2号店初の決戦日 営業後ミーティング!
「お疲れ! アレン、ナンバーワンおめでとう! プチミーティングするぞー!」
魔王様のお声がかかったけど、シャンパンタワーでナイトさん達は軒並みソファで死んでいる……。 緊張が解けて酔いが回って来たんだな。 でもミアさんとアレンさんだけはピンピンしてる!
「……うう……メイリアちゃん解毒ざ……うっぷ!」
みんなトイレへ駆け込んでいる。 今までトイレが吸収したお酒の総額から考えて、トイレが裏のナンバーワンかもしれない。
「ヴァン! 早く! 変われ!」
「うげろるおるおおおおおおおおお! 無理ーーー! チキショーーー!」
「……もう少し待つか」
魔王様はトイレ争奪戦を見てへにゃりと笑った。
気になっていたのでぽてぽてとアレンさんに近づき話しかけてみる。
「あ、あのアレンさん、もしかして亜空間魔法を……」
「はい! お客様には悪いですが全て亜空間へ流し込みました! あはは」
「そ、そうですか……。 ブランデーとタワーのコールを分けたのもアレンさんが?」
「はい、クラリゼッタ様はそういうのが好きそうでしたから」
「な、なるほど……」
「おっ! 面白い話してるな! アレン、ミーティングで話せ! おーい! 生きてる奴だけでミーティングするぞー!」
魔王様のお声でみんな何とか集まってきた。 半分は死んだまま座ってるけど。
「コーディ、売り上げ結果をよろしく!」
「はい! アレンさん667万5千、ルフランさん613万5千、ミアさん518万2千、ネフィスさん202万3千、セシルさん185万9千、ヴァンさん184万5千────」
ひぇ! 冷静になってみると600万超えって! 魔界の比じゃないよぅ!
「改めてアレンナンバーワンおめでとう! ルフランもよくやった! ミアも頑張ったけどもうちょいで看板だったのにな!」
「ニャーーー! 看板に載りたかったニャーーー! うわーーーん! ニャァアアアーーー!」
ミ、ミアさんが大泣きしちゃったよぅ! ドブグロの時みたいだ! また戦争起こさないよね⁉ ……アンナさん達が帰るまで悔しさを我慢してたんだな。
「ミア泣くな! 別の看板なら載れるかもしれないぞ?」
「ニャ⁉ ホントニャ⁉ 嘘じゃないニャ⁉」
「う~ん、まだ約束できないけど、他のナイトも含めて色々考えてるから待ってろ」
「わかったニャ! アイドルになるためなら待つニャ!」
た、立ち直りが早い……。 魔王様はミアさんを上手くコントロールしてるなぁ。
「って事で、アレンとルフランは店のデッカイ看板に姿絵を描いてやるからなー! 楽しみにしてろよ!」
「はい!」
「はいっ」
アレンさんとルフランさんは嬉しそうだ!
「次は二つ名だ! ナンバー3は大体わかってたからな、アーニャ、考えてあるだろ?」
「任せて!」
「これは後で決めて明後日発表するわ! 明日はゆっくり休め!
あ、アレン、ラストオーダーの駆け引きを教えてやれよ。 それとも俺が解説しようか?」
「あはは、秘密にしたかったのですが……簡単な事です。 セリーヌさんは100万、カリンさんは200万が予算じゃないかと、クラリゼッタ様とそれに賭けました」
「ほう……よく分かったな。 たしかにセリーヌの会計は100万弱、カリンの会計は200万弱だ」
「普通の人間が大金を持ち歩く時、キリのいい金額を持ってくると思ったんです。 ですから2人の予算から逆算して、クラリゼッタ様は250万で勝負しました。 カリンさんの予算が200までなら勝ち、300なら負けです。
ちなみにカリンさん以外のルフランのお客様からのラストオーダーは、僕も他のお客様からのシャンパンで相殺することが前提でした。 いやぁ、ルフランのラストオーダーのシャンパンラッシュにはヒヤヒヤさせられましたよ」
「ははははは! アレンは頭いいな! 俺と同じ予想だ!」
な、なるほど……確かにキキさんも100万ピッタリ持って来てた。
アンナさん達のお会計はひとり106万、予算超えたって言ってたけどシンデレラとくまさんを入れるのは決めてたみたいだから多めに持って来たんだな。
確かに人が大金を持ち歩く時はキリのいい数字で考えるのが普通かも。
「マジかー! 俺ら庶民の考えは見透かされてたって訳か!」
ルフランさんは図星で悶えている。
「ははは! 来月からはもっと頭脳戦が白熱しそうだな! じゃあ今日は解散! みんなよくやった! 給料日楽しみにしとけよー!」
ナイトさん達が帰り始めたら、魔王様とアーニャ、そしてなぜかお兄ちゃんもウキウキと二つ名の相談をしていた。
……変な二つ名が付けられませんように。
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あ、今日はお休みなのにいつも通りの時間に起きてしまった。 決戦日の次の日はお休みだった。
暇そうにしてるとアーニャとお兄ちゃんにエタフォ見せてって言われるから街を散策しようかな。 そんな事を考えながら朝食の準備をしていたらみんなが起きてきた。
朝食を食べながらみんなが今日の予定を話し始める。
「えー! ニーナダンジョン行かないのー?」
「今日は街を散策するよ! ホ、ホラ、シャンパンタワーのグラスが足りないし! 6段分しかないでしょ? 買いに行って来る!」
「ニーナちゃんっ! アタシのとっておきのお店に行くのネッ⁉ 後で場所を教えるわぁ☆」
「あ、ありがとうございます……」
ラウンツさんから「内緒にしたいのよネッ☆」とでも言いたげなウィンクが飛んできた。 違います! あああ! またラウンツさんのベビードール姿を想像しちゃったよぅ!
「あら、私もニーナちゃんのお買い物に付き合ってもいいかしら? 魔道具素材を買いたいわ」
「はい! ルルさん行きましょう!」
よし! これでエタフォを見せなくて済む!
メイリアさんも錬金素材が欲しいと、私と一緒に行く事に。
ちなみにラウンツさんに教えてもらったお店は、例のエリーさんの装備や騎士服などを作ってもらった仕立て屋さんだった……。 「仕立て屋パウリー」、もう何回見ただろう。
ラウンツさんのサイズが売ってないから仕立ててもらったのかな。
ラウンツさんに悪いので、一応店長のパウリーさんに挨拶だけしたらまた「女性用装備、特に獣人用の発注予定は無いか」と聞かれた……。
「無いです」とだけ答えてルルさんメイリアさんのお買い物のために店を出た。
パウリーさんが絶望してたけど知らない。 ラウンツさんに沢山発注してもらったらいいと思うよ……。
「そういえばニーナちゃんのお買い物はそのグラスだけでいいのかしら?」
「はい! グラスを買うのはただの口実です。 暇してるとアーニャとお兄ちゃんがエタフォ見せろってうるさいので……」
「あれは私でももう一度見たいわ」
「……私も……」
「恥ずかしいので嫌です!」
「うふふ……」
「……残念……」
「さて、時間が余っちゃったわね。 ……商業地区以外の街の様子でも見ようかしら? 念のため、ね」
「? はい、暇ですし」
「……オルガの事は調べておいて損は無い……」
その後ルルさん達と住宅街や貴族街への入口まで街を散策した。
お貴族様の住む貴族街とオルガ城のある地域は貴族門という頑丈な門や壁で仕切られていて、気軽に立ち入れる雰囲気ではなかった。 前にライオットさん達、軍に連れられて城へ行った時に通った事はあるけど。
「アレの匂いや変な人はいないわね」
「……ちゃんと裏で処理されてる……安心した……」
あ、アナーキーが広がってないか調べてたんだ。 さすがルルさんとメイリアさん。
そして日が暮れて来たのでディメンションの2階へ帰って、明日からの営業に備えいつもより早めに就寝した。 といっても日付が変わる前だけど。
ビー! ビー! ビー! ビー!
何の音⁉
「結界の魔道具が鳴ってるわ!」
ルルさんの声だ! ダイニングへ急ぐ!
第三章~完~




