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第24話 出立点

 


 そこは白い。

 それしか出てこない程何も無く、ただ白い場所。

 すると俺の目の前に光の柱が現れたと思った瞬間、2人の人間が現れた。人間と言うか神様だけど。 



「やあライト君、異世界転生はどうだい?」

「クライシスか……」



 俺の目の前に現れた少女、クライシスが俺にそう言う。そのクライシスの隣にはベイトさんが申し訳なさそうな顔をしている。



「悪いなライトの坊主、実はまだ色々と説明しなきゃいけない事が残っててな」

「はあ……」



 俺がため息をつきながらクライシスの方をむくと、クライシスはそっぽを向いた。自分でも悪いと思っているのだろう。



「で、説明ってなんだ?」

「まあ1番は貴方の罰についてよ」

「罰?」



 俺は確かに憤怒の罪を受けた。その罰が異世界に転生するんじゃなかったのか?

 俺がそう考えているとクライシスは呆れたように俺に言った。



「まさか転生が罰だと思ってたの?」

「……まあ」

「まったく……いい? 貴方の罪は憤怒、そして罰は異世界に転生し魔王を討ち滅ぼすことよ」

「魔王?」



 魔王……聞いた事のない名前だな。

 魔法の王様って事なのか?

 なんでそんな魔王ってやつを倒さなきゃいけないんだ?



「魔王というのは魔の王、全ての悪の根源であり、災厄の存在。その魔王が貴方が今いる世界で復活しそうなのよ」



 成程、なんとなくだが理解出来たぞ。

 つまり悪い奴が復活しそうだから倒してくれ、そういう事か。



「で、その魔王って何か悪いことしたのか?」

「当たり前でしょ!! 人を殺し、街を焼き、世界を滅ぼしかけた存在よ!! そんなやつほっとけるわけないじゃない」

「でも復活ってことは1回倒されたんだよな?」

「ええ200年前に勇者によってね」



 勇者? また知らない単語が出てきたぞ。ま、強いやつって事でいいんだろう。



「じゃ、べつに倒さなくたってよくね?」

「なんでそうなるの!」

「だってまだ悪さしてないだろ? 復活してないんだから」



 極普通の考えだろう。悪さしてないやつを倒すとか可哀想すぎるだろ。それに面倒くさそうだし。



「ああーもう!! とにかく、貴方はちゃんと罰を受けなさい!!」



 クライシスは俺に怒鳴り散らすと消えてしまった。

 現れた時といいまったく不思議なもんだな。転移魔法だろうか? 魔法が使えない俺としては神業にしか見えないんだよな。



「すまんなライトの坊主」



 すると1人残されたベイトさんがオレに謝ってきた。

 ベイトさんが謝る必要はないと思うんだがな。




「ライトの坊主には罰ってのをしっかり受けて欲しい。近頃じゃ魔王の手下が悪さしてやがる。その悪いやつの親玉が良い奴なわけねえだろ? だから頼むライトの坊主」

「まあベイトさんがそう言うなら」



 相変わらずベイトさんにはかなり頭が上がらないな。とりあえず罰ってやつは受けるとしよう。

 まあ魔王って言っても大したこと無さそうだしな。復活するまでに強くなればいいだけだし。



「でだ、もう1つお前に言わなきゃいけない事があってな」

「もう1つ?」

「まあお前のステータスについて何だが……まあ教えなくてもいいか」


 何だそれ。めちゃくちゃ気になるんだが。

 まあ大した事では無いのだろう。ベイトさんの事だし、楽しみはとっておこうと考えているんだろう。



「じゃ、もうそろそろお別れだ」

「ああ。てかなんで俺こんな所にいんだ?」

「ステータスの称号ってとこに『武神の弟子』ってのがあっただろ? あれがあると精神だけこっちの世界に連れてこられるんだよ」



 あの称号の効果か。

 名前まったく関係ないだろ。

 俺の意識が徐々に薄れ、何かによって引っ張られるような感覚。どうやら俺は元いた世界に連れ戻されるらしい。




「じゃあなライトの坊主……いやベルノエットの坊ちゃん」

「いやライトでいいよ」






 そして俺はこの空間から消え、元いた場所に戻る。

 目覚めるとそこはベットの上。朝日が俺の目に入って来て眩しい。それにまだ眠いな。あっちの世界では起きていたからどうも寝た気分になれない。特に疲れとかはないがな。



「さて、そろそろ準備を始めるか」



 今日は天職を貰った翌日。つまり俺はこの家を出ていかなければならない。俺は眠い体を起こし、準備をはじめる。

 家族連中にみつかると面倒だな。こっそりと出て行くことにするか。どうせあいつらもそっちの方がいいだろうし。



 俺は身支度を済ませる。準備と言っても大きめのリュックに、衣類やお金を詰めるだけなのですぐに終わった。そして俺は武器庫に寄り剣を1つ持っていく。どこにでもあるような剣だ、1つくらい持っていっても怒られはしないだろう。



 俺は誰かに見つかる、ということは無くスムーズに門を出れた。少し変なくらいだ。きっと父親が何かをしたのだろう。こっちとしては好都合だが。そんなに俺の事が邪魔なのだろうか? 一応俺も他の兄弟と同じ家族なのにな。



「まあいいか。さてこれからどこに行こうか」



 実はまだ何も決めてないのだ。

 とりあえずはレベルってやつを上げるとしよう。魔王ってのを倒さなくちゃだし。

 俺は朝の街道を進む。まだ人通りが少なく、 街がよく見える。すると後ろから何やら俺を呼ぶ声がする。聞き覚えのある声、そうミオンだ。



「ベルノエット様! はぁ、はぁ、酷いじゃないですかベルノエット様! 私を置いていくなんて!」



 ミオンが息を切らしながら俺に訴えてくる。 

 やっぱり一声かけとくべきだっただろうか。だがミオンに言ったところでどうにもならない。一緒に、行く理由がないし。



「だってお前が俺と一緒に行く理由がないだろ? それにお前はメイドになったばっか――」

「――そんなの! そんなの関係ないのです!! 私はベルノエット様と一緒に行きたい!! ベルノエット様のそばに居たい!! ただそれだけなのです!!」

「なんでそこまで俺にこだわるんだ?」

「っ! それは……女心は詮索不可なのです!!」



俺はもしかしたら一生女心という物を理解出来ないのかもしれない。



「それにもう俺は貴族では無いぞ? 権力なんてこれっぽっちも」


 父親は言っていた。デルミオーカスを名乗るな、と。つまり俺はデルミオーカス家と縁を切られたという事にになる。



「そんな事どうでもいいです。ベルノエット様がいれば、地位とか権力とかそんなものどうで良く思えてしまうんです」

「そう……なのか?」

「とにかく! 私はベルノエット様について行きます!! いいですね!!」

「ああ、いいぞ?」



 こうして半ば強引に俺とミオンの二人旅が始まった。

 この先どうなるかは分からない。だが仲間は絶対に死なせない、何がなんでも守ると俺は決めている。もう二度とあんな思いはしたくないからだ。


 それからしばらく歩いた頃、俺とミオンはどこに行くかという話をしていた。とりあえずは金が必要なわけだ。ついでにレベルも上げたい。

 そうなると冒険者ギルドしか残っていなかった。金を稼ぎながら強くなれるし、何より誰でもなれるからな。

 俺達は冒険者ギルドを目指し、再び歩きはじめる。

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