7 峠道の泥濘
直樹は峠道の登りの中腹辺りまで来た。
「気を抜くぬあっ!?」
直樹の足が滑った。しかし、すぐにもう一歩別の場所に足を出し、なんとか転ばずに済んだ。
「危ねえ……! なんなんだこりゃ……泥濘?」
直樹は左手の平で額を抑え、静かに呻る。
「こっちも事実上行き止まりか……? いや、行くしかないよな……戻ってもどうしようもないし。うおおおおっ!!」
直樹は走り出した直後転んだ。
〈damage 1〉
「わかってた。わかってたんだ……」
直樹の視界はグルグルと周り、やがて真っ暗になる。
直樹は再び浜辺で目を覚ました。
「どうすればいい? 俺はどうすれば……」
直樹は起き上がる事もせず、憔悴していた。
(どっちに行っても死が確定している……俺は寿命が尽きるまで浜辺で野宿しなきゃならないのか……)
「家に帰りたい。帰らせてくれよ……」
直樹は涙を流し始めた。
「暖かい部屋でゲームしたい……屋根の下で寝たい……なんで俺がこんな目に……」
直樹は寝返りを打って陸側を眺める。
「あんな崖みたいなの登れないしなあ……ん?」
直樹は先程蹴った石を凝視する。
「石を蹴った反動で死ぬとか、何このザコキャラ、ゲームだったらボツ確定だろ。石を蹴っただけでさ……石を蹴った、だけで……ん? 蹴る?」
直樹は目を見開く。
「そうか、石を『投げ』ればいいのか!!」
直樹は立ち上がって、石を拾った。