その10 読者への挑戦状! もみじはどこだ?
十数分後。
錬金術部の生徒達は正座をさせられ、危ない実験器具はすべて生徒会メンバーによって回収されている。
「大人しく普通の錬金術を研究していればいいのに。よりにもよって生命の錬成に手を出すとはね。これは思い校則違反だよ」
むしろ、『生命を錬成してはいけません』という高速のあるこの学校が怖いと思う玲奈。
「あの、すみませんでした」
魔力水を作ってしまったことに対し罪悪感があり、玲奈は謝る。
「いや、西園君が謝る必要はないよ。ちゃんと話は聞いていたから。もみじ君に連れられてきて、頼まれるままに魔力水を作ってしまったんだろう。その後も止めようと必死になってくれていたし。お咎めはなしだ」
時定の返事にホッとしつつ、不思議に思って尋ねる。
「あの、どうしてそこまで詳しいことを?」
『はい、そこは優秀なスパイを潜入させておきましたので』
ゾーラが軽く口笛を吹くと、部室の天井からパシャパシャという音が響いた。1匹のコウモリが舞い降りてくる。
「そのコウモリって?」
『はい。前回、事件を起こしたドラクロア君の使い魔です』
「罰として、しばらく生徒会の為に働いてもらっていてね。今は日光からの避難所を生徒会室の隣の部屋へと変えて、いつも監視できるようにしているし。心配はいらないよ。それに、この使い魔が便利なんだ。怪しいことをしようとしている部室に、こっそり潜入させて情報を得ている。助かっているよ」
「なるほど」
性格は最悪だし変態だったが、吸血鬼の能力は確かだった。時定とゾーラという手綱があれば、意外と生徒会の紐付きという立場で活躍しているのかもしれない。
「それで、この錬金術部はどうするんですか?」
「もちろん廃部に決まってるよ。ペナルティもしっかり受けてもらうしね。ただ問題は、山田君の扱いだ」
時定が、苦笑する。
「もともとは部長の鈴木君の話を聞いて意気投合をして入部。たまに遊びに来る程度で実験の準備には深く携わっていない。だけど、今回は魔力水という重要な材料の提供をしてしまったわけだし。おとがめなしというわけにはいかないだろうね」
申し訳なさそうに時定は玲奈を見た。
「まあ、西園さんがかばいたい気持ちは分かるが」
「いえ、ちっとも庇う気はありません」
玲奈は、それはもうキッパリと宣言した。
「どうぞ厳罰にしてください。一度痛い目を見ないとあの子、分からないでしょうから」
「そ、そうか………」
やや戸惑い気味の時定。
「まあ、そういうことなら。生徒会から何らかのペナルティを与えることにしようか。とりあえず、山田君からも話を聞いて」
そこで時定は『おやっ?』って顔になる。
「山田君は?」
「えっ?」
玲奈は自分の肩を見た。ついさっきまで肩に乗っていたはずのもみじの姿が見当たらない。
「彼女はエルフィール先生の魔法でカエルになっていますから、どこかの隙間にも入ってしまったのかも」
ゾーラの冷静な意見だった。
「もみじ、出て来なさい」
「山田君、隠れているのかい? 悪いようなしないから話をしよう」
「山田さん。どこですか?」
3人で呼びかけたが、やはりもみじは出て来ない。
「もみじ、一体どこに行ったのかしら?」