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物盗りの目的

 キャッキャという子供たちの声で目が覚めた。 ……あ、アレンさん達家族が泊まってたんだった。

 着替えてダイニングへ向かうと、もうアレンさんと子供たちが朝食を食べていた。 ルルさんコーディさんが早起きしてくれたみたいだ。


「あ、ニーナさんおはようございます。 昨夜はありがとうございました」


「アレンさんおはようございます。 寝れましたか?」


「おかげさまで」


「おねえちゃん! まほーみせて!」

「えたふぉみせて!」

「エタフォ見たいです!」


 私を見る子供たち全員の目がキラキラしてる! ひぃ!


「な、なぜエタフォの事を……」


 ギギギ……とルルさんへ視線を移す。


「わ、私じゃないわ。 ニーナちゃんが貴族街へ行っている間にアーニャちゃんが……」


「くっ……アーニャめ!」


 起きてきたら肩パンだ!


「えたふぉー!」

「えたふぉー!」


「みんなごめんね、エタフォは魔王様の許可が無いと使用しちゃいけないんだよ」


「まおーよんでー!」

「まおー! まおー!」


「おはよう!」


 ぎゃぴっ! 子供たちが魔王様を召喚したっ!


「まおー! えたふぉみたい!」


「あん? エタフォか? 危ないからダメだぞー!」


「けちー!」

「けちんぼー!」

「みんな、ニーナさん達を困らせたらいけないよ。 代表、おはようございます」


「おう! 家探ししとけよアレン!」


「はい! お世話になりました! あと朝食もごちそうさまです」


「もう帰るのか? 家探しするんだろ、子供たち置いてくか? 家に戻すか?」


「あ……多分大丈夫です、ありがとうございます。 大きい子は下働きに行きますし、小さい子は僕が連れて行きます」


「そうか、わかった。 しばらくの間はアレンの出勤時間から、俺が魔眼でアレン家を見とくわ」


「そこまでして下さるなんて……ありがとうございます」


「まおーまたね!」

「こんどえたふぉみせて-!」


 子供たちがばいばいと手を振り、アレンさん家族は帰って行った。




「よし! じゃあニーナ行くぞ!」


「はへ? ろこへ?」


 起きてきたみんなと朝食のパンをほおばっていたら魔王様に話しかけられた。


「オルガ城だ! ほとんどニーナが現場を見てるからな!」


「ふぉ、ふぉっふぉはっへふははい!」


 ちょ、ちょっと待ってください! 急いでパンをスープで飲み込む。


「食い終わったな? 行こう!」


 あああ! また人の返事を聞かないっ! そしてアーニャに肩パンし忘れたっ!




 はい、着いた先はオルガ城の来賓(らいひん)室。 3回目です。 お姫様と宰相さんだけいた。


「ようアリア! あれ? 国王は忙しいのか?」


「父上は立場上話せない事も多いからの……わらわなら憶測でも色々と話ができる。 父上には宰相が報告する」


「ふーん……まぁなんとなくわかるわ」


 ? どういう事だろう。 とりあえず私は挨拶だけした。


「早速だけど、アレン家に物盗りが入ったのは念話した通りだ。 んで俺は呼ばれた訳だけど、何かあったか?」


『あ、あれ? 魔王様クラリゼッタさんの話はしないんですか?』


『俺たちが貴族の屋敷に侵入したなんてわざわざ言わんでいい』


 魔王様に念話で聞いたら納得の答えが。 確かに私が不法侵入で罪に問われたら嫌だっ!


「うむ。 実は昨夜クラリゼッタの屋敷にも物盗りが入ってな……クラリゼッタの貴金属がいくつか盗まれた」


「ほう……アレンとクラリゼッタ、繋がっているのは俺の店、そういう事だな?」


「うむ。 2つの事件は同一犯か同胞じゃろう。 ただの金品目的とは思えぬ。 貴族の屋敷で盗みを働ける人間がわざわざアレンの家を狙う意味が分からぬからの」


「盗んだ貴金属はダミー、本命は他の物って事か?」


「そう考えておいた方がいいの……」


 お姫様は悲しそうだ。 何故だろう?


「つまり俺ら魔族との繋がりを()ぎまわられてるって事だろ? わかったよ、そんな顔すんな。 魔族がいる事でオルガに迷惑かけて悪かったな」


 え? 私達が迷惑かけたの?


「謝るでない。 ドワーフの武器防具に目がくらんでおぬしらと内々に交流することを決めたのは父上じゃ」


「……さて、誰かが俺らを悪者にしようとしてるわけだな。 国内か? やっぱりアレイルか?」


「アナーキーの件から考えてやはりアレイルに注意すべきと考えておる。 国内は、王子の2人、つまりわらわの兄上じゃが派閥争いは今のところ無い。 2人とも正妃の子じゃからな。 第一王子、ヴァレリアン兄さまの支持率は高く、次期国王は固い。 国民は魔族への恐怖はあるであろうが、父上が魔族に攻撃禁止の約束を取り付けたと上手く収めた事になっておる。 わざわざ魔族を刺激する国民はおらんじゃろう」


「ふーん……やっぱアレイルか。 ディオルだっけ? アレイルに(とつ)いだ姉ちゃんが来れなくなったって言ってたしな」


 誰? 魔王様は決戦日に内緒話してた時に聞いたのかな?


「うむ。 ディオルフィーネ姉さまは第一王女であり、アレイルの第一王子へ嫁いでおる。 決戦日に合わせて呼び寄せておったのじゃが……急に来れなくなったのは姉上もおかしいと思っておるようじゃ、(ふみ)に遠回しに書かれておった。 ちなみに念話は距離が遠すぎて届かぬ」


 え、第一王女様を決戦日に呼んでたのぉ⁉ そして人族は長距離の念話が出来ないんだな。


「姉上が文でそれとなくアレイルの情勢を教えてくれるのじゃが、当たり(さわ)りの無い情報しか持っておらぬ。 アレイルに嫁いだ他の貴族もじゃ。 ……アレイルから我が国へ情報が入らないようにされておる気がする……いや、そうだと確信しておる」


「言い換えれば人質のディオルをオルガに行かせなかったって事か」


「ううむ……」


 あ、他国に嫁いだ人はいざという時に人質にされるんだ……。


「なあ、アレイル特産の香辛料も例年より収穫量が減ったけど輸出できない程じゃないって言ってたよな? なのに小麦は国債で買ってるってどういう意味だ?」


「香辛料は少量で大金が得られる、輸出にはもってこいの品じゃ。 小麦が足りなければ香辛料の輸出を増やせばよかろうに。 そして香辛料はな……戦争に必須じゃ、保存食加工に使用するからの。 アレイルが国債で小麦を買うようになってから、我が国への香辛料輸出量はガクンと減った。 アレイル側は小麦が足りないから保存食用に香辛料が大量に必要、と言っておるが……アレイルは、本来我が国の分の小麦と香辛料をため込んでおる……とも言える……」


 も、もしかして……アレイルは戦争するの⁉

 お姫様の顔が苦虫を()(つぶ)したように(ゆが)み、瞳は(うる)んでいる。


「戦争準備の可能性か……。 戦争をけしかける理由に、オルガが俺ら魔族を(かこ)ってるとでも言いたいのかアレイルは? 戦争するとしたらいつだ?」


「あくまで最悪の事態を想定するとそうなるの。 アレイルが攻めてくるとしたら晩春の大麦収穫を終えてからが濃厚かのう……。 小麦は我が国からの輸入では足りないようじゃ、豆も大量に輸入したいと申し出があってな。 ……戦争で奪わなければならないほど国民の腹が持たないという事じゃろうか……」


「……同盟国のオルガに攻め込んでまで戦争する意味か……」


「そこがわからんのじゃ。 戦争をすればより国が疲弊(ひへい)する、しかも攻める方が大変じゃ、何かおかしい。 よっぽどアレイルが困っておる理由があるはずじゃ!」


「はー……国王がわかんねぇんじゃ俺らもわかんねぇな。 とにかく俺らはディメンションに影響が出ないようにしたいぞ。 話が戻るけど、アレイルは何かしら切羽詰まってて、んでオルガに攻め込む理由として、オルガと魔族の癒着(ゆちゃく)を示すものが欲しかったって事か? んで物盗りがその証拠を探してたってか?」


 魔王様のその言葉で私の全身からブワッと冷汗が()き出した!

 ……どどど! どうしよう! 私ものすごい失敗しちゃったかも! もしかしてっ……!




ちょっと明日の更新も不穏な話が続きますが、明後日はお待ちかね(?)の二つ名発表です! お楽しみに!

Twitterアンケ投票してくださった方ありがとうございます(∩´ω`∩)

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