客もいるぞ?」


 この魔王様の自信はどこから湧いてくるんだろう……。 なぜか売れる気がしてくる……罠かな? 罠なのかな? 私は(だま)されないぞ!


「えっ? 高い方が売れるのですか?」


「そうだよ。 同じような題名の本が売ってたら、高い方がいい本だと思わないか?」


「確かに……」


 確かに……でも姿絵の本なんて他にあったっけ⁉


「あと行商人に売れよ」


「えっ⁉ 他の町や村は識字(しきじ)率が……なるほど、姿絵なら関係ないですね」


「そうだ、田舎は娯楽に飢えてるだろ。 じゃあ決まりな! とりあえず初版と第2刷を20冊ずつにしとくか? 初版抱えておきたいだろ? えっと、3かけ40で~120万だ!」


 あ、あれっ? いつの間にかボンドさんが3万で買う事になってるし20冊から40冊になってるよぅ!


「あ、あの、10冊ずつでお願いします……60万でいっぱいいっぱいです」


 だよね! ボンドさん(だま)されなかった! さすがおじいちゃん、伊達(だて)にお歳を召していない。 あ、でも3万で買う事になってるぅ!


「えー納品めんどくせぇな、すぐ売れるのに。 まぁ仕方ないか、オッケーわかったよ! じゃあ出来たらニーナが持ってくるからよろしくな! お茶ご馳走様!」


 そう言って魔王様は席を立った。 えっ⁉ もう終わり?

 慌てて立ち上がりボンドさんへ挨拶をしてお店を出た。




「ま、魔王様ぁ……いつのまにか3万でボンドさんに売ってましたね、すごいですね。 でも3万5千ディルでみなさん買うんでしょうか?」


「テキトーに思ったこと喋っただけだ! うちの店の客とか貴族の間で噂になって買うだろ」


「あ、今気付きましたけどうちのお店で姿絵を買ったお客様は買わないのでは?」


「それがなー、製本されるとそれはそれで集めたくなるんだよ」


「……アルディナさんは絶対に買いますね」


「ぶはは! そうだな!」


「あっ! あと、本を開いて置いておくなんて斬新です! 売り物なのにカウンターに開いて置いていいのかな? って思っちゃいました」


「姿絵は読まなくても見ただけで中身が分かるからな! 目につくとこに置いておくのが一番だ!」


「確かに姿絵なら見ただけでなんの本かわかりますもんね」


「俺が前いた世界では表紙に姿絵が描いてあったりしてな、表紙を見せるように並べられた本は売れたんだよ」


「魔王様が異世界の話をして下さるなんて珍しいですね」


「これはチートってほどでもないからな。 単純にあの商売が下手そうなじいちゃんに稼がせてやろうと思っただけだ。 俺らが直接売るのはめんどくさいし!」


 魔王様の中のちーとの基準がよく分からない……。


「確かに、本の値段は()り上げましたけどボンドさんの取り分は交渉しなかったですね」


「おう、別に俺が儲けたくてやるわけじゃないからな、あくまで宣伝だ」


「赤字で宣伝してもいいって言ったり、逆に宣伝自体で儲けちゃったり、私はまだ魔王様のお考えには付いて行けそうにないです。 やっぱり魔王様は偉大です」


「あん? 久しぶりに忠犬っぷりを見せたなニーナ。 可愛い奴め」


 魔王様がわしわしと私の頭をなでて下さった。 えへへ、嬉しい。 犬扱いだけど。


「じゃあ次はブブゼんとこで値下げ交渉頑張れよ!」


「ぎゃぴっ!」


 そうだった! まだお仕事は終わってなかったっ!

 気付いたら印刷屋さんに着いてるぅ!


「おーいブブゼ! 早速追加の注文だ!」


 ひぃ! 待って! 心の準備がぁあっ!




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