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異文化こみにけーしょん  作者: 作・夏井めろん 画・ピロコン
エピソード3 挑戦! 美少女コンテスト!
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その21 文化祭当日!


 そして文化祭当日。


 得葉曽高校は大いに盛り上がっていた。


「魔界吸血ダコのタコ焼きだよ~! 活きがいいよ~。気を付けないと口の中の血を吸われるよ~」


「魔界吸血イカのイカ焼きだよ~! 食べる時は一気に齧って息の根を止めてね~。唇を取られるよ~」


 食べ物の屋台ではお客を呼び込む声が響き、


「射的やってって~。呪われた景品がたくさんあるよ~。当たったらもう大変だよ~」


「魔界ピラニアすくいだよ~。指を突っ込むと簡単に掴まえられるよ~。指がなくなる前に引き上げてね~」


 ミニゲーム系の屋台も充実している様子だ。


(絶対に食べたくないし、絶対にやりたくないけれどね!)


 玲奈が心の中で叫んだ。


「わ、わ、玲奈ちゃん! 玲奈ちゃん! 楽しそうな屋台が一杯だよ! 何か食べようよ! 何か遊ぼうよ!」


 もみじはと言うと、目をキラキラさせて屋台に心を奪われている。放っておくと、魔界吸血ダコのタコ焼きや魔界吸血イカのイカ焼きを買い、射的で呪われた景品をゲットして、魔界ピラニアに指を食われて帰ってきそうだった。


「もみじ、寄り道をしている時間はないわ。もう美少女コンテストの時間でしょ。Pであるあなたが見届けないでどうするのよ」


「あっ、そうだった」


 本来の仕事? を思い出し、もみじが頷く。


「早く会場に行かなくちゃ!」


 早足で歩きだすもみじ。玲奈はホッと息を吐く。


(良かったわ。おかしな屋台をスルーできて)


「屋台は美少女コンテストの後に来ようね」


 笑顔で言うもみじ。


(仮病を使ったとしたって、絶対に来ないわ! 絶対に!)


 玲奈は強く、それはもう強く誓ったのだった。


挿絵(By みてみん)


 ★


 美少女コンテストの控室として使われている大テントには、すでに出場者が集まっていた。なかなかの美少女揃いだった。


 緊張した様子でマミがちょこんと椅子に座っている。その恰好は出張保健係のナース服姿だ。


「お待たせ。マミちゃん」


「あ、もみじ先輩、玲奈先輩」


 マミが嬉しそうな顔をする。


「はい、これ差し入れよ」


 玲奈が果物のジュースを差し出した。


「ありがとうございます」


「心の準備はできた?」


「ううん、まだです。やっぱり、緊張しちゃって」


「大丈夫よ」


 珍しく玲奈が断言した。


「優勝できる……とは安易に言わないけれど、いい線は行くと思うわよ」


「わたしは優勝しちゃうと思うな。だってマミちゃん、今やもう得葉曽高校の大人気キャラなんだから」


 もみじが言った事は嘘ではなかった。う〇こモンスターの被害者を献身的に治療したあの事件から、マミの人気はうなぎ上りだった。


 非公式のファンクラブまでできているという噂だった。


 今や、『得葉曽高校のナイチンゲール』とまで呼ばれている。


(そうなのよ。ちょっと方向性は違うけれど、マミは可愛いって言っちゃえば可愛いのよ。マスコット的な可愛さだけれど。そこに、心のキレイさが加わって、一気に爆発したのおね)



 玲奈が冷静に分析する。


「あ、そろそろ開始みたいだね。じゃあ、観客席で応援してるから」


「頑張ってね、マミ」


「は、はい」


 マミに別れを告げ、もみじと玲奈は立ち去った。


 そんな彼女達を、悔しさの滲む瞳で見つめている生徒がいる事にも気付かずに。


 ★


「マズいわ。マズいのよ。マズいったらないわ」


 親指の爪を噛みながらブツブツと呟いているのは、サキュだった。


 う〇こモンスターの暴走事件から急激に人気を上げたのがマミなら、逆に急激に人気を下げてしまったのがサキュだった。


 たくさんの怪我人を放って逃げてしまった事が、たくさんの人に知られてしまったのだ。マミの献身的な行動とどうしたって比較されてしまう。


「サッキュん、心配しなくても大丈夫なのでは?」


 Pの1人が言う。


 確かに彼に言うとおりだった。腐ってもサキュパスだ。見た目の可愛さはもちろんの事、魅了の力も持っている。本番での魅了の使用はルール違反になるが、事前の使用は問題なし。


 だから魔力の限界まで使って、男子生徒を魅了してきている。美少女コンテストの評価方法は、観客による投票と審査員による投票だ。男の審査員については、すでにサキュは魅了で陥落済みだった。


(あの件でパンピーの票が得られなくなったとしたって、審査員の大多数の票はこっちのものよ。でも……)


 どうしたって母親の忠告が頭に蘇ってしまう。


「サッキュん、心配しないで。いくら出張保健係で人気になったって言っても、中身はあんな干物みたいなんだし。あれを見た生徒が投票なんてするはずないって」


 別のPの言葉に、サキュが反応した。


「中身が干物? どういう事よ?」


「えっ? あのう〇こモンスター暴走事件の時、ミイラの娘が治療でたくさん包帯を使い過ぎて、腕の包帯がなくなってそこから」


 Pが説明をする。


「そうよ。そうなのよ。そうだったのよ」


 それまでとは打って変わった様子で、サキュが元気を取り戻した。


「フフフ、見てなさいよ。マミ。公衆の面前で、あなたの醜い正体をさらけ出してあげるんだから!」


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