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お客様増やそう作戦!

 魔王様のお声で営業後のミーティングが始まった。


「看板効果すごいなー! それで、そのうちみんなの姿絵も販売するから楽しみにしてろよ!」


「あっ! こないだリサさんに描いてもらったやつッスか⁉」


「そうだ。 印刷して格安で店で売るぞー! 香水と違って販売相手に条件は無い、初回客でも買える。 指名していないナイトの姿絵も買えるようにするから客が勝手に布教するだろ!」


 ナイトさん達は自分の姿絵が売り物になる事に驚くと同時に喜んでいる。

 みんな看板を(うらや)ましがってたし、アレンさんルフランさんとますます差がつくってちょっとやる気無くしてたもんね。

 さすが魔王様だ、飴と鞭の使い方が上手い。


「出来上がるまで楽しみに待っとけー! じゃあ今日は解散!」




──────────────


 そして次の日。 朝食を食べ終わって部屋でゴロゴロしていたら魔王様から念話が来た。


『ニーナ、姿絵の凸版(とっぱん)が出来たぞ、印刷屋へ行くから用意しろ』


『えっ⁉ 早くないですか⁉ 看板が出来上がったばかりなのにっ!』


『リサが張り切って、トッドはカルムにおだてられて徹夜したらしいぞ。 とりあえず凸版が使い物になるか確認で1枚だけ印刷屋に持っていく』


 試作品か、なるほど。 トッドさん……きっとカルムさんにいい所を見せたくて頑張ったんだな。


 ダイニングへ行くと魔王様が椅子に座ってふんぞり返っていた。 トッドさんもいる……久しぶりだ。


「おはよう! 手直しがあるかもしれないからトッドも連れて来たぞ、じゃあ行くか」


「俺の作品にダメ出しなんか出ねぇからっ!」


「おはようございます。 はい、行きましょう」




 そして印刷屋さんへ。


「おーいブブゼ! 姿絵の凸版持ってきたぞー! 見てくれ!」


 奥からのっしのっしとブブゼさんがやって来た。


「おお、魔王のダンナと嬢ちゃん。 ん? ドワーフか? 珍しいな」


「おう、トッドって言うんだ。 こいつが彫ったから仕上がりを見てくれよ」


 魔王様がミアさんが彫られた凸版をブブゼさんに渡した。


「……おお、すごいな、ちゃんと角が取ってある。 このままでいけそうだな、試しに刷ってみよう」


「俺が彫ったんだから当たり前だ! ブロアさんに活字金属の事を聞いたからな、何となくどういう風に彫ればいいかはわかったぜ!」


 トッドさんが鼻の下をこすりながら得意げに言った。 ()められて照れてる。

 奴隷にされてたブロアさんはずっとこの街にいたから印刷の手法も知ってたのかな?


 ブブゼさんが奥のお兄さんたちに試し刷りを依頼して、しばらく待つと一枚の紙を持ってきた。


「とりあえず店名だけ一緒に刷ってみたぞ。 バッチリだ」


 紙にはミアさんのキラキラ姿絵とその下にディメンションの文字が。 これを一気に何枚も作れるの⁉ 印刷ってすごい!


「スゲェ! 印刷されるとまたなんかこう違うな!」


「おー! ちゃんと印刷されてる! じゃあブブゼ、ミアの印刷は始めてくれ、他の凸版も出来次第持ってくるわ。 あ、これミアの印刷代な、とりあえず100枚」


「うむ、待っている」


「おー! じゃあな!」




 てくてくとディメンションまで戻る。


「トッドさん、一発OKが出るなんてさすがですね!」


「カルムの夜食のおかげだな」


 魔王様がニヤニヤとトッドさんを見ながら言った。


「はぁっ⁉ 俺が仕事してるところに勝手にカルムが来ただけだし!」


 ふふ、トッドさんとカルムさんのやり取りが目に浮かぶ。


「トッドさんの作ったソファの金細工もすごかったですよ! みんなの姿絵楽しみにしてますね!」


「べっ、別にあれくらい普通だぜ! あと16枚なんてすぐに彫ってやるからな!」


 トッドさんが照れてる照れてる。 そんなお話をしながらトッドさんはディメンションの転移陣から帰って行った。


「魔王様、凸版はいつ出来上がるんですかね?」


「リサ次第だな。 トッドはカルムにハッパかけさせるからすぐ出来るだろ」


「姿絵はいくらで売るんですか?」


「……1枚1000ディルかな。 リサとトッドに払う分は店の経費から出すとして、ほぼ印刷代だけだ」


「……魔王様にしては破格のお値段ですね。 ナイトさんの香水とかトリートメントも適正価格ですし」


「物販は採算度外視だ! 宣伝につながるものは赤字でもいいくらいだ!」


「えっ⁉ 赤字でも⁉」


「……この世界には広告費って概念が無いのか?」


「広告費……?」


「金を払ってでも客寄せしたくないか?」


「ええ……それじゃ利益が落ちちゃいますよぅ!」


「バカだなニーナ、うちの店の客単価や月の利益を考えて見ろよ」


「あ……なるほど。 1枚1000ディルなんて誤差ですね」


「そうだ! 本当は姿絵なんてタダで配ってもいいくらいだ! ……捨てられると嫌だから金取るけどな」 


 ……魔王様の経営能力は恐ろしい。 そしてやっぱり根強いトラウマがあるみたいだ。


「あ、宣伝トラックとかもやりたいな~」


 またよからぬことを考えている! とらっくって何っ⁉




──────────────


 そして次の日トッドさんから私へ念話が来て、エルドラドへ行くと姿絵の凸版を4枚渡された……。 早すぎるよぅ!

 どうやらリサさんがトランス状態らしく、トッドさんとブロアさんの2人がかりで凸版を作製しているらしい。


 魔王様へ念話すると、私がブブゼさんの所へ持って行けとの事だったので、今日から毎日印刷屋さんへ足を運ぶことになった。


 さらに2週目の休日、今日もお休みなのに印刷屋さんへ……。 凸版を渡して印刷代金を支払い、納品された姿絵を受け取る。


 魔王様に『私のお休みはぁ⁉』と念話したら『お使いくらいすぐ終わるだろ! 仕事が出来てよかったなニーナ! ははは!』と言われた。

 くっ……! おしぼり作り以外お仕事が無いから何も言えない……ッ!




 そして3週目2日目、ついに最後の姿絵が納品された。 ……姿絵のバレットさんがちょっと若返っている。

 印刷屋さんも仕事が早すぎるよぅ! 魔王様が急ぎの料金を上乗せしたせいだ……ブブゼさんはホクホク顔である。


『魔王様! 全員分納品されました!』


『お! ついに出来たな! 営業前ミーティングで話すからルル達と準備しとけ!』


 ダンスの練習の前に、「準備とは何をすればいいんでしょう?」と聞いたらルルさんがニヤリと笑った。

 ひぇ! なにっ⁉




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― 新着の感想 ―
[良い点] ほほう、バレットさんの姿絵も…そして若返っていると言うことは、リサさんはイケオジの良さをわかっていないようですね!!w
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