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異文化こみにけーしょん  作者: 作・夏井めろん 画・ピロコン
エピソード3 挑戦! 美少女コンテスト!
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その3 スネークヘアーの美少女

 もみじと玲奈が向かったのは、得葉曽高校の生徒会室だった。


「やっぱりね」


 まさに予想どおりといった様子で、玲奈が呟く。


「もみじがスカウトしようとしてるのって、ゾーラ先輩なのね」


「ピンポーン♪ 大正解♪」


「ここまで来て外れってことはないでしょ」


 呆れたように呟いてから、玲奈はふと怪訝そうな顔をした。


「それにしても……何だか中が騒がしくない?」


 玲奈の気のせいなどではなかった。生徒会室の中は明らかにいつもに比べて騒がしい。

 というか、かなりうるさい。


「白熱した会議とかしてるのかな?」


 そんなことを言いながらも、遠慮なく扉を開けてしまうのがもみじのすごいところだ。


「失礼しまーす!」


 生徒会室の中は……まさに戦場と化していた。

 モンスターの留学生も含めた生徒達がひしめき合っている。

 その中心にいるのは、グリーンのスネークヘアーの美少女だった。


 生徒会副会長、魔界からの留学生で種族はメデューサ。ゴルゴン・ゾーラさんだ。


「あの、ですから私は、コンテストに出場するつもりはありませんから」


 ピシャリと断るゾーラだったけど、


「そんなこと言わずに、出てくださいよ!」


「ゾーラさんなら優勝間違いなし!」


「プロデュースなら私に任せてください!」


 圧倒的なまでの熱量がゾーラを追い詰めている。


「先を越されたみたいね。ゾーラ先輩、人気者だから」


 初対面ではそのうねうねとうごめく頭の蛇についつい悲鳴を上げてしまった玲奈だったが、最近は見慣れたせいか彼女のことを美人と思えるようになっていた。

 もっとも、ウネウネと動いている頭の蛇は極力見ないようにという努力は必要になるのだが。


「ぜひ、私をPに!」


「いいえ、俺をPに!」


 何やらPアピールが始まっている。


「ねえ、もみじ。どうしてみんなそんなにプロデューサーになりたいの?」


「そんなの決まってるよ。自分がプロデュースした美少女がコンテストに優勝したら、すっごく誇らしい気持ちになれるからだよ」


 もみじは胸を張って言うも、それだけでないような気もしないでもない。


 男子生徒には、少なからず下心があるだろう。


「ゾーラお姉様が優勝する所、見たいんです!」


 女子生徒の中にも、熱狂的なゾーラのファンがいるようだ。


「ぜひ、服飾研究部で作った衣装をゾーラ先輩に!」


「ダンス研究部で編み出したポーズをステージ上で取ってください! それだけで優勝間違いありませんから」


(なるほど、自分の部活のアピールにも繋がるってことなのね)


 と玲奈は納得。それからもみじを見た。


「もみじ、ライバルは多そうよ。諦めたら? そもそも、ゾーラ先輩にコンテストに参加する意思がなさそうだし」


「そんなことないよ! まあ、見てて。ゾーラ先輩を説得する手段をちゃんと考えてきてるんだから!」


 自信満々にもみじは言うと、手メガホンを作って声を張り上げた。


「ゾーラ先輩の魅力は、そのステキな髪の毛です! 本番ではわたしが笛を吹いて、蛇のウネウネ踊りを披露させちゃいますから!」


 さらにどこからか取り出した笛をピーヒャラピーヒャラ吹き始める。


 ……………結論から言うと、相手にされなかった。


「一晩考えたのにー」


「一晩考えた結果があれなの?」


「蛇達に生卵を飲み込ませるってパフォーマンスも考えたんだけど」


「あのね。ビックリショーじゃないんだから」


 玲奈が真剣に呆れていると、後ろから聞き慣れた声がした。


「おや、何やら盛況じゃないか」


 振り向くと、眼鏡をつけた落ち着いた雰囲気の青年がいた。

 生徒会長として、この混沌とした学園を見事にまとめる桐生時定だ。


「あっ、会長。いい所に」


 ゾーラが華やいだ声を上げた。相変わらず瞳はずっと閉じたまま。

 頭の蛇の目を通して時定の到来に気付いたようだ。


「皆が私にコンテストに出るようにって。文化祭は生徒会の仕事も忙しいから無理だって会長からも説明してください。そもそも、出る気もありませんし」


「ああ、そうか。今年ももうそんな時期だったね」


 時定がフフフと笑みを浮かべる。ゾーラに出場して欲しいと人が集まるのは毎年のことのようだ。


「文化祭の準備はほとんどが事前に終わるものだ。残るのは当日のトラブル対応だが、それは他のメンバーでどうにかなる。これだけたくさんの人に熱望されてるんだ。今年ぐらい、参加してみてもいいんじゃないのかい」


「か、会長!」


 とんでもないことを言い出す時定に、ゾーラは大慌てだ。


「そんな、私が美少女コンテストだなんて無理です」


「そうかなあ、ゾーラ君ならいい線行くと思うんだけどなあ。何だったら僕がPに立候補しようか?」


「えっ……」


 ゾーラの言葉が止まった。それまでかたくなな拒否姿勢だったのが、不思議と態度が軟化する。


「会長が……私のPを?」


「ご不満かい?」


「いえ、そんなことありません。会長がその、プロデュースしてくれるなら私は……」


 ゾーラがもじもじし始める。頭の蛇達もが、嬉しそうに、そして恥ずかしそうに身をよじらせた。


「よし、決まりだ。じゃあゾーラ君は文化祭の美少女コンテストに参加。Pは僕がやる。といういことで、みんなお開きだ。いいね」


 ★


「あーあ、会長にPの座を取られちゃったなー」


 生徒会室を後にしたもみじは、残念そうに呟いた。


「時定先輩が現れなかったとしても、もみじがPになれた可能性はないと思うわよ」


 玲奈が冷たく現実を告げる。


「でも、時定先輩の一言でゾーラ先輩がその気になるなんて。あれってどう考えても‥‥…」


「どう考えても何?」


 無邪気な顔を向けてくるもみじ。


「何でもないわよ。あなたにはまだ早い話だから」


「えー、何それ~~~」


 む~~~ってむくれるもみじだったけど、すぐに機嫌を取り戻した。


「まあ、ゾーラ先輩を獲得するのは難しそうだなってことは分かってたんだ。だから次のターゲットの説得に行くことにするよ」


「まだ他にもいるの?」


「うん、いるよ」


 自信を持って答えるもみじ。


「ふわふわした雰囲気の、癒し系の女の子だよっ!」


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