魔王と挨拶
「あ、あの良ければお話でも…」
「これはこれは西城様ではないですか。どうですか?うちの娘と結婚など…。」
「こんにちは。今日は友人と来たので、申し訳ございません。」
面倒くせぇ…
俺は今、会社の社長や女子の相手をしていた。
隣では同じ状況になっているタクトがいる。
「…なあ、そろそろ加藤に挨拶をしたほうがいいんじゃ?」
「…せやな。僕もそろそろ飽きてきてはるんや。」
これに飽きるとかあるのか!?
大丈夫かコイツ。どっかぶっ飛んで…飛んでたな。
俺らは頷くと、強引に輪の中から脱出した。
だが、出た先が悪かった。
「……あ。」
「……はあ?」
念のため言うが、前者が俺だ。
男みたいな声を出したのは、予想通りのメガネ。一番会いたくなかった奴。
もしかしてまだ輪の中にいた方が良かったのか?
「……西条様、私の父から伝言がありましたので良いですか?」
「……ああ。少しなら。」
ほかの令嬢らが悔しそうな顔になりかけたが、凍った。
ははっ!そうだろう。何故なら俺らの間にブリザードが吹き荒れているからだ!
皆が手で身体をあっためている内に俺らは家の外に出た。
「アンタがいるって聞いてないんですけど!?」
そんな般若をする顔の奴に誰が好き好んで行くか!
「俺は加藤に誘われたんだよ!メガネがいるって聞いても加藤のパーティなら行くだろ!?」
「そりゃあね!?」
だったら何も言わず去るのが正解だっただろぉ!?
「お前今すぐ帰れ!」
「その口調どっちが俺からワカンねぇだろ!…俺は誰にいっているんだぁ!?」
うわぁぁぁ!?ただの痛い奴にはなりたくねぇ!
頭を思わず抱えてしまったが許してほしい。
だが、これを見逃すメガネではなかった。
「はっ!私の勝利!今直ぐ帰れぇ!」
ギンっと睨み、間髪入れず俺も叫ぶ。
「それは加藤に言うんだな!」
「お前のことは腹が痛くなったから帰ったって言っておくさ!」
「言い訳が最低すぎないか!?」
「とっとと帰れ!」
「帰んねぇよ!……このパーティの間は絶対関わんなよ!」
「言われるまでもないね。……さっさと消えろ!」
消えろって言ったな!?社会のトップに立つ男に言ったな!?
絶対いつか潰してやるぅぅ!
「お前がな!」
「ふふ、それじゃあ。」
いきなり別れを告げて立ち去ろうとするメガネに、俺は一気に冷静になる。
「……なんでいきなり冷静になったんだ…?」
……大人だから!