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第44話 盗賊 ブレイドキット

ブクマ・評価して頂きありがとうございます。

 街を出てから一日が過ぎた。

 何度か魔物に遭遇するも、順調に目的地にむかっている。

 今は岩場のような場所をゴトゴトと進んでいる。


「ね〜おじさん。おじさんは何を運んでるんですか?」


 ミオンは荷台からひょっこりと顔を出して言った。

 俺達は馬が引いてる荷台に乗っているのだ。

 だから俺達は荷物と一緒にいる。


「んー日用品とかかな。無事に街に着いたら安くしとくよ」

「本当ですか?!」


 ミオンは目を輝かせながらそう言った。

 手持ちが不安なだけに、日用品を安く買えるのはありがたいな。


「おじさん、前方にゴブリン発見!!」

「え?! うそぉ、ちょミオンちゃん頼むよ」

「了解です!!」


 馬車が進む方向にゴブリンが二匹。

 ミオンは目がいいらしく、俺達が見えない距離でも見えるらしい。

 この荷馬車ではミオンが索敵担当だ。

 ここらの岩場は開けており、岩の影に隠れていなければすぐ分かるのだ。


「我が魔力よ 我が意思に答えよ!! 

  『ファイア・アロー(火炎の弓矢)』」


 ミオンが詠唱を唱えると、上空にいくつもの矢が生み出される。

 その矢はすぐさまゴブリンに向けて放たれ、ゴブリンが 達は無数の炎の矢に串刺しにされる。


「ギャッ……」


 僅かながらに聞こえたゴブリンの断末魔。

 それを聞いたおじさんは安堵の息をつく。

 このおじさんはかなり臆病らしい。

 武器を持たないゴブリンなら、天職を与えられてない子供とそこまで変わらないのにこのビビり様である。


「いや本当に助かるよ」

「いえいえ。当然のことです」


 そう、本当に当然の事なのだ。

 俺達は馬車に乗せてもらう代わりにこのおじさんと荷物を守らなければいけないのだ。

 まさにウィンウィンというやつだ。


「にしてもミオンの魔法は正確だよな」

「そりゃ天職ですもの。それに詠唱だってちゃんとしたんですから、万が一に外すわけがありません」


 そう言えば、ミオンが詠唱を聞くのは久しぶりな気がする。

『詠唱短縮』のスキルを手にしてからろくにしてなかったからな。

 最近はあまり強い敵と出くわさなかったからだ。

 最近と言っても『詠唱短縮』を手に入れたのも最近なのだが。


「この調子でお願いね」

「はい!! 後そういえばなんですけど、さっきから後ろの馬車につけられてる? 気がするんですが」


 後ろの馬車と言われ俺とおじさんは後ろを見る。

 ギリ見えるくらいだ。そんな距離に三つの馬車がいる。


「多分()()されてるんじゃないかな。ほら、うちには優秀な冒険者がいるし」

「えへへ。でもなんかやな感じですね」


 寄生と言うのは冒険者を雇っていない行商人が、冒険者を雇っている行商人の後について行くことだ。

 要は俺達は後ろの行商人の護衛をタダでさせられているということだ。損している気分だな。


 その後俺達は脇道で休むことにした。

 そうすることであの馬車に寄生されているか分かるからだ。もし寄生ならその馬車も休憩を始めるはずだからだ。

 その馬車はそのまま道を進んで行った。そして俺たちの前まできてそのまま通り過ぎる――ことは無かった。

 その馬車は俺達の目の前でちょうど止まったのだのだ。


「なんだ?」

「止まりましたね」


 そして中から人が現れる。

 一人ではなくかなりの人数だ。

 皆体がゴツゴツしている屈強な男達。ただの行商人ってわけではなさそうだ。

 30人くらいだろうか。馬車の中に乗っていたと思われる全ての男達が外に出てきた。皆盗賊風の格好をしている。


「お前達わかるよな? 金目の物を置いてけ。痛い目見ねえうちにな」

「ひ、ひぃーー!!」


 真ん中にいた一番ごつくてでかい男がそういった。そしておじさんはみっともない悲鳴をあげる。

 どうやらこの男がボスらしい。

 盗賊か……ついてないな。俺達もこのおじさんも。


「ダメですよ。だってそんなことしたら値引きしてもらえないじゃないですか」

「え、そんなこと?」


 おじさんは驚きの声を上げる。

 おじさんを命を大切に、的なことはミオンの頭にはないのだろう。いやあるにはあるだろうが、第一優先では無いだろう。

 俺だってそうだ。時間はかかるが最悪ミオンと二人で歩いて行けばいいし。まあそんなことはしないけど。


「とりあえず全員敵ってことでいいですね?」

「おお言ってくれるねぇ嬢ちゃん」

「俺達が誰だか知らねぇみていだな」


 なんかこんな感じ前にもあった気がする。

 まだ俺がベイトさんと会って間もない頃だ。何度も盗賊団のアジトに放り込まれたことか。

 俺は溜息をつきながら、密かにアイテムボックスから剣を取り出す。


「俺たちゃ泣く子も黙るブレイドキット様よ!!」


 下っ端ぽい男Bがそう言った。

 ブレイドキット……ビスとウルの仲間ってわけか。

 見るにあの二人はいないようだし、あいつらのことは黙っておこう。余計な面倒事はごめんだ。


「ビビったか!!」

 

 誰が言ったか分からないがビビりはしない。

 強そうなのは真ん中にいるやつだけだし。周りの連中はお飾りみたいなものだ。

 真ん中のやつ以外ビスとウルと同じかそれ以下と言ったところだろう。


「ボスが出るまでもねぇ、やっちま――」

「『ファイア・アロー(火炎の弓矢)』……!!」


 下っ端Bの男が合図しようとした時、ミオンは『詠唱短縮』でファイアアローを敵全体に打ち込んだ。

 空中から一気に放たれる無数の矢に、一切の対処も出来ずに()()()共は襲われる。


「がぁっ!!」

「ぐ、あちぃ、いてぇ!!」


 無数のファイアアローがほぼ全員に命中し、戦闘不能に追い込んだ。

 さすがと言っていいほどの威力だ。

 だがこれで『詠唱短縮』。威力が弱まっているのだから恐ろしい。


「リヒト様には指一本触れさせません!!」


 ミオンはそう言い放つ。

 めちゃくちゃ頼もしい。

 だが、あの真ん中のやつはやばいだろう。

 他の連中と違い、ミオンの矢を完全に見切っていた。


「よくも俺の子分達をやってくれたな。覚悟は出来てんだろ?」


 男はイラついた表情だ。40代手前の厳つい男だ。

 顔や腕からは血管が浮き出ている。

 盗賊とはいえ情や仲間意識という物はあるものだ。


「『バーストっ――」


 ミオンが先行を取ろうと魔法を行使しようとした途端、男は一気に距離を詰め、ミオンの首を鷲掴みにした。

 凄まじい速度だ。俺と同等かあるいは。だが、そんなことを言っていられる状況ではない。

 俺は体に強化魔法をかけ、大地を蹴り、瞬時に剣を抜く。


「ミオンを離せっ!!」


 俺は腕目掛け剣を振る。

 男の腕を切り落とす勢いで。

 だが男はよろけながらもすんでのところで避ける。


「げほっ……すみませんリヒト様。げほっ」

「俺達は仲間だろ。助けるのは当たり前だ。それより大丈夫か」

「はい、何とか」


 ミオンは今の俺の中では最も大切な存在だ。

 そんなミオンを失うわけにはいかない。

 どんな犠牲を払ってでもだ。


「おもしれぇな、おめぇ」


 男は自分の腕を摩りながら楽しそうにそう言う。

 俺としてはこの男がよくわからない。

 何がしたいのか、何を考えているのか。



「ちっと本気(マジ)でいくかか『身体強化(マジモード)』。行くぜ?」


 何? 身体強化ってまだ強くなるのか? 

 そりゃ何も無いってのは無いと思うが、よりにもよって強化魔法か。

 ちょっとばかし厳しいかもしれない。

 少し本気を出さないといけないみたいだ。


「ちょっと本気を出すぞ」

「おぅ?」


 奥の手中の奥の手。

 まさかこんなに早く使うとは思はなかったな。

 俺は本気でこいつを殺す。それでちょうどいいくらいだろう。



「人間との命の取り合いは久々だな。行くぞ

『異能解放』」





文体をちょこっと変えてみました。しばらくこのままいくつもりです。

読みずらかったでしょうか。感想お待ちしています。

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