アレン:ナイトの更衣室
寝過ごしました!
ブクマ感想評価本当にうれしいですありがとうございます(´;ω;`)
「オナッシャース! 素敵な姫からご指名頂きましたァ!」
ネフィスがフロアへ叫んでくれた。
「「「アザーッス!」」」
ミュリエルちゃんみたいなタイプは初めてだなぁ。 さて、どう攻略すればいいのかな?
「ミュリエルさんから見て僕たちの騎士服はどうですか?」
「みゅうって呼んでっ☆」
彼女呼びオーダー頂きました。 仰せのままに。
「みゅうから見てどう?」
「うんっ! カッコイイねっ☆ アレンきゅんに似合う~! 本物の騎士みたぁい☆」
「実は代表がデザインしたんだよ」
「代表ぉ?」
「ああ、魔王の事」
「魔王がデザインした服……? みゅうの方がカッコイイの作れりゅもんっ!」
デザインと聞いて闘争本能が掻き立てられたんだね。 よかったよかった。
「え? さすがプロだね。 みゅうが考えた理想の騎士服を着てみたいな」
代表が「別に騎士服なら何でもいい」って言っていた。 魔界ではお客様にオリジナルの騎士服をプレゼントしてもらうのが流行っているらしい。
「うみゅ? みんな同じ騎士服だから制服だと思ってたけどいいにょ?」
「みんな働き始めたばかりだから支給された服を着ているだけだよ。 そろそろ僕も自分で発注しようとしていたところなんだ」
「そうなのっ⁉ じゃあみゅうのお店においでよっ☆」
「本当? 行きたいな! ……でもお客様と外で会っちゃいけないルールでさ」
「えー! でもでもぉ、アレンきゅんがみゅうのお店にお客さんとして来るだけならいいでしょ……?」
「うーん、確かにそれならしょうがない……かな? でもみゅうに一からデザインしてもらって仕立てるとなると僕破産しちゃう、あはは」
「アレンきゅんを見てもうデザイン浮かんじゃってるのぉ! 騎士服プレゼントしてあげりゅからぁ~☆」
わー、店外と騎士服ゲット。 お金持ちの着せ替え人形っていう営業の仕方も悪くないかも。
「えっ? いいの? 嬉しいな」
「やったぁ☆ じゃあいつ来りゅぅ~?」
「明日朝一番で。 プリンセスに会いに行くよ」
即答。 他のナイトに手を付けられる前に短期決戦だ。 この子をエースにする。
「……朝はみゅう忙しいんだけどぉ~」
女の子が一度断るのは挨拶みたいなもの。 言い訳を作ってあげればいい。
「ああ、経営者ならそうですよね、すみませんでした。 僕は午前中しか時間が無いので……残念です」
「にゅ……」
「騎士服は他のお店で作ればいいので気にしないでください。 でもみゅうに会いに行く口実が無くなっちゃったな」
敬語に戻して距離を置く、そしてプレゼント目当てじゃないですよ。
「むいぃ……しょうがないのだ。 明日の予定空けておくねっ☆ ちょートクベツだよっ?」
「わぁ! ありがとう、楽しみにしてるね!」
「ふふふ~ん、みゅうにおまかせなのぉ☆」
僕のターンに戻ったのにミュリエルちゃんはご機嫌だ。 僕も今週は引っ越しでご機嫌だから頑張ってあげるよ!
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営業後のミーティングが終わり着替えていたらネフィスに話しかけられた。
「アレン、明日俺も行くから」
「ああ、僕たちの会話聞いてたの?」
「おう、抜け駆けさせないぞ?」
「別に抜け駆けする気はないよ。 あ、ルフランも行かない? ナンバーなんだからそろそろ自前の騎士服があってもいいでしょ?」
「何の話だ?」
インナーのシャツを脱いでいたルフランに話したら「カリンと行くか……」と迷い始めた。 ルフラン容赦ないなぁ。 そして早く服を着てよ。
「あっ、カリン連れて行ったらキキにバレるな。 ネフィス大丈夫か?」
ルフランがそう言うとネフィスは鼻で笑った。
「躾済みだから大丈夫だ」
う~ん、どう躾けたのか想像できる。
「……ネフィス刺されるなよ? あーでも俺が行ったらあのフリフリが俺に一目惚れして指名替えしちゃうかもなー! 別の仕立て屋に行くわ」
ルフランのイケメンジョークだ。 ネフィスがルフランの首を固めた。
「セシルも行かない?」
僕がそう言うとセシルは「恥ずかしいから別で仕立てます」と言った。
セシルってなんとなく秘密主義者だ。 決戦日にどうやってララちゃんに100万持ってこさせたんだろう? 結局全部使わなかったみたいだけど。
「あ、後でミアが知ったら泣くから僕が念話しておきます。 ミアがアンナさんに言えばアンナさんのツテで彼女が張り切って仕立てるでしょう」
確かにセシルの言う通り、僕達の新しい騎士服を見たら泣いちゃいそうだな。 「ズルいニャ! 僕も新しい騎士服が欲しいニャーーー!」って。 ふふっ。
ミアは女の子だからいつも騎士服のまま転移陣でエルドラドに帰る、今日もすでに帰った後だ。 セシルは周りをよく見てるなぁ。
着替え終わったみんながじっと黙る時間がある。 営業の念話だ。
僕はまずミュリエルちゃんから始めて全員のお客様に念話した、そして最後にクラリゼッタ様。
『クラリゼッタ様こんばんは。 今夜もまだお酒を召し上がっていらっしゃいますか?』
『……まったく懲りないですこと。 ちょうど寝ようとしていたところなのだけれども? 平民と違って明日も忙しいわ、もう切るわよ』
そっけないけれど、クラリゼッタ様が毎晩僕の念話を待ってくれているのは何となくわかる。 だって無視されたことは無いから。
『すみません。 あ、そうだ、やっと新居が整いましたよ。 僕はもう大丈夫です。 ではおやすみなさいプリンセス』
『……そう、おやすみなさい』
出会った最初は僕も「何だこのクソババア」と思ってしまったけれど、会話のひとつひとつをほぐしていけば、クラリゼッタ様は貴族として振舞うための仮面をぎこちなく被っているだけに見えた。
そして今は鉄兜を被ってしまっている。 貴族として平民の僕を守るために。
クラリゼッタ様が「もう飽きたわ」と店に来なくなったのは僕を巻き込まないためだ。
だって誰よりこの店を好きだったのはクラリゼッタ様なのだから。
本当の中身は幼いお姫様、大きくて重い装備を振り回したらそりゃ不格好になる。 ひねくれた可愛らしさも僕は嫌いじゃない。
だから僕はこれからも毎日念話する。
「アレン、俺帰るぞ」
僕の念話が終わったのが分かったのかルフランがそう言った。
「ああ、お疲れ様。 次の休みまでに準備できそう?」
「なになに? 何があんだ?」
面白いことが好きなヴァンが首を突っ込んで来た。
「ルフランが僕の新居に引っ越してくるんだよ」
「マジか! アレン豪邸に引っ越したんだろ⁉ 俺も住みてぇ!」
豪邸ではないけれど……前のボロ屋に比べたら豪邸かも。
「俺はカリン対策のためにやむを得ずアレン家に住むだけだ……」
ルフランが嫌そうな顔をしてヴァンに弁明した。
「あー! カリンちゃんな! ストーカーしそうだもんな! アレン家に引っ越すのは正解!」
「ヴァンうるせぇ……とにかく俺の客にはすでにアレン家に引っ越したって事になってるからみんなよろしくな!」
みんながルフランに同情の視線を送って了承の合図をした。
うーん、さすがに今月のナンバーワンはルフランに取られちゃうかな?
明日はナンバー維持のためにミュリエルちゃんの営業を頑張ろう。
僕が本気を出さずにルフランがナンバーワンになってもきっとルフランは喜ばないから。
打倒、カリンちゃん。
ララ「ね、念のため! 念のため持ってきてただけだから!」
次回「※※※※死す」
デュエルスタンバイ!




