表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異文化こみにけーしょん  作者: 作・夏井めろん 画・ピロコン
エピソード2 はじめての異文化登校
22/114

その4 ピンチで玲奈、立ち上がれもみじ


 魔界と隣り合わせの街にあり、魔界からの留学生も数多いという少々(いや、かなり)特異な学校ではあるものの、ここ、得葉素高校は決してレベルの低い学校ではなかった。


 授業のレベルも高く、前の学校で好成績を収めていた玲奈でも気は抜けないなと思うほどだった。


 必然的に授業に集中することになり、自然とクラスに地味に紛れているモンスターの生徒のことも気にならなくなる。


 集中しよう作戦は成功したかに思われたが……問題は、お昼休みを前にした四時限目の数学の授業だった。


「さあ、授業を始めます。早く席について」


 そう言って教室に入ってきたのは、今朝、間違って挨拶をしてしまったスケルトンの先生。


 コッツンコツ先生だったのだ。


「では、前回の続きから」


 数学の教科書を開き、授業を始めるコッツンコツ先生。慣れた様子で黒板に数式を書いていく。


 教える口調に淀みはなく、また黒板の文字もキレイだった。教師としては優秀と言えよう。


 だけど、だけど、だけど。


 スケルトンだ。


 授業の雰囲気がお固いだけでなく、もう本人そのものがお固いのだ。


 少しだけ慣れたとはいえ、まだまだモンスターは玲奈にとっては怖いものだったし、スケルトンは不気味なものだった。


(人骨なのよ。人骨が、喋って動いて、授業をしているのよ!)


 しかも……


「で、あるからにして……ここがこうなって


 黒板に数式を書いている手を急に止めると、その頭が360度グルリと回転し生徒たちを見る。


「誰ですか! 早弁をしているのは! 箸のカチャカチャする音が聞こえますよ!」


(そんな音よりも! あなたの骨がカチャカチャする音の方が問題なのよ!)


 そんな脳内突っ込みを入れてしまう。


 もはや、ホラー映画の1シーンにしか玲奈には見えなかった。


 当然、授業に集中できるはずもなく、今、どの問題の解説が行われているかもさっぱり分からない。


 少しだけ気が遠くなりかけていた時だった。


「そろそろ問題が解けた時間でしょう」


(えっ、問題なんて解いてたの!?)


 ハッとし慌てる玲奈。


「では、答えを……」


 コッツンコツ先生は身体を制止したまま頭だけをぐるりぐるりと回す。回転がどんどん速くなっていく。まさに恐怖のルーレットだった。


(ああ、もう本当、その動き止めて!)


挿絵(By みてみん)


 カシャーンと、ルービックキューブの最後がはまったような音がして、コッツンコツ先生の頭が止まった。その視線の先にいたのは、最悪なことに玲奈だった。


「では、一園玲奈サン。問い2の答えを」


「………………‥‥…」


「玲奈サン、簡単な問題ですよ。早く答えを。それとも、まさか授業を聞いていなかったとでも?」


 コッツンコツ先生が厳しく問う。


(人骨の首がグルグル回ってるのよ! 授業なんて聞いてられるはずないじゃない!)


 心の中で玲奈は絶叫したのだった。


 ★


 そんなタイミングで、むにゃむにゃと居眠りをしていたもみじが目を覚ました。


(あれ? 今、玲奈ちゃんの悲鳴が聞こえたような!)


 もちろんそれは完全にもみじの気のせいだったのだが、今回だけは奇跡的に当たっていた。


「ワタシは転校生だからと特別扱いはしませんよ。早く、問い2の答えを!」


 コッツンコツ先生が、玲奈を問い詰めていた。


(大変、玲奈ちゃん! コッツンコツ先生の今日のお楽しみルーレットに当たっちゃったんだ!)


 それは決してお楽しみと呼べるものではなかったが、学校の中ではそんな通称がまかり通っている。


(わたしが、わたしが玲奈ちゃんを助けないと!)


 ★


 時を同じくして、玲奈もまた覚醒しつつあった。


(こんなことで、こんなことで負けてたまるもんですか!)


 不本意ではあったが、素早く回りの生徒の机を見て、開かれているのが数学のどのページかを確認する。


 さすがにページ数まで読み取ることはできないが、グラフや問題の並びなどでどのページかは判断できた。


 続いて自分の数学の教科書をめくり、そのページへとたどり着く。


 そこに書かれている問題の中に、『問い2』はひとつだけだった。


(よしっ!)


 前の学校の授業で習っていた部分でもあり、なおかつ玲奈が優秀という理由もあった。一瞬で答えを導き出す。暗算でだ。


(答えは、X = 13|20 よ!)


 それを口にするよりも前に、教室の離れた席で立ち上がるお節介な奴がいた。


 山田もみじ、彼女だった。


「はい! コッツンコツ先生! わたしが答えます!」


「ほほう、山田クンが。面白い、では問い2の答えを!」


「はい!」


 立ち上がったもみじは、手にした教科書を、高々と持ち上げた。


 前の授業で使われた、世界史の教科書を。


「ルネッサンス時代の天才画家であり、また発明家でもあった人物は!」


「もみじ待って!」


 と止める玲奈の声も聞かず、もみじはかっ飛ばした。


「レオナルド・ディカプリオです!」


「二人とも、廊下に立ってなさい!!!!」


 コッツンコツ先生の、盛大な雷が落ちたのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ