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異文化こみにけーしょん  作者: 作・夏井めろん 画・ピロコン
エピソード3 挑戦! 美少女コンテスト!
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その15 サキュパスママの忠告


 たくさんのP達を引き連れて、サキュがやって来たのは校舎の空き校舎だった。


「今日の椅子係は誰かな☆」


「はい、小生であります!」


 1人のPが、すかさずその場に四つん這いになる。サキュは躊躇うことなくPの背中に座った。


「ああ、俺もサッキュんの椅子になりたい!」


「次の椅子係は……ああ、あと5日もある」


 他のP達が、人間椅子にされたPを羨ましそうに眺める。椅子になっているPは、それはもう恍惚とした表情を浮かべていた。


「喉渇いちゃったかな☆」


「どうぞ! 準備しておきました!」


「うわ~☆ 体に悪そうな炭酸飲料☆ アタシちょっと苦手かも~☆」


「サッキュんはフルーツジュースしか飲まないんだぞ!」


「買ってきてくれると嬉しいかな~☆」


「はいっ!」


 P達が慌ただしく教室を飛び出していく。数分後、ドタバタと慌ただしく戻ってきた彼らの手には、様々な種類のフルーツジュースが握られていた。


「サッキュん! オレンジジュースです!」


「僕は、グレープフルーツ!」


「ぶどうジュースなんてどうです!?」


「ゴーヤっす! 苦味がたまらないっす!」


「う~ん☆ どうしよっかな~」


 大袈裟に悩む素振りを見せてから、


「じゃっ☆ 今日はぶどうジュースをもらっちゃうね☆」


 1人のPが持っていた紙パックのジュースを受け取った。


「よっしゃー!」


 ガッツポーズを決めるP。


「くそう! 今日のサッキュんはぶどうジュースの気分だったんか!」


「俺もぶどうジュースにすれば良かった!」


「次こそはゴーヤを!」


「バカ! お前のゴーヤが選ばれる日は永遠に来ねーよ!」


「そんな~~~!」


 馬鹿なやり取りをするP達を眺めながら、サキュは紙パックのぶどうジュースを口にする。


「でもま☆ これでマミも美少女コンテストを諦めるでしょ☆」


 満足気に呟く。


「サッキュん。ちょっと疑問に思ったんだけど」


 メガネをかけた知的そうなPが、サキュに話しかけた。


「あのマミって娘に、わざわざ釘をさしに行く必要ってあったのかい? どう考えたってサッキュんの敵じゃないだろうに」


 そうだそうだと、他のP達も頷いた。


「…………」


 何故かサキュは押し黙った。表情が硬くなっている。


(もちろんそうよ。アタシがあんなちんちくりんに負けるはずないわ。でも……)


 サキュの頭に浮かんだのは1人の女性の姿だった。ゴージャスでダイナマイトな大人の女性だ。


挿絵(By みてみん)


『いい、サキュ。ママの言う事を良く聞きなさい』


 大人の女性、サキュの母親である成熟したサキュパス、サキュパスママが真剣な表情で言う。


『サキュ。あなたは私の自慢の娘よ。まだ成熟していないけれど、美貌も申し分なし。魅了の力も十二分に強いわ。どんな種族の娘にだって負けるはずがない。でも、ミイラの女の子にだけは気を付けて。もし美を競い合うような事になったら、迷わず辞退しなさい。いいわね』


『ミイラってあの包帯まみれの? どうしてよ。あんなのにアタシが負けるはずないじゃない』


『これは私の黒歴史だから伝えたくなかったのだけれど』


 サキュパスママは、深くため息をついてから呟いた。


『私、魔界美女コンテストで1度だけ負けてしまった事があるのよ。その時の相手が、ミイラの女性だったの』


『えっ、どうしてママみたいな美女が負けたりするの? おかしいよ!』


『これ以上は語らせないで。とにかく、ミイラには気を付ける事、いいわね!』


人間界に留学する前に、サキュパスママと交わした会話をサキュは思い出していた。


(ママが負けたなんて絶対何かの間違いよ。でも、万が一って事もあるし。念には念を入れておかなくっちゃ!)


 空っぽになったジュースの紙パックを、サキュは力強く握りしめた。


「男を魅了しメロメロにさせるモンスターとして、アタシは絶対負けられないのよ!」


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