13 腹が減っては
直樹が頭を悩ませていると、直樹の腹が鳴った。
「腹減った……食料も調理器具もない……」
(腹の内側から攻撃されているようなこの感覚、空腹は辛い……)
直樹は再び峠の方に歩いてゆく。道に生えている植物を横目に、再び腹が鳴った。
「くっ、草だぞ? 俺は何を想像しているんだ……」
植物を食べ、口の中に爽やかな香りが広がり、それを飲み込むと腹にたまる……直樹はそんな想像をしてしまった。
「いや、ダメ元でも見てみるか」
直樹は足を止め、雑草にしか見えない植物を凝視する。するとウィンドウが現れ、アイテム名が映し出された。
〈weed〉▽
「ウィード……雑草、見たまんまじゃねえか。ん? 三角?」
直樹は三角形の部分に意識を集中させる。すると説明文が出てきた。
〈How to use:No eating〉
「使い方で『食べられない』? ゲームにありがちなあれか……食べられないのは分かってた、分かってたさ。だが!!」
直樹は雑草を毟り取った。雑草の根はブチブチと音を立てて千切れる。
「くっふふ、腹が減っては戦は出来ぬという……まあ俺のステータスじゃ戦いにはならないんだが……食えないと分かっていても、食べるしかない。仕方ないじゃないか。俺は何も食べていないんだから、そりゃ腹減るよ、ああそうさ」
直樹は理性を失いかけているのか、類稀なる悪人面で雑草を睨みつけた。
「……いただき、ます」
直樹が雑草を口に含むと、土の香りが口いっぱいに広がった。