表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異文化こみにけーしょん  作者: 作・夏井めろん 画・ピロコン
エピソード1 はじめての異文化体験
10/114

その9 KFCへようこそ

「ごめんね。まさかデスワームが、普通のペットじゃないなんて全然知らなかったよ」


 ペットショップを出たもみじは、申し訳なさそうに言った。


(あんなのが普通のペットのはずがないじゃない!)


 と声を大にして叫びたい玲奈だったが、もうそんな元気もなくなっていた。


 それでも、もみじに勘違いされたままでいるのも何だか面白くなかったから、きっちりと説明しておくことにした。


「多分、全然気付いてないと思うけど、最初に見せてくれた、ケロベロス、オルトロス、ヘルハウンド、それからトイマンティコアも普通のペットじゃないから」


「ええええええ!」


 やっぱり気付いていなかったらしく、もみじは目を大きくして驚いている。


「じゃあじゃあ、玲菜ちゃんにとって普通のペットってどんななの?」


「そうね。犬なら、チワワとかパピヨンとかトイプードルとか。猫なら、アメショーとかスコティッシュとかかしら? まあ、あなたは知らないかもしれないけど」


「ううん、知ってるよ!」


 大きく頷いたもみじは、それからとんでもない言葉を口にした。


「そんな珍しい犬や猫が見たかったら、最初から珍しいペットが見たいって言ってくれれば良かったのに。そしたら、珍しいペットがいるお店に連れてってあげたんだよ。玲奈ちゃんが普通の、普通のって言うから、普通のペットショップにしちゃったよ」


(この町では、チワワとかパピヨンとか、アメショーなんかは、珍しいペットなのね。それよりも、頭がいくつもあったり、燃えていた璃、コウモリの羽根が生えていたり、ましてやうねうね蠢く虫の幼虫の方が、ポピュラーなのね)


 つまり、この町を歩いていてペット連れの人とすれ違う時には、高確率で(玲奈にとっては)普通じゃない生物? を連れていることになる。


 改めてこの町の恐ろしさを知り、玲奈は眩暈を覚えた。


「あっ、玲奈ちゃん。大丈夫?」


 もみじが慌てて玲奈を支える。


「ずっと歩きっぱなしで疲れちゃったよね。それじゃ、どこかでお茶でもしようよ。おやつでも食べながら」


(違うのよ。疲れたのはあなたがおかしな場所にばかり連れていくからよ! 驚き疲れなのよ!)


 と猛烈に抗議したいが、そんな気力もなかった。


 この町に来る緊張のせいか、あまりお昼を食べられなかったこともあり、お腹が空いているのも事実だった。


「そうだ!」


 もみじが何かを思いついたように声を出す。


「ここからならあそこが近いし、行こっ!」


 玲奈の意見も聞かずに勝手に決めてしまう。


「大丈夫、普通のファーストフード店だから」


「その普通が当てにならないのよ」


 玲奈は絞り出すような声で言った。


「あなたのことだから、どんなおぞましい食べ物を出す店か分かったものじゃないわ」


「そんなことないよ。本当に普通の食べ物だから。だってほら、あそこだよ」


 もみじが指さした方向には、一見のファーストフード店があった。


『K・F・C』


 という看板が出ている。


(KFCなら、確かに普通よね)


 警戒心を少しだけ和らげた玲奈を、もみじがぐいぐいと引っ張っていく。


「さっ、行こ! 疲れた時こそがっつり揚げ物を食べなくっちゃ! 太るのを気にして美味しい物を食べなかったら、人生もったいないよ」


 持論を口にしながら、もみじは玲奈と共に『KFC』の中へと入った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ