8. 『ニューゲーム』
早速、ステータスの項目を選ぶ。
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<ステータス>
職業/レベル:ゲーマー/Lv5 (魔術士/Lv10)
HP:48(15+14+19)
MP:62(10+14+38)
攻撃:48(19+14+15)
防御:42(15+14+13)
魔攻:60(10+14+36)
魔防:47(12+14+21)
速度:54(26+14+14)
幸運:25(5+10+10)
スキル:ロールプレー、ヘルプ、ニューゲーム
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レベルアップに伴い、順調にステータスが成長している。
グリーンスライムとはいえ、命を奪う経験はレベルアップに効果的のようだ。
たった一日で『ゲーマ』レベルが3、『魔術士』レベルが7もあがっている。スライムだと命を奪ってる感があまり無いが、そのほうが初心者の俺には都合が良い。
一方、職業ごとのレベルアップ速度の差は依然として謎だ。
お、『ヘルプ』って項目と『ニューゲーム』っていうスキルが増えてる。
早速『ヘルプ』を使ってみようとするが…。
どうやって使うんだ?
『スキル』の項目から『ヘルプ』を選択してみたが何も反応しない。その後も色々試してみたが、解決に至らず保留にする。
次は、お待ちかねの『ニューゲーム』だ。
これはゲームとかだと新しくゲームを始めるときに良く使うけど…。
『スキル』の項目に移動し、『ニューゲーム』を選択してみる。
《スキル:『ニューゲーム』を使用しますか?》
イエスだ!
《『職業』を選択してください。》
じゃあ、賢者で。
あえて以前選べなかった『職業』を試してみる。
《スキル:ニューゲーム 『賢者』は選択できません。》
じゃあ『勇者』で!
《スキル:ニューゲーム 『勇者』は選択できません。》
やっぱり無理か。ただ、「選択できない」ってことは、職業として存在しているってことだよな。
実際に聡一は『勇者』だったし、『賢者』の人もいるってことだろう。
今はとりあえずあきらめよう。
俺は、結局『戦士』を選ぶことにする。
今は使える魔術も無いし、日々の生活を維持することが先決だ。
グリーンスライムや低ランクの魔物を狩ること考えた場合、HP・攻撃・速度に優れた職業にしておきたい。
『ニューゲーム』の文言から、レベル1になってしまうリスクはあるが、自称『魔術士』のままだと、攻撃とか早さとかほとんど伸びなさそうだし。
《スキル:ニューゲーム 『戦士』を新しくロールプレーします。》
『戦士』を選択した後、ステータスを確認する。
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<ステータス>
職業/レベル:ゲーマー/Lv5 (戦士/Lv1)
HP:49(15+14+20)
MP:25(10+14+1)
攻撃:53(19+14+20)
防御:44(15+14+15)
魔攻:24(10+14+0)
魔防:31(12+14+5)
速度:55(26+14+15)
幸運:25(5+10+10)
スキル:ロールプレー、ヘルプ、ニューゲーム
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やはり、『戦士』はレベル1からのスタートとなっている。
だが、『ゲーマー』はレベル5のままだし、予想通りHP、攻撃、速度は『魔術士』より『戦士』の方が良さそうだ。
念のため、『ニューゲーム』で『魔術士』を選んでみる。
《スキル:ニューゲーム 『魔術士』は過去実績があるため、途中からロールプレーします。》
なんと、『魔術士』に戻してみたところ、レベル5から再開できた。
これは、色んな職業を移り変わっていけるってことだよな??
思わぬ収穫にガッツポーズが飛び出す。
とはいえ、当分はグリーンスライム狩りだろうから、『戦士』に戻しておく。
翌朝、俺はギルドに寄る前に、服の予備を揃える為に商店街に来ていた。
「おい、兄ちゃん。かけだしの冒険者だろ?」
声の方向に振り向くと、どうやら本屋の店員が声をかけてきたようだ。
なかなかガタイのいい男性だ。
「そうですが。」
「やっぱりな。そうだと思ったぜ。動きがふわふわしてるからな。」
「どんな感じですか。ふわふわって」
「いや、剣の重みで体の軸がぶれてるし、装備も揃えたてって感じだしな。」
「ぐっ…。」
「まあまあむっとすんなって。職業はあるのかい?」
「一応『戦士』ですが…。」
「おう、いい職業持ってんじゃねーか。ちょうどお勧めの魔術書があるぜ。」
「売り込みですか?あまりお金無いっすよ。」
「おいおい、あんまケチケチしてると死ぬぜっ?」
男が書棚から本を二冊持ってくる。
「これは『身体強化』の魔術書だ。『戦士』だったら真っ先に覚える魔術といっていいぜ。その様子じゃ覚えてないんだろ。」
男の言うとおり、『身体強化』は『戦士』必須の魔術だ。『戦士』の長所である攻撃力を高めてくれるだけでなく、速度も底上げできる。しかも『戦士』ならば『身体強化』の習得が相当早いらしい。
「確かに覚えてないですが、今ホントにお金無いんですよね。ちなみにいくらですか?」
ふっかけられないように、興味無さげな返事をしてみる。
「今なら千クルで取引してるぜ。」
「高いっすよ。そんなん買ったら晩飯抜きっす。」
「わかったよ。じゃあ、こっちの『ライト』の魔術書もつけてやるよ。ダンジョンとか夜の狩りとかに便利だぜ。」
新人冒険者の欲しがりそうなところを的確に突いてくる。
「っ。わかりました。買います。」
「お、いいのか?意外とあっさりだな。」
「いや、お兄さんなら、色んな魔術書紹介してくれそうだと思ったから。」
「もっと買ってくれるのか?」
「今後の話ですよ、今後の!」
「まぁ、自分で言うのもなんだが、俺から買うのは懸命な判断だ。魔術書を売ってる店は王都には山ほどあるが、酷い店だと偽物を売ってるとこもあるからな。」
「そんなことしたらすぐバレそうですけど?」
「それが案外大丈夫でな。覚えられない原因が、魔術書なのか本人なのかはっきりしねぇってとこがミソだ。本物の魔術書でも覚えられない奴は覚えられねえし。」
「なるほど、偽物だって証明する方法が無いのか!」
「そういうこった。同じ魔術書を二冊以上も買うやつなんざ中々いないしな。仮に二冊目で覚えたとしても、一冊目で習熟度が上がっていた、としらをきられちゃ追求できない。」
なるほど、良いことを聞いた。でも…。
「本物って証明することもできないのでは?」
「極論だとそうなるが、まあ信頼してもらうしかないな。俺は始めての客には簡単な『ライト』の魔術もつけることにしているんだ。」
「分かりました。ちなみに『ライト』ってどのくらいで覚える人が多いんですか?」
「んー。俺の知ってる限りだと、半年くらいで覚えるやつが多いな。」
「ながっ!!」
「おいおい、魔術の習得には普通年単位の時間がかかるんだぜ。噂の『召喚者』様たちなら話は別なんだろうが。」
確かに、隆弘は一日で習得していたな…。
「まぁ、お前の場合は『戦士』と『身体強化』の組合せだからな。ひょっとしたら数日で覚えるかもな。」
「そんな相性良いんですか?」
「ああ、覚えるだけなら相性はすこぶる良い。だがな、『身体強化』の魔術は覚えてからの鍛錬が地獄だ。特に『戦士』は他の職業と比べて魔術の維持時間が短く、威力もあまりないからな。」
そんな落とし穴があるのか。確かに『戦士』のMPは少なかった気がする。
威力も魔攻が低いと効果もそこまで大きくないのかも知れない。
「おっとしゃべり過ぎちまったぜ。買うってことで良いよな?」
「ええ。買いますよ。」
「まいどっ!」
『身体強化』と『ライト』の魔術書を入手する。
『ライト』は王城の訓練中に覚えていれば「無料」だったのだが、有用性を考えるともったいないとは言ってられない。
少し予定は狂ったが、服の予備も買ってギルドに向かう。
「おはようございます。すんすん、大丈夫そうですね。」
「何が大丈夫なんですか?ロミーさん。」
「え、えっと。なんでもないですよ~。昨日はグリーンスライム討伐お疲れ様でした。」
「戦闘以外で酷い目に合いましたよ。ほんとに。」
「ちなみに今日はどの依頼を受けられますか?まだGランクですが。」
「当分はグリーンスライム討伐で行きたいと思ってます。臭いはアレですが、稼ぎは悪くなさそうなので。」
「ありがとうございます。ギルドとしては大助かりです!」
「じゃあ、行ってきます!今日は換金の時、逃げないで下さいね!!」
「そ、それは…。私は受付なので…。あはは。」
ロミーの引き笑いに背を向けて、昨日と同じグリーンスライム討伐に出発する。