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異文化こみにけーしょん  作者: 作・夏井めろん 画・ピロコン
エピソード3 挑戦! 美少女コンテスト!
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その17 保健係大作戦

 校庭では、サッカー部の練習が行われていた。


「うらああああああ!」


 狼の耳を生やしたケモナー少年が勢いよくドリブルをする。


 牙宇羅。見てのとおり、狼男の少年だ。両親が人間界大好きで帰化してしまっているため、モンスターでも日本人という扱いだから驚きだ。


 特殊な首輪で狼男の力は封じているものの、それでもその身体能力は群を抜いている。


 立ちはだかるディフェンス陣をものともせず、最高のシュートをぶち決める。


「やったぜ!」


「ああ、またやられた」


「くそっ、何て反射神経だよ」


「ちゃんとモンスターの力は首輪で封印してるんだよな?」


「それは間違いないはずだ。それを抜きにしても、運動神経がとんでもないんだよ」


 悔しがる相手チーム。満足気に仲間チームのメンバーとハイタッチを決めていた牙宇羅は、1人の男子生徒の前で足を止めた。


「あっ、斎藤。お前、怪我してるじゃねーか」



 膝を大きく擦りむいてしまっている。


「マネージャー! ……は今日は休みだったか。確か部室に絆創膏が」


「はいはーい! ちょっと待って~~!」


 現れたのは、3人の女子生徒だった。


挿絵(By みてみん)


 もみじ、玲奈、そしてマミ。


 共通しているのは、3人ともナースエプロンとナースキャップを身に着けている。


「ちょっともみじ、どうして私達までこの恰好をしなくちゃならないのよ」


「もちろん、Pとしてマミちゃん1人だけに恥ずかしい思いはさせられないってことだよ」


「絶対面白がってるわよね」


「いいからいいから」


 納得のいかない玲奈をそのままに、もみじは牙宇羅に顔を向けた。


「牙宇羅君、あたし達、得葉曽高校出張保健係だよ! ちゃんと生徒会にも許可はもらってるから! 斎藤君の擦り傷の治療、してあげるね」


「おお、もみじ。助かるぜ。早速頼む」


 牙宇羅が男子生徒を押し出す。


「れれれ、玲奈さん。おおおお、お願いしまっす!」


 男子生徒は顔を真っ赤にし、玲奈に向かって頭を下げた。何て事はない。クールビューティーで魔法の才能まである玲奈は、結構な人気者なのだ。憧れている男子生徒も少なくない。


「申し訳ないんだけど、手当をするのは玲奈ちゃんじゃないんだ。あたしと玲奈ちゃんはあくまでアシスタント。メインで手当てを担当するのは、マミちゃんなんだよ」


 玲奈がずずっとマミを押し出す。


「痛くしないように精一杯頑張ります。よろしくお願いします!」


 緊張した様子でマミがペコリと頭を下げる。


「ええ~~」


 露骨に落胆の表情を浮かべる男子生徒。それに対して申し訳なさそうな顔をするマミだったけど、


「マミ、気にしないで。手当をしてあげて」


 玲奈に応援されて、マミは頷いた。


「はい、分かりました」


 マミは自分の腕に巻かれていた包帯を解き、男子生徒の膝に巻き始めた。


「まきまき、まきまき」


「おいおい、ちょっと待ってって。消毒とかいいのかよ」


 牙宇羅が驚いた様子で止めるも、


「大丈夫。マミちゃんの包帯は、汚れも落としてばい菌も殺してくれる特別性なんだから」


「本当かよ」


「はい、大丈夫です。ミイラ族特融の薬品をたっぷりとしみこませた包帯ですから。わたしの魔力もたっぷり染みこんでますし」


 マミは一生懸命に手当を続ける。


「まきまき まきまき まきまき」


「あっ、何だか膝が暖かく! それに痛みも引いていく」


「はい、これで大丈夫です。半日ぐらい傷も残らず治っちゃいますから」


「あ、ありがとう~~~」


 感極まった様子で、男子生徒はマミの手を握り締めた。


「他に怪我した人がいたら、治療しちゃうよ! 並んで並んで!」


 もみじの呼びかけに、男子生徒達が列を作る。激しい練習でみんな、少なからず怪我をしていたのだ。


「まきまき まきまき まきまき」


 マミの治療は続く。


 治療をされた男子生徒達はみんな感激の表情を浮かべる。



「助かったぜ、これで心置きなくまた練習ができる」


 喜ぶ牙宇羅。


「牙宇羅君。他の運動部にも広く伝えてくれない。怪我人が出たらあたしのスマホに連絡を頂戴って。放課後の出張保健係、しばらく続けるから」


「おう、分かったぜ!」


 そして、保健係大作戦は本格的に始動したのだった。


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