横流しの魔道具が発動!
HJ小説大賞2020後期 二次選考通過しました。
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何で横流しされた魔道具までっ⁉
「魔王様っ! コッチも助けに行くのかしらぁ?」
「……アレンとタイミングが重なっている、調べておこう」
「魔道具から私の魔力が放出されているはずだから、私の魔力を探せばいいわ!」
「ルルの魔力か……城の近くの貴族街だな」
窓の方を見ながら魔王様がそう言った。 魔眼で見たのかな?
私もルルさんの魔力を感知してみたら貴族街の方にいくつもある……横流しされた魔道具だ。
そしてひとつだけ魔力が広がっている、これだ!
「横流しされた魔道具はやはり貴族の護身用に売られたのね……」
なるほど……。
「貴族門の先じゃアタシ達は簡単に入れないわぁ!」
「俺が転移させる、アレン達がいるからラウンツはここに残れ、連れて行くのはレイスター、ニーナだ!」
なんでまた私っ⁉
「了解よっ! ここは任せてちょうだいっ!」
「了解です!」
「みんな、寝袋だけ出して」
あ、アレンさん家族の寝る場所が無いもんね。 ルルさんの気配りはさすがだ。
「よし! 行くぞ!」
ぎゃぴっ!
寝袋を出した瞬間にはもう庭らしき場所にいた。
……周りを見たらちゃんと木の陰に転移してる、魔王様の転移の精度が高すぎるよぉ。
『俺がパーティ念話を展開するわ、到着したぞ』
さっきルルさんがパーティ念話を解除したので魔王様が展開し直してくれた。
『魔王様、この屋敷ですか?』
『そうだレイスター、俺と待機だ。 ニーナ、アレンの時みたいにコッソリよろしく! 2階の部屋だ、魔力感知で分かるだろ?』
『ひぃ! 貴族の屋敷ですよね⁉ 見つかったら殺されますぅ!』
『お前なら死なない、行け』
『ひゃい……』
……しくしく。 物理的に死ぬかどうかじゃなくて何かの罪に問われるのが怖いんだよぅ!
仕方なく〈影移動〉で地面に潜りスルスルと移動……今度は天井から落ちないぞ!
2階のルルさんの魔力の近くへ。 また天井くらいの高さまで来てまずは耳を澄ます。
「奥様、屋敷を一通り調べましたが物盗りは逃げたかと思われます。 引き続き調べます」
「そう……私はこのまま自室にいるわ」
「かしこまりました」
これは……クラリゼッタさんの声? 大丈夫そうなので目だけひょっこり出す。
『あ! クラリゼッタさんです!』
クラリゼッタさんは一人で結界を発動していた。 周りに護衛の人達がいる。 さっき話してた人はセバス(チャン)さんかな?
クローゼットが開いている、ここに物盗りが入って来たのかも。 気付いたクラリゼッタさんが魔道具を発動させたのかな? これも報告。
『クラリゼッタか……。 クラリゼッタに被害が無いなら姿を現さなくていい、そのまま屋敷内の話を聞いて報告しろ。 不審人物がいたら拘束だ』
魔王様へ了解と返してそのまま影に潜み続ける。 クラリゼッタさんの所も物盗り……とりあえず無事でよかった。
クラリゼッタさんは部屋でじっとしているだけなので、セバス(チャン)さんを追いかける事にした。
「旦那様、無くなった物はございましたか?」
「ここは一見荒らされていないからな……わからん。 だが仕事の書類はほとんど城にあるから大丈夫だろう」
「かしこまりました。 引き続き屋敷内を警戒します」
「頼んだ」
クラリゼッタさんのご主人さんだ。 見てみると机や書類、本棚が沢山あるけどベッドは無いからここはご主人の書斎かな。 税金を取りまとめてるって王様が言ってたな。
荒らされてはいないけど念のため無くなったものが無いか調べてるみたいだ。
他の部屋もコッソリ見てみたけど、荒らされたのはクラリゼッタさんの部屋だけみたい。 不審人物はいなかった。
念話で報告したらもう帰って来ていいとの事だったので魔王様の元へ戻る。
『ニーナお疲れ! やっぱ便利だなー! ははは!』
『また便利屋扱いっ! 緊張しましたよぉ……』
『俺も〈影移動〉が使えたらなー! あ、外にも不審人物はいなかったぞ、魔王様が魔眼で監視してたから間違いない。 もう逃げた後みたいだな』
『とりあえずディメンションに帰ろう。 メイリアはディアブロ側のパーティ念話を繋げたまま戻って来てくれ』
『……了解……』
魔王様に転移させられてディメンションへ。 メイリアさんも戻って来た。
アレンさんの弟さんはコーディさんの部屋で寝てるらしい。 妹さんはルルさんの部屋。
「アレン、もう一つの魔道具はクラリゼッタが持っていた。 あっちも物盗りみたいだ」
「クラリゼッタ様が……」
「ああ、でも人的被害は無かった。 ただな……アレンとクラリゼッタ、共通点はうちの店だ」
あ! 確かに! ……ど、どういう事?
「王族に報告しておくからとりあえず安心しろ。 アレン、給料が出たらすぐに引っ越さないか?」
「引っ越しは元々考えていましたからいいですけど……」
「5日の給料日は店休日だから、今回は特別に4日に前倒ししてやる! 店休日に引っ越せ!」
ひぃ! 無茶振りだよぅ!
「わかりました、今より安全な家に引っ越します!」
えぇ……アレンさん物わかり良すぎぃ! でも安全のためなら確かにすぐ引っ越したいかも。
「アレン君、今からでもすぐに魔道具へ魔力の充填をしておいてね、時間がかかるから」
あ、ルルさんの言う通りだ。 また何かあるかもしれないからね。 ……何もありませんように。
「はい!」
「魔王様っ! 結局物盗りの目的は何だったのかしらぁ?」
「わからん……でもうちの店が巻き込まれてる可能性がある、参ったな。 俺はホストクラブをやりたいだけなのによー! あ、アレン、録音は?」
「できていると思いますが……物盗りは一言もしゃべっていません。 聞いても物音と僕達の声しかしないと思いますよ?
ちなみに犯人の性別もわかりません。 顔を布で隠していましたから」
「そうか、じゃあいいや」
「魔王様! しばらくアレンくん家の夜間警備は私達がローテでやるよ!」
「ああ、そうだなアーニャ。 でも俺が魔眼で見るからいいぞ、何かあったらラウンツ、レイスター、アーニャが出動よろしく」
えっ⁉ 魔王様いつ寝るのっ⁉
「オッケーよっ!」
「了解です」
「任せて! イケメンの安全は私が守るよ!」
「よし、じゃあ明日俺がオルガ城に報告するわ。 今日は解散! 寝ろ寝ろ!」
魔王様のお声により各自部屋へ戻って就寝した。
アレンさんとクラリゼッタさん……何でこの2人が?
ディメンションが巻き込まれている? 何に?
ぐるぐると思考の渦に飲み込まれながら意識を手放した。




