第14話 短期決戦の果に
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「ウオォーーンッ!!」
巨人は大きな雄叫びを俺達に向けて上げる。その巨人の肌は人間とは違く灰色をしていた。よく見ると顔の作りなんかも違う。ちょっとおかしな顔だ。だが今はそんな悠長なことを考えている暇はない。その巨人はまさに俺を狙って攻撃しようとしてきてるのだから。
巨人はその長い腕をムチのように使い、ライトを攻撃しようとしているのだ。ライトは剣を抜き、戦闘態勢に入る。
「『フォルテート流 修羅ノ型 流し斬り』
*
ライトはその長い腕の攻撃を剣で舐めるようにいなす。だがライトの予想以上に巨人の皮膚は硬く、ライトの剣は弾かれてしまった。本来ならば斬撃が通り、相手にダメージを与える技なのだ。だが今回は通じなかった。今までライトが出会った生物の中で間違いなく最強と呼べるだろう。
「ったく硬ぇなこいつ。手がじんじんしてやがる」
それからライトと巨人の攻防は続いた。ライトが攻撃すれば巨人が防ぐ。逆に巨人が攻撃すればライトが防ぐ。何度もそれを繰り返した。どちらも決定打に欠けると言った感じだ。
先に動いたのは巨人の方だった。
「バカッ!! そっちは!!」
巨人が狙ったのはライトではなくファレス達だった。戦いに於いて弱い者から倒すというのは常識で、それを卑怯と呼ぶのは愚者ぐらいだ。だが実際にやられるとそうも言っていられない。
巨人はその体には合わない速度でファレス達の方をへ向かい、攻撃を仕掛ける。ファレス達がその攻撃に反応出来るはずもなく、ただ棒立ちしているという状態になっていた。だがそれを間一髪の所でライトが庇う。
「『フォルテート流 修羅ノ型 返し斬り』」
ライトは巨人の腕を何とか弾くことが出来た。だが同時に自分も飛ばされてしまったのだ。その勢いは凄まじく、壁にぶつかるまで弱まる事が無かった。
対して巨人は腕を弾かれただけ。ライトが見た瞬間には次の攻撃に入っていた。
「やめろ·····やめろぉーー!!」
「ウォーーッ!!」
ファレスが吹き飛ばされ、クリルが踏み潰され、ガイストが握りつぶされる。それをライトはただ見ている事しか出来なかった。
またこれか·····。俺はまた奪われるのか。大切なものを。やっと出来た、心から信じてもいいと思えるようなヤツらを。ガイストを·····クリルを·····ファレスを。俺はなんの為に強くなったんだ。·····いや、俺は弱い。だから奪われる。何一つ守れやしない。
”あいつが憎い……あいつらが憎い。自分の弱さが憎い。殺してやりたい、ぐちゃぐちゃにしてやりたい、消してやりたい。――強くなりたい。
ライトの中ではそのような感情でいっぱいになっていた。心が絶望と怒りに満たされていた。そんなライトを巨人は嘲笑うかのように見ていた。それにライトは気づいてしまった。その時、ライトの中の怒りは頂点に達した。
「よくも·····よくもファレス達を。殺す、殺してやるっ!!」
ライトは怒りに身を任せる。だがライトはもうあの時とは違う。あの無力で何も出来ないライトではないのだ。
「『フォルテート流 鬼ノ型!! 鬼人 攻ノ舞!!』」
ライトの怒りに満ちた攻撃が何度も繰り出される。巨人の腕を斬り、足を斬り、肉を断つ。それを何度も、命尽きるまで繰り返した。
そして気づけばライトは返り血まみれだった。まさに短期決戦と言えるだろう。だがライトには失ったものは大きい。
俺は何だ。なんの為に生きて、なんの為に強くなろうとしたんだ。なんでまた失った。誰のせいだ。俺が弱いからなのか。ならばもっと強くならなくては。誰からも奪われないために。全ては自分のために。
「ファレス、ガイスト、クリル。今までありがとうな」
ライトは3人を埋葬すると今までの事を思い出していた。時間にすると短いが出来た絆にはそんなもの関係ない。ライトはそう考えていた。
埋葬も終わり別れを告げるとライトは出口を探す。だがどこを探しても見当たらない。一面全てが光る壁で覆われている。するとライトすぐ側にある魔物が現れた。
「クピッ」
「っディメンションラビット·····」
ライトの体はもうボロボロだ。またさっきのような魔物が出たら今度こそ終わりだ。そしてディメンションラビットの周りには魔法陣が形成されていた。今度こそ終わり、そうライトが思った瞬間。現れたのは魔物ではなく、1本の剣だった。剣が現れるとディメンションラビットはどこかえ姿を消してしまった。
「何だ·····この剣は」
そう思ってライトが剣にふれた瞬間、ライトの頭の中に誰かの声が響き渡った。
《憤怒を確認しました。これより解析に移行します》
次の瞬間、ライトの頭に猛烈な痛みが伝わり、ライトは気絶してしまった。
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