その7 普通の雑貨屋?
「はい、普通の雑貨屋さんだよ」
もみじが最初に玲奈を連れてきたのは、駅からさほど遠くない場所にある小さな雑貨屋だった。
『セレクトギフトショップ・ナイトメアムーン』
そんな看板が掲げられている。
「おしゃれでかわいい小物がたっくさん置いてあって、友達の誕生日のプレゼントを買ったりするのにすごくいいんだ。仲良くなると店長さんがオマケしてくれるしね」
そう言って、もみじは店の中へと入っていく。玲奈もそれに続いた。
そしてすぐに表情を強張らせることになった。外見こそ目立っていなかったが、その店の中は玲奈の知っている普通の雑貨屋とは程遠いものだった。
棚に並べられたミニサイズのサボテンは、まるで生きているかのように動いていた。
悪霊の2,3体、軽くとりついていそうな人形もまた玲奈たちを出迎えてくれる。
唯一まともそうな石鹸の棚だったが、石鹸の中には見たこともないような奇怪な虫が入っていた。
「いらっしゃい、玲奈ちゃん。久しぶりだねぇ」
奥のレジから声をかけてきたのは、絵に描いたような魔女の老婆だった。もちろん、悪い魔女だ。
「マジョーヌさん、こんにちは。今日は友達を連れてきたんです。普通のお店がいいって言うから」
「そうだねぇ。うちは品ぞろえもごくごく普通だからねぇ」
(このどこが普通なのよ! 不気味なのよ! 気持ち悪いのよ!)
そんな玲奈の心の声に鈍感なもみじが気付くはずもなく、笑顔で商品の説明をする。
「そこにあるのが、うねうねサボテン。そっちにあるのが、血まみれブラッディー人形。でもってそこにあるのが、ガルシア吸血虫入り石鹸。普通でしょ?」
「せっかくだから、2人に新商品のサンプルをプレゼントしようかねぇ」
マジョーヌが何やら小さなストラップを2つ取り出し、もみじに手渡した。
「わー、これ次に流行るって噂のあれじゃないですか? いいんですか!?」
もみじは満面の笑みで、その片方を玲奈へと突き出した。
「はい、玲奈ちゃん。ケタケタストラップだよ」
スマホにつけるストラップ。そこには、そら豆サイズの干し首がついていた。
干し首は、玲奈と目が合うと、白い歯を見せてケタケタと笑い出した。
「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
玲奈の悲鳴が小さな店内に響き渡ったのは、言うまでもなかった。