3 歩くだけで危険
潮の香りを感じ取り、直樹は目を覚ました。
「まさか転ぶだけで死ぬとは……どこのクソゲーだおい。作ったやつ出てこいよ」
直樹は体を起こし、立ち上がる。
「一歩一歩慎重にいかなきゃなんねえのか……」
直樹は慎重に歩き、なんとか道らしき場所まで辿り着いた。
「はあ……やっとここまできた……ん? あれが街か」
直樹の視界に入ってきたのは500m程先にある一つの街。この世界の知識が無い直樹にとって、街に行く事は最重要事項だった。
「遠いな……でもいかなきゃ現状は変えられねえからな。早く街に行くか」
直樹は慎重に歩く。直樹の目には遠くに見える街以外に、あるものが映っていた。
「なんだ? 生き物?」
少しずつ近づいていくと、その動いていた物体が蟹である事がわかった。
しかも普通の蟹ではない。全長が人間の三分の一程も大きさがある。
それにはさみの部分が、人間の首を余裕で切断出来そうな程大きかった。
「バケガニ!? 気持ち悪っ! あんなのにまともに対峙したら間違いなく死ぬ! 今の俺は転けただけで死んでしまうのに、あんなのをくぐり抜けて向こうの街までいかなきゃならないのか!?」
直樹が狼狽えていると、背中に鋭い痛みを感じた。
「ぐあっ!?」
〈damage 10〉
痛みに耐えながら直樹が振り返ると、先程まで視認していた蟹と同じ蟹がいた。
視界が揺らぐ。
「またこれかっ……! クッソォ……」
またしても直樹は意識を失った。