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異文化こみにけーしょん  作者: 作・夏井めろん 画・ピロコン
エピソード1 はじめての異文化体験
15/119

その14 てめえらの血は何色だ!

 玲奈の放った初の魔法、サンダーを頭上から食らった兄貴リザードマンは、一瞬にして丸コゲになっていた。


「な、なかなかいい一撃じゃねーか。シビれるぜ」


 それでも最高に恰好をつけ、そう言い放ってから、ズドンと仰向けに倒れる。


「兄貴いいいいいい!」


「しっかりしてください、兄貴いいいいいい!」


  下っ端リザードマンの2人が駆け寄り揺さぶるも、兄貴リザードマンはピクリとも動かない。


 そんな光景を見て、玲奈は少しだけ不安になった。


「ねえ、もみじ。私、ひょっとしてとんでもないことしちゃったかしら? あの人……じゃなくてトカゲのモンスター、し、死んじゃったんじゃ」


「大丈夫! リザードマンはしぶといことで有名なんだから。ちょっとした仮死状態になってるだけ。しばらくすれば息を吹き返すよ。あの黒コゲの肌だって、一週間もすれば脱皮して新しくなるし」


「ゴキブリよりもしぶといのね、モンスターって」


 口ではそう皮肉りながらも、玲奈は内心でホッとしていた。これで、逮捕は免れそうだ。もっとも、仮に逮捕されたとしても全力で正当防衛を訴えるつもりではいたが。


「でもすごい玲奈ちゃん! すごいすごいすごい!」


 もみじが飛び跳ねんばかりの勢いで喜んでいる。


「本当はこの町に来る前に少しは魔法の練習してたんでしょ?」


「いいえ、正真正銘、今のが初よ」


「だったらなおさらすごい! とんでもない才能の持ち主だよ! こりゃー、国も放っておかないよねー」


 もみじに褒められ、そこまで悪い気はしない玲奈。


 いまだ残っている下っ端リザードマン2人に向かって勝気に言い放つ。


「それで、あなたたちはどうするつもり? まだ私たちに絡むようなら、2発目、3発目をお見舞いするわよ」


「いや、でも……初心者が魔法を連発できるはずがない」


「そ、そうだ! きっと今のはまぐれで……」


「そうかしら?」


 玲奈は再び精神を集中した。肌にビリビリととする感触を確かに感じ、試しに集まるよう念じてみる。ビリビリが強くなっていく。


「問題ないみたい。もう2、3発は楽勝で放てるわね」


 脅しのための言葉だったが、決してハッタリではなかった。今の一発のサンダーで、玲奈は感覚的にどれぐらいの雷の魔法源を消費するのかを把握していたのだ。


 一ノ瀬玲奈。認められた魔法の才能は、本人すら計り知れないほどにとんでもないレベルだったのだ。


「ヤバいぞ」


「ああ、ヤバヤバだ。ここは逃げるしかない」


 倒れたままの兄貴リザードマンを両脇から抱え上げる。


「お、覚えてろよ!」


「魔法耐性をUPさせて、リベンジに来てやるからな」


 そんな捨て台詞を残しつつ、一刻も早くその場を離れようとする下っ端リザードマンたち。


 と、そんな時だった。


「でっりゃああああああああ!」


 霧の中を抜け飛び出してきたのは、ジャージ姿の若者だった。


「牙宇羅くん!」


 もみじが華やいだ声を上げた。


(この男の子が、もみじがSOSを発していた相手? 本当に来たのね)


 玲奈は普通に驚く。


 牙宇羅の頭の獣耳、尻尾にもすぐに気付き少しだけ緊張したものの、リザードマンたちに比べればはるかに人間よりで安心できた。


「大丈夫か!? もみじ! 一体どうし……」


 そこで牙宇羅は言葉を止めた。地面に転がる、バラバラになったコツコッツに気付いたからだ。


「コツコッツ兄ちゃん! 一体誰がこんなひどいことを!」


「そいつらよ!」


 もみじは迷うことなく、逃亡しようとしていたリザードマンたちを指さす。


「そいつら、わたしと玲奈ちゃんに尻尾のピンクのウロコを数えさせようとして、それを止めようとしたコツコッツお兄ちゃんをバラバラに!」


「えええええええええ!」 × 2


 下っ端リザードマンたちから焦りの声が上がった。


「いやいや、そのスケルトンは勝手に転んだだろう!」


「そ、そうだ! 俺たちは何もしていないぜ!」


 2人の必死の弁明も、怒りで肩を震わせる牙宇羅には届かなかった。


「てめえら、人間じゃねえ!」


「いや、まあそうだけど。それを言ったらお前だって人間じゃ……」


 下っ端リザードマンが息をのむ。牙宇羅が自らの首輪に指をかけるのを見てしまったからだ。


 外され、投げ捨てられる首輪。牙宇羅の変化はすぐに起こった。瞳が金色に輝き、狂暴な狼の顔へと変化した。腕からは獣毛が生え、指先にはすべてを引き裂くかのような鋭い爪。


「アオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!」


 ワーウルフの力を解き放った牙宇羅は、空を見上げると遠吠えを響かせる。


 そしてギラつく瞳で下っ端リザードマンたちを睨み、叫んだ。


「てめえらの血は、何色だああああああああ!」


 襲いかかってくる牙宇羅に、下っ端リザードマンは恐怖でガタガタと震えながら答えたのだった。


「み、みみみ……緑ですけどおおおおおおおおおおおおお!」 × 2


挿絵(By みてみん)



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