表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異文化こみにけーしょん  作者: 作・夏井めろん 画・ピロコン
SPコラボ企画 悪夢のデビルリス君
48/112

その8 狼 VS リス

「デビルリス君のことは親父から聞いてたんだ。決して解き放ってはいけない災厄そのものだって。まさか人間界でそいつを会うとは思ってもなかったぜ」


 宙に浮かぶデビルリス君を睨み、牙宇羅が言う。


「オレの大好きなこの学校でこれ以上好き勝手はさせないぞ」


 そう言うが否や、牙宇羅は首輪に手をかけ、勢いよくそれを外した。


「相手が災厄の悪魔なら、こっちだって手加減はしてられない。最初から全力でかからせてもらう」


 たちまち牙宇羅の姿が、狼化した。


「アオオオオオオオオオン!」


 空に向かって遠吠えを響かせてから、


「行くぜ!」


 デビルリス君に襲いかかる牙宇羅。

素早い連続攻撃をデビルリス君に浴びせかける。


 鋭い爪の攻撃をひらりひらりと交わすデビルリス君だったけど、ワーウルフの能力を開放した牙宇羅のスピードはとんでもなかった。


「ガウウウウウウ!」


 牙宇羅の爪がデビルリス君をかすめる。ふわふわの毛が舞った。


「うわー、怖い狼だー。そんな狼は、チョコ人形になっちゃえ♪」


 デビルリス君がパチンと指を鳴らす。


 空中に無数の鍋が現れ、そこからドロドロに溶けたチョコがあふれ出した。


「牙宇羅くん! 気を付けて!」


「フン、当たるかよ!」


 地面を蹴り、高速の移動。溶けたチョコの攻撃をすべて完璧に牙宇羅は交わした。


「す、すごいわ」


 玲奈が感嘆の声を上げる。


「すごいでしょ。だって牙宇羅くんはエースストライカーだから。避けながら走るのは得意なんだよ」


 もみじが威張る。


「いや、そういったレベルのすごさじゃないわよ。これは」


 改めてワーウルフの戦闘力の高さを知る玲奈だった。


 牙宇羅は確実にデビルリス君を追い詰めていた。


(彼なら、デビルリス君を捕まえられるかもしれない)


 実際、その可能性は高そうだった。


「お前みたいなのが人間界にいたら、オレは好きなサッカーができないんだ。さっさと魔界の牢獄に送り返してやる!」


「へー、君、サッカーが好きなんだー」


 追い詰められているにもかかわらず、デビルリス君がニコニコと微笑む。


「だったら、ボクからプレゼントをしちゃおっと」


 デビルリス君が飛んでいったのは、こちらに向かって走ってくるコッツンコツ先生のもとだった。


「大丈夫ですかな? 今、私の狂戦士モードで助けて――」


 その肩にピョンと飛び乗ったデビルリス君は、コッツンコツ先生の頭をあっさりともいでしまう。


「こら、何を! 返しなさい!」


 体の方が必死に頭を取り戻そうとするも、デビルリス君のキックで簡単にバラバラになってしまった。


 やはり骨と骨の結合力の低さは問題だった。


「お絵描きお絵描き~っと♪」


 ふわふわの尻尾から取り出した絵筆でもって、デビルリス君はコッツンコツ先生の頭蓋骨をペイントする。


「できたー!」


 完成したのは、サッカーボールの模様のついた頭蓋骨だった。


「どう? サッカーボールそっくりでしょ。狼君、蹴りたくならない?」


「ふざけるな。オレがそんなものに惑わされるはずがないだろ?」


「そんなこと言わないで、よっく見てよ。サッカーボールに見えてくるよ~」


 デビルリス君は、尻尾を振り振りしながら牙宇羅に語り掛ける。


「いや、それはコッツンコツ先生の頭蓋骨で……頭蓋骨で……」


 牙宇羅の目が、少しだけトロンとした。


「なんか、サッカーボールに似てるかも……」


 玲奈はハッとした。


「牙宇羅君! そのリスの尻尾から目を離して! 催眠術をかけようとしているわ!」


「ほーら、狼男君。見事シュートを決めてよねー」


 デビルリス君が、コッツンコツ先生の頭蓋骨を空中高く放り投げた。


「おっりゃああああ!」


 牙宇羅は、頭蓋骨に向かって走った。高くジャンプし足で頭蓋骨を受け止めると、そのまま体を回転させ頭蓋骨を蹴り飛ばした。


 頭蓋骨はそのまま校舎の外壁に衝突。コンクリ―とにめり込んだ。


「やった、シュート成功だぜ!」


 着地し、ガッツポーズを決める牙宇羅。が、すぐに笑顔が曇る。


「あれ、オレ……一体何を?」


「はーい、おしまーいっ」


 デビルリス君が指を鳴らした。ガウラの頭上に現れた鍋から、溶けたチョコがあふれ出る。


「しまっ!」


 という声を最後に、牙宇羅はチョコの滝に沈んだ。


「ああ、牙宇羅くんまでチョコ人形に!?」


「やったあ! もうこれで邪魔者はいないぞー!」


 デビルリス君が『いやっふー♪』と万歳をした。


「そうだ! せっかくだからもっと楽しくしちゃおっと!」


 デビルリス君が再び指を鳴らす。すると、空がどんよりとした雲に覆われた。


 そこから降ってきたのは、雨でも雪であられでもなく……デビルリス君たちだった。


挿絵(By みてみん)


「いやっふー♪」


「遊ぶぞー♪」


「デビルリス君参上だー!」


「ぽてっち食べさせろー!」


「ゲームするぞー!」


 たくさんのデビルリス君たちが、好き勝手に遊び回る。当然、被害は拡大する一方だ。


「1匹でも厄介なのに、こんなにも増えて……どうするのよ」


 戦力として期待できそうなゾーラも牙宇羅もチョコ人形にされてしまった。


 コッツンコツ先生は、狂戦士モードすら発動できずにサッカーボールにされてしまった。まあ、正直少しも期待はしていなかったが。


「ひどい。デビルリス君は悪魔だよ」


 さすがのもみじも青ざめた顔をしている。


「牙宇羅君でも奴を止められなかったのか」


 いつの間にかやって来ていた時定が、歯噛みして言った。


「仕方ない。こうなったら僕たちもするしかない」


「何をですか?」


 尋ねるもみじに、時定はこう答えた。


「召喚の儀……いや、降臨の儀と呼ぶべきだろうか。デビルリス君に対抗できる、強力な助っ人を呼ぶんだよ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ