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異文化こみにけーしょん  作者: 作・夏井めろん 画・ピロコン
エピソード3 挑戦! 美少女コンテスト!
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その9 〇〇〇部で作っちゃお♪


 肩に乗ったもみじに案内されて、玲奈がやって来たのはたくさんの部室が並んだ部室棟だった。


 その中のひとつに、扉の前へとやって来る。


『玲奈ちゃん、ノックして』


「何なのよ」


『いいからいいから』


 言われるままに、軽くノックする。すると、扉の向こうから声が聞こえてきた。


「パラケルススは?」


『はげちゃびん!』


 玲奈の肩でもみじが叫ぶ。すると、扉がガチャリと開いた。怪しいローブを身に着けた女子生徒がいる。


「おお、同志モミジルススよ!」


「久しぶり、ハルミルススちゃん」


 意味不明の挨拶を交わしている。


「噂に聞いていたが、本当にカエルになってしまったのだな」


『うん、でも慣れるとこの体も悪くないよ。それに、おかげですごい発見をしたんだから』


「ふむ、一体どんな発見を?」


『スズキルスス君が前に言ってたアレを作れる人を見つけたんだよ』


「何!? 本当か!?」


『うん、この西園玲奈ちゃん。レイナルススだよ』


「おお、レイナルスス。歓迎しようではないか」


「ちょっと待ったーーー!」


 さすがに黙っていられなくなって、玲奈は声を上げた。


「勝手に人におかしなあだ名をつけないで。それと、何なのここは?」


「なんだ、モミジルルスス。まだちゃんと説明していないのか?」


『うん、驚かせようと思って』


「仕方ない。部長である私が自ら説明しよう。さあ、2人とも中へ」


(2人じゃないわ。1人とカエルが1匹よ!)


 譲れない点を心の中で叫んでから、玲奈は促されるままに部屋の中へと入った。


 薄暗い部屋の中、両脇にな棚。そこには所せましと物が置かれている。


 試験管だったり、アルコールランプだったり、フラスコだったり、天秤計りだったり。奇妙な鉱物や液体の入ったガラス瓶だったり。


 ちょっと道具がレトロな感じはするものの、科学教室のような雰囲気だ。


「化学部?」


『うーん、近いけどちょっと違うんだよなー。もっともっとすごい所だよ』


「ここは、化学を超越した神秘の学問。錬金術を探求する場所。そう、錬金術部なのだよ」


 部長のハルミルススが自信たっぷりに言った。


 錬金術という名前ぐらいは玲奈だって知っている。中世ヨーロッパにおいて、金を作り出すことを目的に研究されていた学問だ。もっとも、成功したという記録は残されていないらしいが。


 ひたすらに胡散臭い部活だ。普通の学校ならばこんな部活、存在しないことだろう。だけどここは、非常識炸裂な得葉曽高校だ。錬金術部があったって不思議はない。


『わたし、錬金術部の部員なんだ。魔法が使えなくても、錬金術ならなんか面白いことできそうだと思って入ったの。まあ、たまに顔出すぐらいのなんちゃって部員なんだけどね』


「そう」


 心の底からどうでも良さそうに、玲奈が相槌を打つ。


 しかし、分からないことがあった。


 どうしてこのタイミングで、錬金術部なのだろうか?


 玲奈の記憶が確かならば、今、もみじは美少女コンテストのための美少女スカウトの全力を注いでいたはずだ。そのせいでカエルにまでされてしまったのだ。


 部室の中には他の部員もいる。中には女子生徒もいるが、スカウトできそうな理系女子はいなかった。何て言うか、身にまとった雰囲気が怪しいのだ。


『実は錬金術部で、やろうとしてる実験があるの。それにはどうしてもいい魔力水が必要なんだって』


「そうなのだ。この実験を成功させるためには、高濃度の魔力水が必要不可欠なのだよ。どうしても手に入れることができず、実験を進められずにいたのだ」


『そんな魔力水を、玲奈ちゃんは作れるんだから。これはもう、実験するしかないよ』


「私からも頼む! 他の材料も、機材もそろっているのだ。後は、魔力水だけなのだ!」


 部長のスズキルスス、他の部員達からも懇願の瞳を向けられる。


「別に、水を作るぐらいいいけど」


「ありがとう。それでは試しにこのビーカーに魔力水を」


 ハルミルススが、巨大なビーカーを中央の実験テーブルに置いた。


「レインフォール」


 玲奈は、そのビーカーからはみ出さないように、小さな雨雲を調節して雨を降らせる。


「チエミルスス。魔力試験紙を!」


「はい、すぐに確認します! おおっ! 色が真っ黒に!」


「なんと! オレンジ、紫を通り越し、真っ黒だと! 限界魔力値を超えているということではないか!」


「まさにこれこそ、究極の魔力水。この純度の物は、エルフィール先生でも作れないかもしれない」


 錬金術部も生徒達が、わいのわいのと盛り上がる。全員がローブ姿だから怪しいことこの上ない。


『ねっ、ねっ、すごいでしょ! ゴイゴイスーでしょ!』


 玲奈の肩の上で、もみじもピョンと飛び跳ねた。


「それでは早速、実験を始めよう!」


 スズキルススの一声で、部員達が一斉に動き始める。実験机の上に、様々な器具が用意され、それらがパイプで繋がれる。特徴的なのは中央に置かれた巨大ガラス容器だ。


 中には、何だかぐちゃぐちゃしてドロドロした物が詰められている。


「さあ、レイナルスス。ここの今一度、魔力無水を!」


『玲奈ちゃん、お願い!』


 玲奈の肩でもみじが期待でワクワクな顔をしている。


 言われるがままに魔法を発動しようとする玲奈だったが、何だか嫌な予感がした。


挿絵(By みてみん)


「ねえ、もみじ。一体何をしようとしているの?」


 魔法の発動を中断し、尋ねた。


『えっ、玲奈ちゃん。これを見て分からない?』


 分かるはずがない。


『ホムンクルスを作ろうとしてるんだよ』


「はい?」


 ホムンクルス。聞きなれない言葉だ。


「何よそれ?」


『ホムンクルスとは、錬金術で作り出される人造人間のことである。偉大なる錬金術師、パラケルススが製造方法を確立したが、上手くはいかなかった。その理由が、魔力水であることを我が部では突き止めたのだ。高濃度の魔力水さえあれば、ホムンクルス作成は可能なはずだ』


 スズキルススが、熱っぽく語る。


(ちょっと待って。つまり、この人達は、私の作る魔力水を使って、怪しい生命を造り出そうとしてるってこと?)


 同時に、ずっと抱いている疑問を反芻する。


(でも、どうしてもみじはこのタイミングで……)


 そこで玲奈はハッとした。


 彼女は決して馬鹿ではない。むしろ聡明だった。だからこそ気付いてしまったのだ。


「もみじ、もしかしてとは思うけど、このホムンクルスってのを美少女コンテストに出そうといか思ってるんじゃ?」


『えっ、そうだけど?』


 大正解だった。


「ちょっ、待ちなさいよ。そんな得体の知れない怪物をコンテストに出せる訳ないじゃない!」


『ちゃんと可愛い女の子ができるんだよね、ハルミルススちゃん』


「そのとおりだ。モミジルスス。極上のバイコーンの糞を材料として用意したのだ」


「ちょっと! 今、糞とか聞こえたんだけど」


『うん。ホムンクルスの主な材料は、う〇こなんだよ。あっ、バイコーンって言うのは魔界の大きな馬のことだよ。たてがみがこう長くって』


「馬のことはいいわ。もみじ、冷静になって。糞なのよ。糞から作り出される生命体が、美少女だと本気で思うの?」


『大丈夫!』


 世界で一番信用のできない大丈夫だった。


『せっかく作るなら可愛い女の子がいいって、ユニコーンのう〇こも少し混ぜてあるから! 最高のう〇こブレンドだよ!』


「もちろん、各種ハーブはすでに入れてある。理論上はこれで華麗なる美少女が誕生するはずだ」


 ハルミルススを始めて、錬金術部の〇〇〇〇〇スス達は皆、確信を持っている様子だ。と言うか、マッドサイエンティストを思わせる不気味な笑みを浮かべている。


「嫌よ。私は協力しないわ」


『そんなあ』


 悲痛の叫び声を上げるもみじ。しかし部長のハルミルススは余裕の笑みだった。


「心配いらない。先程、試しに作ってくれったら魔力水があるからな。あの魔力濃度なら十分だ」


 ビーカーに入った魔力水が、装置に注がれようとしている。


「待って! お願いだから実験を中止して! 嫌な予感しかしないのよ!」


 だって、う〇こからできる生命体だ。真面であるはずがない。


「お願いだから!」


 玲奈が必死に止めるも、若きマッドサイエンティスト達は止まらない。


「さあ、蒸留装置に魔力水を!」


 玲奈が作った魔力水が、糞の詰まった容器に注がれようとする。その時だった。


「そこまでだ!」


 錬金術部の扉がバイーンと開かれる。


「生命の錬成は校則で禁止されている! 大人しく実験を即時中止するんだ!」


 時定、ゾーラを始めとする、生徒会のメンバーの登場だった。


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