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ラブコメ……って思った?  作者: 幸兎大福
2/7

猫かぶりメガネの大嫌いなアイツ

「なんなのあいつ………!」


私・佐々木菫(ささきすみれ)は、四時間目の授業が終わり、友人とお弁当を食べていた。


「あいつって?」 


隣で食べているのは、笹本未来(ささもとみらい)。同じ小規模会社の娘で、幼稚園からの幼馴染だ。私の素を知っている数少ない人。

私は基本的にとっても上品な淑女の仮面をつけている。理由は、小さな会社だが、私が跡継ぎ候補だからだ。同じ理由で、大手企業の子息や令嬢しか居ない、花月学園に入学する事となった。しかし、三日前お父様が亡くなり、現在は私が女社長だ。

通ってる暇などないと思うだろうが、学んでから改めて挨拶して下さいと、秘書に言われた。あのクソ眼鏡が……!

ぶっちゃけ社長なんか柄じゃないから弟に押し付け…ゲフン、任せようかなと思っていたのだが、弟の一樹(いつき)はまだ十歳。まだ高校生の私で、良かったって噂だ。

おっと、今は未来の質問に答えなきゃね。


「未来もこの学園のトップ知ってるでしょ?」


「あぁ、西条和人?あんな雲の上の人がどうしたの?」


「彼奴に三時間目の授業の時会って、喧嘩売られた。」


「待って、何しているの。あと彼奴って言っちゃダメな存在。」


冷静な顔で突っ込まれた。

私は今日最大にムカムカした、そしてテンションが上がった時を思い出す。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ふぅ、そろそろライフが回復したし、イベントを進めよう。」


私は隠れゲーオタだ。女の子育成ゲームの『ミニオンアイドル』、略して『ミニアイ』ではイベントは不動の一位という称号を持つ。ミニアイで知らぬ者はいない、ガチ勢だ。

趣味が一番、その為には授業をサボったって構わない。プレイするのに必要なライフが回復したのを見計い、私は保健室に行くと言い訳し授業から抜けさせてもらった。

しかし体調が悪いわけではないので、私は裏庭でプレイすることにした。

裏庭にいるとはバレないよう、木に登り、座る。

社長としては咎められるが、今は注意する人などいない。

私は


「ぁぁあ〜!可愛い!私の激推しミミィ!」


ミミィとはゲーム内の一キャラだ。ミミィはメインのキャラと違うグループアイドルで不動のセンターを務めている。しかし保っているのに血の滲むような努力をしたーーという感動エピソードもある。

誰にでも優しいが、自分には厳しく。より高みを目指し、しかし仲間のことは誰よりも大切にする。私は一瞬で惚れた。

イヤホンを付け、ライフ制のリズム感を鍛える、音ゲーを始める。

無表情+無言の姿を見た者は、取り憑かれてる!?と恐ろしく思う

15分で全てのライフを使う。後は夜に課金をして一気にポイントを貯めよう。


「限定ガチャ……ミミィ〜〜!!」


私はガチャ画面を開き、限定メンバーを見る。今回のイベントのコンセプト、ゲームをやってみた!と言う事で、ゲームの衣装を着ている。そこには魔王風衣装のミミィもいた。猫耳がチャーミングだ。

残念ながらこのガチャは明日までで、どれだけ課金してもミミィが出ることはなかった。ピックアップ仕事しろよ。あと天井運営つくれよ。

……え?そんな課金して大丈夫かって?それが大丈夫だったりする。

私は空いた時間に暇なので絵を描いている。実は私の得意なことの一つが絵を描く事なのだ。

上手く描くことができた絵はフリマで売り、順調に稼ぐことに成功している。

何枚も何枚も描くうちに絵は上達し、一枚5000円で売れるところまで上り詰めた。

5000×○○で、お金が貯まってわけだ。

左手の腕時計を見ると残り10分だった。


「そろそろ教室に戻りに行こう……。」


スマホをスカートのポケットに仕舞い、飛び降り……れなかった。


「きゃぁぁああ!」


バランスを崩し、落っこちる。

地面にぶつかる!と思ったが、ダメージがこなかった。


「ぐへっ!」


「へ?」


声で下を見ると、苦しそうな顔をした男子が私の下敷きとなって居た。

ーーー西条和人さん!?

私の代わりに犠牲になられ、申し訳なくて謝る。


「すみませんすみません!……あ」


れ?よく見たらこの西城さん……ミミィに似てる!?

思わずぼーっと見てしまう。


「退いてくれないか?」


西城さんの声に飛び上がる。


うわぁ!いつまで乗るつもりだったの!


慌てて距離をとる。

改めて見ると本当に似ている。そう、今回のーー魔王キャラのミミィに。


「魔王がいる!」


気づいたらそう叫んでいた。

はっ!今なら限定キャラが出るような気がする!

急いでスマホを取り出し、アプリを立ち上げる。

お願いーーー!


「おい、俺「うぉっしゃゃぁぁあ!」


雄叫びみたいな声が出て西城さんが引いていたが、私はお構い無く、スマホを突き出す。画面には限定ミミィがいる。

ーーーそう!ミミィが出たのです!

ボイスボタンをタップすると、ミミィの声が流れる。


『ニャンニャン』


これ!この口ぐせこそミミィの象徴!最高!


「魔王キャラーーゲット!」


拳を天に振り上げる。勢い余り、ジャンプもする。


「待て待て待て。俺が誰だか知っているのか!?」


水を差され、気分を害する。


チッ、せっかくいい気分になっていたのに。嫌味の一言言ってやろう。

しかし、私の素が曝け出してしまった…今からでも猫は被ろう。

心の中で少し反省したが、イラっとしたのは本当だから毒は隠さない。


「自意識過剰とは可哀想な人ですね。」


「お前殺すぞ!?社会的に!」


「まあ、権力で脅してくる人……可哀想に。」


泣き真似をしてみる。さあ、これだけ煽ったら勝手にキレてくれるでしょう。

案の定西条は薄っすら青筋を浮かべた。


「お前知ってんじゃねーか!」


計画通り。ほくそ笑む。


「まあまあ、この学園のトップがそんな言葉遣いではいけませんよ。」


嗜めるように煽る。人の神経を逆なでるような事を言うのは得意だ。

しかし西条、いや、魔王は真面目みたく、深呼吸をして冷静になりおった。

残念で、眉を下げる。


「あら、もう終わりですの?」


言い返そうとして、私の口調に気づいたらしく、顔を歪めた。


「ああ。というか何だその言葉遣い。さっきと全然違うだろ。」


「同じです。」


チッ、気づかれたか。ここは動じず押し通そう。


「いや、『うおっしゃゃ』って「同じです。」……。」


余計なこと言うなよ?

笑顔で否定するのがコツだ。かなりの圧を与えられる。予想通り、魔王は黙った。


「……じゃあ何で授業中にこんな所にいるんだよ。」


まだやるか?悔しい顔を見れたのは愉快だが、そろそろイライラしてるんだが。


「貴方こそ」


「俺は許可を貰った。」


(わたくし)もですよ。」


「何その口調!キッモ!」


一番の問題にこいつ触れたな?自然と青筋が浮かぶ。


「……殺して差し上げましょうか?」


「あれ?俺にさっき言った言葉は何だったかな?」


こいつドヤ顔で……!

俯き、唇を強く噛み、冷静になる。

顔を上げて私が今まで生きてきて一番うざいと思った顔を向ける。


「まあまあ。トップの貴方がこのような小さい事を気にするわけがありませんよね?」


魔王の青筋がパッと見ても分かるぐらい強くなる。

これで言い返すことはーー


「そんなわけないだろう?君こそキレているんじゃ?」


あらあら、(わたくし)がいつキレたと言うのかしら?


(わたくし)の事がそう見えたのですか?眼科を行くことをお勧めしますよ?」


「自覚していないなんてなんて哀れな。」


こいつ………!!

更に言い募ろうと口を開くが、


チャリラリーンチャリラーン


チャイムによって止められた。

このチャイム、嫌いな上私の邪魔をしたな!

内心キレていると、魔王が挑発的な笑みを向けてくる。


「……良かったな。チャイムに助けられた()()()()()。」


今度こそ青筋がピキッと音を立てて浮き上がる。


「貴方こそ良かったですねぇ。負ける前にチャイムが鳴ってくれて。」


「何だと?」


「何ですか?」


私は睨み続けなければ負ける様な気がした。

しかし思いの外、魔王が先に外した。

背中を向けると、校舎に向かって歩き出す。

何を思ったのか手を振ってくる。ひらひらしているのがムカついて、反射的に睨む。


「精々授業に遅れないようにしな。」


「あなたに言われるまでもないわよ。」


最後一本とられたような感じで、悔しい気分になった。

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