66 タイムジャンパーとバロウ
長い黒髪の少女は野菜・果物屋の店主に無償で食物を譲って貰い、彼の実家に泊まっていた。
「さて、あんがとねおじさぁぁん」
「いやいや。じゃあ元気で」
「もちのろぉぉんさ」
黒髪の少女は店主の家を出ると街をぶらつき始めた。
「何か面白えもんは……お」
黒髪の少女は硬貨の積まれた木のテーブルと「腕相撲! 賞金1000€! 強者来たれ!」と書かれた看板を目にする。
「腕相撲かぁぁ。オレもガキの頃よくやっ……あぁぁ?」
黒髪の少女は看板とテーブルの前にやって来た少年を見て立ち止まる。
「ありゃセトーの民かぁぁ? くくっ、面白え、試してやる!」
その時バロウは腕相撲屋の中年男性に対戦相手がいないと腕相撲出来ないと言われていた。
バロウはため息を吐いて後ろを向いた。
「どうしてだよ……おっさんが対戦相手になってくれるんじゃないのかよ」
(対戦相手ぐらい用意しとけよ……)
「おい、セトーさんよぉぉ」
「ん?」
黒髪の少女はセトーに話しかける。
「オレと戦いな!」
「えっ……腕相撲で?」
「もちのろおぉん」
「いいの⁉︎」
「ああ。まあ賞金はオレが貰うけどな!」
「言ったなオレっ子。女の子だからって手加減しないよ?」
「それでいいぜ、寧ろそうじゃなきゃだめだぁぁ……オレが楽しめねえからなぁぁ……!」
「随分と強気だね。僕はバロウ。君は?」
「ツェイト=リニアルだぁぁ。よろしくなぁぁ? くくく」
「うん……よろしく。おっさん、これでいいね?」
「ええっ、ああ、うん」
長い黒髪に白い縁の瞳の少女ツェイトと短髪の赤い髪に緑の瞳のバロウは互いの右手を握り、肘を木のテーブルの上に置いた。