表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異文化こみにけーしょん  作者: 作・夏井めろん 画・ピロコン
エピソード3 挑戦! 美少女コンテスト!
61/112

その5 玲奈の発見 

 ワーラビットの跳躍力に普通(?)の人間であるもみじと玲奈が追いつけるはずもなく。


 体力の限界で、さすがに諦める他なかった。


 しかし、厄介にも一度火の点いてしまったもみじの心はおさまらない。


「玲奈ちゃん、こうなったら手分けして探そっ! 得葉素高校には、まだまだ可愛い女の子がたくさんいるんだから!」


「ちょっと、もみじ」


「それじゃあ、また後で!」


 スチャッって右手を上げると、もみじは勢いよくその場を立ち去った。


 ワーラビットのラビちゃんを散々追いかけて体力を消費していたはずなのに、大した復活っぷりだった。


「あの意欲を、少しは勉強に向ければ成績だって大幅アップするでしょうしね」


 余計なお世話ながらそんなことを考えてしまう。


「さてと、私はどうしようかしら?」


 文化祭に参加してみたいという気持ちは多少はあるものの、もみじまでの情熱は玲奈にはない。


 それに、もうキレイ所の女子生徒はすでに応援者が決まっている可能性が非常に高いと玲奈は分析する。


「駆け回ったところっで、骨折り損のくたびれ儲けといったところね」


 何気なく口にした諺に、一瞬、コツコッツさんとコッツンコッツ先生が頭に浮かんでしまったが、玲奈はそれをなかったことにした。


「鞄も置きっぱなしだし、とりあえず教室に戻ろうかしら。もみじには、ちゃんと探したってことにして」


 教室へ向けて歩き始める玲奈、と、何やら自分の周りを奇妙な物体? が飛び回っていることに気付く。


 足を止めて、『それ』を確認した。


「妖精?」


 そんな言葉が自然と口をついて出る。


 実際、それは妖精だった。体長は15センチメートル程で、背中からは蝶のような形をした半透明の羽根が生えている。飛ぶ度になんかキラキラした鱗粉が舞っていた。


 ミニミニサイズの制服を着た、なんとも可愛らしい妖精の女の子だった。


 考えるまでもなく、魔界からの留学生だろう。分類としてはモンスターに入るのだろうが、玲奈は恐怖心をまったく感じなかった。


 可愛らしさ、愛らしさしか感じない。


 玲奈にしては珍しく、優しい笑顔を向けてこちらから話しかけてみる。


「こんにちは。私に何か用かしら?」


「きゅふきゅふ♪ あなたの周りの魔素がとっても喜んでますの♪ だからピクシルもとっても楽しいですの♪」


 コロコロと弾むような声でそう言いながら、妖精、ピクシルは玲奈の周りをさらに飛び回る。


 魔素、魔法を使うのに必要な不思議物質だ。自分の周りの魔素が喜んでいる、= 魔法の才能を突きつけられたようで釈然としなものを感じる玲奈。しかし、とりあえずその不満は置いていく。


「えっと、あなたはピクシルちゃんって言うのね。魔界からの留学生で間違いないわね」


「きゃふきゃふ♪」


 ピクシルが頷いた。


挿絵(By みてみん)


「キュレーネーピクシーのピクシルですの♪

まだ留学してきたばかりですの♪ クラスは1年A組♪ あなたにはお友達になって欲しいですの♪」


「いいわよ。私は2年C組の西園玲奈よ」


 玲奈が人差し指を差しだし、ピクシルが両手で掴む。ちょっぴり奇妙な握手の完了だ。


(それにしても、可愛らしいわね。モンスターにも、こんな子がいるのね)


 そこで、玲奈は閃いた。


(そうよ! この子なんてバッチリじゃないかしら? 留学してきたばかりってことは、まだそんなにファンもついてないだろうし)


「ねえ、ピクシルちゃん。文化祭で美少女コンテストがあるらしいんだけど、出場してみない? P……あ、プロデューサーは私と私の友達のもみじって子がやるから」


 ダメ元でそんな誘いをかけてみると、


「れーなさんが一緒なら、ピクシルは何でもやりますの♪ だって喜んでる魔素はピクシルの大好物ですの♪」


 まさかの即答だった。


「本当に本当にいいのね?」


「はいですの♪」


 力強く、ピクシルは頷いて見せた。


「よしっ」


 玲奈は小さくガッツポーズを決める。


「それじゃ、一緒に着いて来て。友達に紹介したいから」


「はいですの♪」


 ★


 とりあえずピクシルと一緒に教室へと戻った玲奈は、もみじへとメールを送った。


『美少女コンテストに出てくれるっていう可愛い子を見つけたわ』


 数分後、息せき切ってもみじが教室へと駆け込んでくる。スマホを握りしめたままなのが、どれだけ急いで来たのかを伺わせた。


「玲奈ちゃん、さっきのメール、本当!?」


 期待を爆発させ、玲奈に詰め寄るもみじ。


「本当よ。すっごくすっごく可愛い子。それじゃ、紹介するわね」


 たっぷりと焦らしてから、玲奈はその名前を口にした。


「ピクシルちゃん、出て来て頂戴」


「はいですの♪」


 玲奈の後ろから、ピクシルがピョコンと飛び出した。もみじを驚かせるため、少し隠れてもらっていたのだ。


「キュレーネーピクシーのピクシルですの♪ もみじさん、よろしくですの♪」


「えっ……」


 ピクシルをたっぷりと観察してから、


「はああああああああああああああああ」


 もみじは最大のため息をついた。


「ちょっと、その反応は何なのよ。ピクシルのどこに不満があるの? すごく可愛いじゃない。少なくとも私は優勝を狙えると思うわよ」


 予想外の反応に、玲奈が強く主張する。


「うん、ピクシルちゃんはすっごく可愛いよ。それは間違いないよ。もし、文化祭が今月だったら、きっと優勝間違いなしだよ。でも、文化祭は来月なんだよ」


「……はい?」


 まるで意味が分からない。


「どうして来月だと駄目なのよ」


「だって、キュレーネーピクシーは、ひと月置きに性転換するでしょ」


「……………はい?」


「だから、今のピクシルちゃんは可愛い女の子なんだけど、文化祭の時には男の子、ピクシル君になっちゃってるでしょ。そうだよね?」


「はいですの♪ 来月は男の子の月ですの♪ ピクシルはとってもやんちゃで生意気な男の子になってますの♪」


 ピクシルもそれを肯定する。


「優勝どころか参加資格すらなくなっちゃうんだよ。頭のいい玲奈ちゃんだから、それぐらい分かって当然だと思うのに。どうして声かけちゃうのかなー。わたし、ぬか喜びしちゃったよ」


 もみじが非難するような目で玲奈を見る。


「そ、そんな謎生態、分かるわけないじゃない!!!」


 玲奈の全力の叫びが、教室に響いたのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ