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第28話 ゴブリンルーキ

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 俺が目を覚ますと、眩しい程の朝日が飛び込んで来る。どうやら朝になったようだ。

 まだ意識がぼんやりしている。昨日の疲れのせいだろうか。


 俺は重たいからだを起こし、身支度を整える。そして食堂へと足を運ぶ。そこは昨日来た時よりも人が沢山いて賑やかだ。近所迷惑では無いのか、と思わせるくらいに。

 多分、ていうかもろ冒険者だろう。よく朝っぱらからそんな元気が出るよな。俺は朝が苦手だ。



「リヒト様〜!」


 俺がそんな事を考えていると、後ろから俺を呼ぶ声がする。もちろんミオンの声だ。


「……お前も元気な」

「えーっと、どうしたんですか?」


 俺がため息混じりにそう言う。ミオンは理解出来ていないみたいだ。


 俺は席に着き朝食を頼む。俺が頼んだのは、7種の野菜のソテー。そしてミオンは揚オークのバター丼、というなんとも重たそうな料理だ。


「お前、そんなもん本当に食えるのか?」

「へ? オークは食べられますよ?」


 違う、そうじゃない。俺はそう言いかけてやめた。なんというか、活力みたいな物が起きない。しかもさっきからあくびが止まらないのだ。


 俺はただ、ぼーっと待っていた。すると昨日のおばちゃんによって料理が運ばれてきた。


「はいお待ちどう。こっちがあんちゃんで、こっちが嬢ちゃんだね」


 そう言うと、おばちゃんは俺の目の前に肉の塊を置いた。やばい、吐きそう。油ギトキドの肉が目に入るだけでもう無理。


「リヒト様、もう交換しましたよ?」

「あ、ああすまん」

 

 食欲が失せた。俺はしばしの間、ミオンの食べっぷりを見ていた。油ギトキドの肉が次々とミオンの口に運ばれる。気づけば皿には何も残っていない。


「リヒト様、早く食べてくださいよ。じゃないと仕事に遅れるじゃないですか」

「分かってるんだけど……」

「そんなんじゃ、いつになっても魔法なんか覚えられませんよ?」


 そうだった。これからレベルを上げて魔法を覚える、って昨日決めたばかりだったじゃないか。

 俺は野菜達を無理やり口の中に詰め込む。代金を払い、ギルドへと向かった。



 そして俺は今、大量の視線を浴びている。

 何故? そんなこと俺が聞きたい。

 俺が昨日ギルド来た時とはまるで違う。昨日は精々、若いのが来たな〜くらいの感じだった。今は待っていたかのような感じだ。


「あの〜これはいったい……」


 ミオンが恐る恐る集団に問いかける。

 ミオンは少し抜けているが意外と度胸があるらしい。


「お前さんたちが噂のゴブリンルーキか!」

「「へ?」」


 俺とミオンの声が重なった。

 ゴブリンルーキ。まったく聞き覚えが――無いことも無い、か。


「新人2人で何十匹ものゴブリンを倒したって?」

「そして、上位種のハイゴブリンまでたおしたんだろ?」

「なあどうなんだ」

「いや、そのー……」



 四方八方から質問の嵐だ。ミオンはどう対処すればいいか分からず戸惑っている様子だ。

 にしても一日でこんなにも広まるんだな。てかあのゴブリン、ハイゴブリンって言うんだな。なんというか安直だな。


 すると1人が、パチンッと手を叩き、場を宥める。どうやら昨日の受付嬢のようだ。


「ハイハイそこまで。新人さんが困っているでしょう」


 受付嬢がそう言うと、他の冒険者達は自分たちが元いた場所に戻っていった。


「ごめんなさいね。で、今日はどんな依頼を受けに来たんですか?」

「えーっと、俺達にも出来そうな討伐依頼なんかありますか?」

「んーそうね。これなんてどうかしら?」


 受付嬢はそう言うと、目の前の大きな看板から1枚の依頼書を剥がす。


「ローンウルフの皮の納品、ですか?」

「そう。新人さんにはちょっと勧めずらいんだけど、貴方たちなら問題ないと思うよ?」


 確かに、今の俺達にはピッタリの依頼といえる。それにアイテムボックスもあるし、大分楽に出来るだろう。


「あ、でも気をつけてね。ローンウルフは群れで襲う習性があるから」


 群れるって事は数が多いって事とだよな? てことは、経験値が沢山稼げて報酬も手に入る。そしてレベルアップすれば魔法が覚えられるかもしれない。なんて美味しい依頼なんだろうか。


 俺の胸の中はワクワクドキドキで満たされていた。いい歳にもなって。


「むー、怖いですね」

「ん、そうなのか?」


 ミオンは意外にも怖気付いたようだ。まあ一応女の子だしな。ゴブリンとは訳が違うよな。

 でもミオンが行かないってなったらせっかくの経験値が消えてしまう。それだけは何としても避けたい。仲間か経験値か、んー悩ましい。



「ミオンの魔法があれば余裕だと思うぞ?」

「ほ、ほんとですか!? えへへ、私頑張ります!」

「ああ、頼りにしてるぞ?」

「はーい!」


 なんと扱いやすい女。こういったら必ず怒られてしまうだろう。

 俺はこの気持ちを胸の中だけにしまっておこう。

 今更だが受付嬢の接し方が何だか柔らかくなった気がする



「ミオン行くぞ。魔法を覚えに」

「え? 依頼じゃないんですか?」

「それはついでだ、ついで!」


 どんな魔法でもいい! 早く魔法を使ってみたいんだ。精神年齢敵にはおっさんだが、ワクワクが止まらない。

 多分前世の俺が今の俺を見たら絶句するだろうな。

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