調理実習で①
高校2年生。高校生活の中で一番ふざけ、一番だらける時期でもある。
山田直樹はだらけるタイプの人間だった。
山田直樹は見た目も普通、学力も平均より少しだけ高い程度。しかし、コミュニケーション能力が低い。
「では皆さん、今日の授業では、前回計画した料理を行います。今回は包丁を使うので十分に注意してください」
今日の家庭科は調理実習だった。女子にとっては腕の見せ所、男子にとっては憂鬱な授業である。
直樹は特にこの授業が嫌いだった。そこまで中の良くないクラスメイトと強制的に班にされ、コミュニケーションが取れないから仕事も無く、女子達に後ろ指を指されながらも皿に盛り付けられた料理を食べ、感想を書かされる。
(早く終わんねえかなぁ……)
直樹が台所の片隅でへそを曲げていると、他の班の男子が騒いでいるのが目に入ってきた。
「見てみ? 二刀流~」
「ブフッ! お前なにイキってんだよ~!」
「スタバ?」
「んふははははっ!」
(くだらね……)
ふと、トントンと軽快なリズムを刻む音が聞こえてきた。直樹は180度体の向きを変え、他の班を見る。
「おお、高梨上手いなあ!」
「よっ、料理人!」
(確かにすごい手際の良さだ。だがお前達は知らない……高梨春香の性格の悪さを。知ってりゃそれが猫を被る為のスキルだと理解できる。そんなに盛り上がることもなかっただろうな)
「スターバレット、スラッシュ!」
背後からそんな声が聞こえた。