58 無双能力使いバロウ
セトーの民。この世界で最も希少な民族であると共に、戦闘において圧倒的に優位に立てる能力を持って生まれてくる反則級民族である。
フアナにやってきたセトーの民、彼は敵からのダメージエネルギーを吸収し、自在に発動できるという特殊能力を持つ。彼の名はバロウ。セトーの民独特の赤い髪、そして緑の目を持った青年。彼は街中の人物から注目を浴びていた。
「あれは伝説のセトーの民!?」
「すげえ……初めて見た」
「目を合わせるな! 殺されるぞ!」
バロウは周りの人々の反応を見てため息を吐く。
バロウの目的は直樹がやってきた方の峠の奥の村「イーステン」だ。この大陸の最も東に位置する最小規模の村であり、人口は10人にも満たない。
目的の場所へ行くまでの道中、行く街行く街で同じような反応をされ、落ち込んでいた。
「なんでこんな反応ばかりされるんだ……僕は何も悪い事してないのに。セトーの民がそんなに怖いのか?」
バロウは拳を握りしめながら二階建ての宿屋「PEACEFUL NIGHT」に入った。
「いらっしゃいま……ヒッ⁉︎」
バロウが入店するなり受付の若い女性は目を見開いて後方へ仰反った。
「あ、あの……一泊したいんだけど」
「はっ、はいっ‼︎ しょ、食事はどうされますか⁉︎」
「……じゃあ夜ご飯だけお願いするね」
「はいいいっ‼︎ それではご案内いたしますううっ‼︎」
(セトーの民にどんな噂が流れてるんだろう……)
バロウは受付の女性に聞こえないくらい小さなため息を吐いた。