迫り来る死
翌日の営業日……。
ひぇ! ミミマカリンさんと悪魔来襲だ!
「ぎゃあ! またミミマカリンちゃんが悪魔召喚したね! ニーナ、悪魔祓いの魔法知らない?」
アーニャが唯一苦手なものはおネエかもしれない。
「し、知らないよぅ! また聖属性魔法あみ出したら?」
「……クッ! これだけは出したくなかった……諸刃の剣だけど仕方ないね! ……深淵に蠢く悪魔よ────」
あ、始まった。 また巻き添えを食うから〈結界〉っと……。
「汝が律するは生の終曲にして死の序曲! 天霊歌う処に我は在り! 永久に響け! 壮麗の歌声────〈聖なる葬送曲〉!────ぐあぁあああっ‼」
あ、やっぱり自爆した。
ずいぶん長い詠唱だったから一生懸命温めてたんだろうな。 でもホーリーデスマーチってダサい……。
「……クッ! 効いていない……だと……っ⁉」
「ホントお前ら楽しそうだな……」
また魔王様が呆れている。
「ちょっとラウンツちゃんっ! アタシ達の席に来てっ!」
「? かしこまりました」
何だろ?
ラウンツさんが深淵に蠢く悪魔達の席の横で腰を落とした。
「ジャーン! 見てこれすごくないっ⁉ 新作なんだけどこれ着たらチップ弾みそう!」
そう言ってカリンさんがピラリと拡げたのは……あああああっ! 魔王様デザインのお色気ベビードールぅうううっ‼ しかも人口が増える方っ!
それはラウンツさんにトップシークレットにするつもりだったのにぃっ! なんて取り返しのつかない事を……ッ‼
「ラウンツちゃんっ! アタシ達もこれを着るべきよネッ⁉」
「イヤンッ! スゴいわぁっ! ちょっとどこで買ったのかしらっ⁉」
「仕立て屋パウリーだよ! 今日ルフランと騎士服を仕立てに行ったらオススメされたんだ!」
カリンさんよりにもよってパウリーさんのお店へっ!
「アラッ⁉ アタシがいつも行ってるお店じゃなぁい! パウリーちゃんったら何でアタシには新作を教えてくれなかったのかしらっ?」
パウリーさんのお店の従業員さんが全滅するからですうっ!
「カリンちゃんヤバいね! チップいっぱい欲しいからあたしも買おうかな⁉」
「……アッシュの反応が楽しみ、ふふ」
ミミマカリンさんの装備としてはこれ以上無いくらいピッタリだけどっ!
「ラウンツちゃんっ! 早速明日イクわよっ⁉」
「モモちゃんっ! ありがとっ☆ チェリーちゃんリンゴちゃんもイクわよねっ⁉」
「モチのロンよっ!」
「イクに決まってるじゃないっ!」
あああああ! パウリーさん達のお墓が深淵に建っちゃうよぉ!
アーニャは座り込んでガタガタ震えている……。
「魔王様ぁ! 責任取って下さいよぉ! ラウンツさん営業中なのにおネエに戻っちゃってますし!」
「ははははは! おもしれー! パウリー死ぬな!」
……また他人事だと思ってっ! パウリーさんごめんなさい!
そして悪魔達と、今日も来たはみゅエルさんに精神力を削がれ営業が終わった。
はみゅはみゅと悪魔の高笑いのダブルパンチはキツかった……。
拝啓、お母さん。 人界は怖い所です!
2階へ上がったらメイリアさんに服をつままれダイニングの隅へ連れていかれた。
「……ニーナ……虫害を起こしてる虫が何か聞いてる?……」
「? 聞いてないです」
「……そっか……」
……メイリアさん、殺虫剤の研究を完成させようとしてるのかな。 いざという時のために。
「ま、魔王様に聞いてみましょうか?」
「……! ……でも魔王様のご意志に反するかも……」
魔王様、「魔界は無関係を貫く」「そう簡単じゃないんだ」って言ってたもんね……。 でも……魔王様は悩んでいた気がする。
「……魔王様は、いきなり無茶振りをして人を振り回すのが得意です。 メイリアさんが『趣味で研究した事』を利用する日が来るかもしれません。 ……だから何も言わないと思いますよ?」
「……そう……かも……」
「さりげなく聞いておきますね!」
「……うん……ありがと……」
ご飯の準備をし始めたみんなはそれとなく私とメイリアさんの会話を聞いていたけど、誰も何も言わなかった。
──────────────
「〈エターナルフォースブリザード〉!!!!!」
……ハッ! よかった、夢だ。
「ドグラマズーン‼ ゴルブレアセム‼ バムドムグレアッ‼」
隣のメイリアさんの部屋から叫び声が聞こえる! ……もしかしてっ⁉ メイリアさんごめん! 部屋に入るね!
「メイリアさんっ! 大丈夫ですかっ⁉」
ゆさゆさとメイリアさんを起こす!
「フォウンテセスヴァイアァァァアアアアアーーーーーッ‼ ……っ! ニーナ! 危険!」
「しっかりして! それは夢だよメイリアさん!」
「……っ⁉ ……ハァ……ハァ……ありったけの魔植物を当てても効かなかった……」
い、一体どれだけ魔植物を持ち歩いてるの⁉ そしてこの光景はデジャヴだ。
「……もしかしてメイリアさん、ラウンツさん達と戦ってたんですか?」
「……うん……こんな罠があるなんて……」
メイリアさん……悪魔達の会話を聞いちゃってたんだ……。 どれだけすごいデザインか克明に悪魔達が語ってたもんね、集音魔法を解除してても聞こえてくるくらい大声で。
魔王様のホストクラブはホントに悪夢まで見せてくるよぅ! なぜこんな事にっ⁉
全部魔王様のせいだっ! 絶対虫を聞き出してやるぅ! メイリアさんには研究の事だけ考えてもらうんだっ!
「メイリアさん! 絶対に虫を突き止めるから待ってて! もう虫の事だけ考えればいいようにするからねっ!」
悪魔より「黒雲の悪魔」の方がはるかにマシだっ!
「……? ……ありがと……」
ちなみにアーニャもうなされてたけど放置した。
ラウンツさん以外のみんなが口数少なく朝食を食べている……。 被害は甚大だ。
私は悪夢を忘れるため「さて魔王様にいつ虫のことをお聞きしようか」と考えていたら魔王様から念話が来た。
『おいみんな! リサの看板が完成したぞ! エルドラドの倉庫に来てくれ!』
えっ⁉ 早ぁっ! でも楽しみ!
綺麗な絵を見れば、ふと頭にチラつくラウンツさん達のベビード-ル姿が消えるかも!
……人に想像させるだけで殺傷能力を持つあの「人口が増えるベビードールと悪魔」の組み合わせは、世界中の禁忌として取り締まりをアナーキーの5億倍強化すべきだ……。
もう二度と夜中に結界の魔道具が鳴りませんように! 鳴ったら今度こそ私達が死ぬ‼
そんな事を考えながらとりあえずみんなでエルドラドへ向かった。
ちなみにアーニャは私が見捨てたせいで瀕死の重傷を負い、「……教会……悪魔祓い……寄付……いくら……」とブツブツつぶやいていた。
アーニャが改宗する日は近いかもしれない。
アーニャにググり方を教えてあげたい
お知らせ(2021/7/22追記、以下のURLは109話後書きと同じものです)
週末体調が悪く書けていません。ストック確保のため今週はお休み多いかもしれません。
とりあえず6/1(火)はお休みです。
6/1(火)はアレン×ルフランのパラレルワールドのお話を別小説として投稿しますので何卒ご容赦を!
題名
「魔王様のホストクラブ作り!……に振り回されて大変です!」のパラレルワールド
URL
https://novel18.syosetu.com/n5202gz




