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ハーレム

 



 「ハーレムあるで」


 「はぁ?」


 ハルヒロは自分の耳を疑った。


 目の前に鎮座するマイティ・ソーを名乗る美少女フィギュアから発せられた『けもみみハーレムあるで』という、その言葉。そして、その真意。

 

 (‥‥いったいどういうことだ?その意味は?)

 

 (~けもみみハーレムあるで)まあ、言葉通りに受けとれば、けもみみのハーレムが在る、存在する、どこかに現存する、ということだろうか。だけど、異界の神を名乗る怪しいフィギュア、その言葉を、額面通り、いや、まともに受け取っていいのだろうか?


 (だが、もしも‥‥)


 「‥‥‥けもみみ‥‥どこに‥‥在る?」


 好奇心を抑えきれずハルヒロは炬燵の掛布団からもぞもぞと顔を出して、おそるおそる聞いてみた。


 「なんで、片言カタコトやねん?」


 「‥‥けもみみハーレム‥‥在るの?」


 「だから、なんで自分、片言やねんな!」


 「‥‥‥‥‥?」


 「なんで、そこは絶句やねん!!自分、ボケツッコミが全然わかってへんわ~、ここはもう一回、片言使うとこちゃうん?」


 「カタコト?」


 腹が立つことに、『こいつアカ~ン』と言いながら天を仰ぎ、大きなため息を吐く美少女フィギュア。


 「まあ、自分みたいなもんにボケだのツッコミだの言うてもしゃあないわ。ささっと、本題いっとこかあ‥‥‥で、どないすんねん?」


 「どないする、とおっしゃいますと?」


 「いや、せやから‥‥‥話聞いとった、自分?異世界に行きたいの行きたないの?どっち?」


 「そ、そりゃ、行けるものなら行ってみたいですけど‥‥‥」


 そう呟いて、ハルヒロはうつむいた。


 もちろん、もしも本当に異世界が在るなら行きたいと思っている。それは単純な好奇心、というより、子供の頃からアニメ文化。ラノベ文化。オタク文化。に毒されてきたハルヒロ自身の当然の帰結と言えるかもしれない。

 だけど、ハルヒロには同時に極端に変化を嫌う、ややこしい性分がある。異世界に行きたいと思いつつも、今のささやかなこの生活も壊したくない。という思いに強くとらわれていた。


 当然のことながら、この目の前にいる異界の神マイティ・ソーを名乗るフィギュアのことがまったく信じられない。という大前提はあるのだが。


 「自分、ワシのこと疑うてるやろ?」


 「いやあ、まあ、そういうわけでは‥‥‥」


 「ほんならワシについてくるか?」


 「そ、それはちょっと‥‥‥」


 「どないやねん!なにが問題やねん!?」


 なにが問題かと言われれば、もうそれはマイティ・ソーという名前、美少女フィギュアという外見、もうあらゆることが不安要素だらけであり、『行く』『行かない』なんて問題はおいといて解決しなければいけないことが山積みなような気がする。


 「あの、ひとつ質問いいですか?」


 「おう、なんや、なんでも答えたるで」


 「‥‥失礼ですけど、あなた本当に神様なんですか?」


 するとマイティ・ソーはふたたび天を仰ぎ、大きなため息をひとつついて言った。


 「はあ~ッ!?そこかいな。ああ、アカンッ!なんや目眩めまいしてきた。自分、そない初歩的なとこでつまずいてもうてたんか。どないやねんやろな~、自分みたいな初心者の中の初心者にはどっから説明したったらええかなあ」


 マイティ・ソーは手であごをさすりながら言った。


 「‥‥‥せやな、自分、スマートフォンもっとるやろ? ちょっと出してみい」


 「スマートフォン?」


 「せや、早よせい」


 言われた通りスマートフォンをソーの前に置いてやると、なにやらぶつぶつ言いながら勝手にロックを解除して操作し始めた。


 「‥‥‥ふ、るッ!? アンドロイドかいな、なんや、時代遅れのOSオペレーティングシステム使こうとるな。三世代半は遅れとる。これやとプラットホーム自体上書きせな使い物にならんなあ」


 (‥‥古い?時代遅れ?)


 スマートフォン信奉者にして、スマフォ依存性のハルヒロにとって、聞き捨てならない言葉だった。


 「あ、あの、それって、三ヶ月前に発売されたばかりの国産最新機種なんですけど‥‥」


 「こっちの世界ではやろ。さっきワシ、自分のこと何の神や言うたか聞いとった?」


 「‥‥‥‥」


 「いや、なんで絶句やねん。さっきワシ【Wi-Fiの神】や言うたの覚えてないか?」


 「‥‥‥‥」


 「そやから絶句すな言うてんねん。あれやで、自分、高速データ移動通信規格て知っとるか。こっちでは一般的に【4G】とか【5G】とか言われとるアレや。だいたいあれやなあ【4G】で2時間映画ダウンロードするのに2分かそこらや。【5G】なら2、3秒でダウンロードしよる、だから【5G】は超高速データ通信規格なんて言われとる。この端末の通信規格は【4G】か、まあいいとこ【5G】対応やろ?せやさかい、古い、言われてもしゃあないやん。言うても【Wi-Fiの神】言われるワシの通信規格はなあーーー」


 早く聞けとばかりに目をキラキラさせてチラチラと目配せをする、ソー。


 「え、えーと、何Gなんですか?」


 「【6G】を飛び越して、なんと、【7G】や!!」


 「‥‥‥‥?」


 「せやから絶句すな!ここ、めっちゃ驚くとこやで!」


 (【5G】第5世代データ移動通信規格でも最近になってやっと実用化され始めたばかりなのに、なんと【6G】を通り越して【7G】とは‥‥‥もしそれが、本当なら‥‥‥)


 「じ、冗談ですよね?」


 「誰も冗談なんか言うてへんわ。ワシ神様やし。それくらいやるし。だいたいなあ、マテリアルデータ通信できる【7G】超神速データ移動通信規格くらいやないと異世界転送するの無理やし」


 「‥‥マ、マジっすか」


 「マジもマジ、大マジや。ラッキーやな、夢が叶ったで、自分」


 言ってることはめちゃくちゃだが、なぜか話の辻褄つじつまは合ってるような気がする。


 正直もう、なにがなんだか分からなくなってきた。っていうか、美少女フィギュアと普通に話してる時点で、根本的に何がなんだか分からないのだ。

 だったらいっそのこと、この異界の神を名乗るフィギュアのおかしな話に乗ってやるのも悪くない。そんな大胆な考えがふと頭の片隅をよぎった。


 「で?‥‥どないすんの?」


 スマートフォンを操作しながら、ちらっと目配せするソーに少し真剣な眼差しを向ける。


 「行きたいです。行きたいですけど、正直‥‥怖いです」


 「怖わないよ。アフターケアも万全やし、なんやいろいろと融通もできる思うで、ワシ」


 (アフターケア‥‥いろいろと融通‥‥? まさか、異世界転送の定番、チート能力が‥‥)


 「ないで、チート」


 「え?」


 (まただ、こいつ、本当に人の心が読めるのか? いや、そんなことよりーーーチート、無いの‥‥?)


 「ほんま、漫画の読み過ぎやで、自分。あんなアホな話あるわけないやろ」


 「じゃあ、無双チートも‥‥広域爆裂魔法も‥‥?」


 「ないで。あるわけないやろ、そんなもん。だいたい異世界無双してどないすんの。あんなん、たんなる殺人鬼やんか、ほんま、おっそろしい話やわ~」


 「で、でも、アフターケアって‥‥」


 「アフターケア言うたけども、チートいう意味ちゃうで」


 「や、いろいろと融通って‥‥?」


 「まあ、融通云うても、新規基本パックの【全自動翻訳】と【マテリアルデータ通信】。それに、自分おっそろしく弱そうやから身の安全を守るために、なんやプラスして安心保証プランの安全保護プログラムもおまけで付けたろうかっちゅうぐらいの話やで」


 「全自動翻訳とマテリアルデータ通信の基本パックに身を守るための安全保護プログラムを‥‥」


 まるでどこかのキャリアプランのようだ。


 「そうや。でもまあ、メインのマテリアルデータ通信であっち持っていけるものには【こっち世界に現存するもの】【自分の所有物】【アプリポイントの範囲内】とかの縛りは当然あるんやけどな」


 (こっちの世界に存在するもの、自分の所有物、アプリポイントの範囲内‥‥)


 詳細はわからないが、もし本当にあちらの世界に自分の所有物を持って行けるなら、考えようによってはチート以上にとんでもない可能性を秘めたすごいことなのかもしれない。


 




 



 稚拙な文、最後まで読んで頂きたいへんありがとうございました。


 今日はイブ、明日はクリスマスですね。僕は予約が入っているので、歯医者に行こうと思います。

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