1/114
プロローグ
ある日、それは突然に姿を現した。
全長50メートルにも及ぶ巨大な門であった。
禍々しいデザインのその門は、何の前触れもなく、本当に唐突に、世界各国にランダムに出現した。
門と言うからには、どこかに繋がっているのが常識である。
しかし、その門が繋がっている先は、常識というものとはかけ離れた場所であった。
邪悪な瘴気に満ち溢れ、恐ろしいモンスターたちが暮らす世界。
『魔界』であった。
門を通ってやって来る異形のモンスターたちに、人々は恐れおののいた。
しかし、モンスターたちは人々が、いや、人類が、世のファンタジー作家やゲームクリエイターが思っていたよりもずっとずっと平和的かつ、ミーハーだった。
『ハジメマシテ、ミナサン、オトモダチニナリマショー。ソシテ、ニンゲンカイノコト、イロイロオシエテクダサーイ』
とまあそんな感じにファ―ストコンタクトを果たした人類とモンスターは、協議の結果、『人魔不争協定』を結ぶこととなる。
それから、早20年。
物語は、ひとりの少女の叫び声によって始まるのであった。