62 神の戦闘力
「ぐぅぅっ……! 調子に、乗るな!」
ヘレナはマターオブタイムを後方へ投げ飛ばした。
「形も持たぬ出来損ない如きが私に勝てると思ったか!」
ヘレナが振り返りながらそう言うとその意味を理解しているかのようにマターオブタイムは変形し人型になった。
マターオブタイムは人型ではあるものの人ではない、デッサン人形の様だった。
「人型か……それならやり易い。神の光よ、敵の頭部を貫け!」
ヘレナが右手を前方に向けながら呪文を唱えると彼女の右手から数センチ離れた場所から黄緑色のレーザー光が発生し、マターオブタイムの頭部を貫いた。
「人型になるからには人の性質を手に入れるはず。今の貴様は頭部が弱点、だろう?」
ヘレナが口角を上げ自信満々にそう言うと、マターオブタイムはロボットの様にぎこちない動きでヘレナの方へ向かってきた。
「馬鹿な……! 神の光だぞ! ダメージは……」
ヘレナは再び敵のステータスを表示させる。
〈Name:Matter of time〉▼
〈HP:94〉
〈MP:8494〉
「思いの外……効いてる……な」
ヘレナは右手の人差し指を向かってくるマターオブタイムに向けて一言。
「えい」
ヘレナの右手の人差し指の先から先ほどの神の光よりも細いレーザー光がマターオブタイムの頭部に向かって照射された。
「ボソ……ボソ……ぁ……さ……ぃな……ば」
「今何か……喋ったのか?」
マターオブタイムは形を失い、地面に溶ける様に消えた。