その4 花咲く乙女も大人気
玲奈ともみじがやって来たのは、2年F組の教室。もみじと玲奈とは違うクラスだ。
「もみじ、ここは?」
「フラワちゃんのクラスだよ。まだ帰ってなければいいんだけどな」
フラワ……その名前に玲奈は聞き覚えがあった。前の変態吸血鬼先輩との騒動の時に知り合った女子生徒。バケツに両足を突っ込んで食事をする、ドリアードと呼ばれるモンスターの女の子だ。
確かに髪の毛の色が緑だったり、頭からお花が咲いていたりしていたが、基本的には怖がる要素0ないたって可愛い姿だったことを覚えている。
(確かに彼女なら美少女コンテストでも上位を狙えるかもしれないわね。性格も穏やかで優しそうだし、もみじとも仲良しみたいだし。Pにして欲しいってもみじがお願いすれば了解してくれそうだけど……)
そう上手く行くかしらと玲奈は思った。そしてそれは正解だった。
「フラワちゃん! 美少女コンテストに出よ! でもって、あたしをPにして!」
元気一杯にF組の教室に飛び込んでいくもみじ。それに続く玲奈。
そんな2人を待ち構えていたのは、F組の生徒達により強烈なバリケードだった。
「フラワちゃんは、俺達F組が一丸となってプロデュースすることにしたんだ!」
「そうよ! 他のクラスの生徒はお呼びじゃないのよ!」
がっちりと固められたバリケードの向こうには、申し訳なさそうな顔をしたフラワの姿があった。
「あ、あの。みんな。もみじちゃんはお友達だし、お手伝いしてもらっても~」
おずおずとそんな提案をするフラワだったけど、
「いや、ダメだ! フラワちゃんはF組の至宝なんだから!」
「フラワちゃんは、僕達F組のプロデュースで優勝させるんだ!」
F組の生徒達は燃えていた。それはもう、ヤケドしそうなぐらいに燃えまくっていた。
そんな炎の中に飛び込んでいく勇気は、玲奈にはなかった。
だけど、もみじにはあった。
「そんなこと言わないで、あたしも仲間に入れてーーー」
言うまでもなく、もみじと玲奈はF組から追い出されることになったのだった。
★
ピシャリと教室のドアが閉じられる。
「ねー、開けてよ。あたし達、すっごく戦力になるから。ねーねー」
もみじがしつこく扉を開こうとするも、内側からがっちりと押さえられているのだろう。ビクともしない。
「玲奈ちゃん、魔法でこのドアを吹っ飛ばしちゃってよ!」
「物騒なこと言わないで。そんなことしたって、このクラスの結束を崩すことはできないわよ。いいえ、むしろ妨害されることで余計に結束が強まるかもしれないわ」
玲奈の冷静な意見に、さすがのもみじも納得し肩を落とす。
それでも諦めないのが彼女の凄いところでもあり、往生際が悪いところだった。
「フラワちゃんは諦めるよ。その代わり、他の女の子をプロデュースしちゃうもん。A組のマリンちゃんとか、3年のスワテア先輩とか、後輩のラビちゃんとか!」
★
A組のマリンちゃんは、プールで優雅に泳ぐ人魚だった。
「マリンちゃーん! あたしがPしちゃいますから、文化祭の美少女コンテストに出ませんか?」
「ごめんなさい。もう水泳部のみんながPしてくれることになっちゃって」
もみじ、撃沈だった。
3年のスワテア先輩は、青空を舞う純白の翼を持つ鳥乙女、ハーピーだった。
ボーイッシュでとっても格好いい、後輩女子に大人気の先輩だ。
「スワテア先輩! わたしがPをしますから文化祭の美少女コンテストで優勝を目指しましょう!」
熱く語るもみじだったが、
「あー、ごめん。丁度、空中レースの大会と重なっちゃってさ」
もみじ、轟沈だった。
後輩のラビちゃんは、ウサギ耳の眼鏡をかけた大人しそうな女子だった。ワーラビットと言う魔界の種族らしい。
「わ、わたしが美少女コンテスト、は、恥ずかしくて無理ですうううううう!」
ラビちゃんは、ピョンピョンと飛び跳ねながら逃げて行く。
「待ってくださーい!」




