看板完成!
「モモちゃん達とパウリーちゃんのお店に行く約束をしちゃったわぁ、間に合うかしらっ⁉」
ハッ⁉ ラウンツさんが最強装備を手に入れちゃう! それだけはやめてっ!
お兄ちゃんやルルさんに視線で助けを求めるとコクリと頷いてくれた……。 お願い! みんなを守って!
ディメンションバックヤードにある転移陣でディアブロのお店を経由しエルドラドの倉庫へと向かうと、倉庫前でリサさんと魔王様が待っていた。
「おはようコン!」
「おはよう! ルル、魔道具と工事よろしくな!」
「任せてちょうだい魔王様」
倉庫の中へ入り看板のお披露目だ! 楽しみ!
中へ入ると大きな看板が立てかけてあった。 ……ああああああああああ! そうだった忘れてたよぅっ!
横長の看板の右に描かれたアレンさんバストアップの姿絵のすぐそばには「恋の無限螺旋階段へエスコートします」と、達筆な筆記体で書かれていた……。
もちろん左のルフランさんにも「通行人のハートにすら火を点けてしまう俺は愛の放火魔」の二つ名と名前が。
そしてド真ん中にはデカデカと「俺の武器は俺自身」って書いてある! なんで魔王様のキャッチコピーが書かれてるのおっ⁉
魔王様、ドブグロでも最終面接でもこれ言ってたな……お気に入りなのかな。
「ま、魔王様……なぜ真ん中にこの文字が? やけに間が空いてるなと思ってたんですけど、店名のディメンションって書く予定じゃなかったんですか?」
「あん? ホスクラの看板っていったらこうなんだよ! 店名なんか端っこに書いときゃいい」
「は、はぁ……」
意味がわからないようっ! 文字を見るたびムズムズするっ! こっちまで恥ずかしい!
「さっすが魔王様! カッコイイね! 『俺の武器は俺自身』……」
またアーニャがブツブツ台詞を唱えてる。
「魔王様イイわぁっ! これでアレンちゃんとルフランちゃんの指名がますます増えちゃうわネッ☆」
「こそばゆいぜ……」
お兄ちゃんはまんざらでもないらしい。
「……じゃ、じゃあ私が運ぶわね」
時間停止していたルルさんが我に返った。
「ルル、大工のモリス連れてくか?」
「っ! い、いえ魔王様、モリスさんにもお仕事があるでしょうしこれは魔族の私達にやらせてほしいわ! ホストクラブは私達のお仕事だもの、7人もいれば大丈夫よ! みんなでこの素晴らしい看板を設置しましょう!」
「ん? お、おう」
ルルさんが饒舌に語って魔王様を説得してくれた。
ルルさんっ……! モリスさんが来てくれたら速攻で設置終わっちゃいそうだもんね! さすがです! ありがとう!
「リサ、看板が設置されるところ見るか?」
「ナイトはみんなリサに描かれるのを喜んでくれたコン。 リサの絵が設置されるところを見たいコン!」
「おう、じゃあリサは見学な! 行こうぜ」
リサさんを連れて魔王様が全員をディメンションの前へ転移させてくれた。
「じゃあルル、店の上部にドドン! とよろしくな!」
「任せてちょうだい。 ラウンツちゃん、コーディ、レイスター、私が上で看板を出すから支えてくれるかしら?」
「オッケーよっ☆」
ルルさん達が身体強化でお店の上部に飛び上がった。 複雑に彫刻されたミニ宮殿だから足場はいくらでもある。
「ちょっと設置しやすいように外壁を変形させるわね」
ルルさんが看板を設置しやすいように外壁を土魔法で一部平らに。 そしてズモモっと出した看板をお兄ちゃん達が支える。
「……ちょっと時間がかかるけど頑張ってちょうだい」
いくらでも時間かけてください!
そして看板設置工事が始まった。
「……ああっ! 看板がズレた! ルルさんすみません!」
「……くっ! 僕もちょっと持つのが辛くなってきました! 一旦休憩を!」
「いいのよレイスター、コーディ、ゆっくり正確に設置しましょう!」
ルルさんお兄ちゃんコーディさん頑張って! ゆっくりやって! 看板設置は慎重にやらなきゃいけないから「仕方ない」よ! 看板が通行人に落ちたら危険だし、うん。
そして30分程経ってルルさんが言った。
「……終わってしまったわ」
「さすがルルさんネッ! 土魔法と金具でバッチリ留まってるわぁ!」
ああ……ルルさんが有能すぎて終わってしまった……。 多分本来なら10分で終わってたんだろうな。
ルルさんが申し訳無さそうに私とアーニャ、メイリアさんを見たけど「仕方ないです」と言う意味を込めてかすかに頭を横に振った。
これが本当の「仕方ない」の意味だ……。
「あとは盗難防止とライティングの魔道具を設置して終わりね。 ラウンツちゃん達ありがとう」
ルルさんだけ看板に残って作業を続けている。 盗難防止?
しかし……改めて設置された看板を見ると壮観だ。 ただでさえイケメンのアレンさんルフランさんが3割増でキラキラに描かれている!
右のアレンさんは手袋を口で引っ張ってはめているポーズだ、横顔だけど目だけこっちを向いてるのがドキッとする。
アゴを上げて上から流し目で見下ろしている感じがセクシー。
リサさんの指定ポーズはアレンさんの魅力を最大限に引き出している。
そして左のルフランさんは……うん、何で自分の左手で騎士服をはだけさせているのかな? 胸元の露出が……。 いやまぁリサさんが指定したんだけど。
ルフランさんは正面の姿絵で、こちらもアゴを上げて細めた目でこちらを見下ろしている、挑発的なポーズだ。 口元からかすかに舌が覗いている。
こ、これはアレンさんより恥ずかしい……。
ってかどっちも避妊案件だ! 街中の女の人が危険っ!
「わぁ! やったコン! リサの絵がこんなに目立つ所に! 街の人がみんなリサの絵を見てくれるコン!」
……うーん、リサさんが喜んでるからいっか。
地面に降りてきたお兄ちゃん達と看板を眺めていたら、街の人が驚いている事に気付いた。
「えっ⁉ この姿絵のお方は誰かしらっ⁉」
「このお店は何のお店なのっ⁉」
「すごい……こんなに大きな姿絵をタダで見れるなんて」
あ、そっか、絵画はお金持ちしか持っていないから一般人は中々見る機会が無いんだ。
確かに盗難防止で結界の魔道具は必須だ、雨風避けだけの意味じゃなかったんだ。 さすがルルさん。
アーニャは看板を見た街の人達に声をかけてお店の宣伝をしている。
「じゃあアタシはそろそろお買い物に行ってもいいかしらっ? 今ならモモちゃん達との約束に何とか間に合うわっ☆」
……誰もラウンツさんを止める事が出来ないっ! くっ!
「おう! あ、ラウンツ、パウリーんとこに行くんだろ? ついでにパウリーに看板が出来たって伝えといてくれよ! あの店の看板も作るから見本としてこれを知らせなきゃいけねんだ」
「オッケーよ魔王様っ!」
あああ! ラウンツさんを止める理由が無いどころか魔王様のお使いの大義名分が出来てしまった!
……もう諦めよう。 私達に出来るのは夜中に結界の魔道具が鳴らないことを祈るだけ……。
リサさんはしばらく看板を眺めて満足したようで、ディメンション店内の転移陣から帰ると言った。
私達もどうせ営業準備があるのでディメンションの2階へ。
……看板を見たアレンさんとルフランさんはどんな反応をするのかな?
明日6/3(木)はお休みします。




