4 蟹を蹴ったら反動で
直樹は潮の香りで再び目を覚ます。
「ぬかった……背後にも気をつけなきゃならなかったな」
直樹は立ち上がって進行方向を睨む。
(この調子でやってたら日が暮れちまう……俺は死んでも蘇るんだ……!)
直樹の額に脂汗が流れる。直樹の眉はハの字になり、動悸は激しくなる。足が震え、呼吸が荒くなる。
(何度でも蘇れる……それはつまり何度も死ぬ感覚を味わうって事だ……! 嫌だ……だが、やらなければ……!)
意を決して直樹は走り始めた。
「うおおおおおおおおおおおおぉ!!!」
砂浜を抜け、砂利道を突っ走る。再び巨大な蟹が見えてきた。
「邪魔だああああああああぁぁ!!」
直樹は目の前に立ちはだかる蟹を蹴飛ばした。
〈recoil damage 1〉
(何っ……!? 反動、だとっ……!?)
直樹の視界は暗転した。再び浜辺で目を覚ます。
「ちょっと待て……死ぬ感覚は物凄く不快だが、それよりもはっきりさせておく事がある……」
直樹は浜辺落ちている拳くらいのサイズの石に目をつけた。
(流石にこれじゃ反動はない、か?)
直樹は思いっきり石を蹴飛ばした。
「痛え」
〈recoil damage 1〉
「チクショウ!!やっぱりかああああああ!!!」
直樹の視界は揺らぎ、意識を保てなくなった。