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3. 本当の職業


 王宮内の訓練場に併設された食堂で夕食をとると、それぞれ小部屋に連れて行かれた。


「皆様には、訓練や食事以外の時間は、基本的にこちらで用意した小部屋で過ごしてもらいます。明日から訓練が始まります。朝食の際に合図がありますので、それまでゆっくりとくつろいで下さい。」


 引率の兵士が俺たちの部屋について案内する。

 どうやら部屋は個室のようだ。相部屋でなくてほっとする。まあ個室だろうと陽キャの奴らは誰かの部屋に集まって騒ぐんだろうが。


「やっと1人になれた。とりあえず現状把握から始めてみよう。」


 個室のベッドに身をなげだした俺は、ずっと気になっていた視界のポップアップに注目する。


「テンプレだと、ステータスとかメニューって呼ぶと開くんだっけな。お、きたきた。」


 メニューといった瞬間、ポップアップが拡張する。


「えっと、いくつかの項目に分かれているな。」


 メニューには、大きく『ステータス』、『アイテム』、『スキル』、『ロールプレー』の四つの項目に分かれている。まずはステータスからだ。脳内で『ステータス』と念じると、『ステータス』の項目が拡張される。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

<ステータス>

職業/レベル:ゲーマー/Lv1 (魔術士/Lv1)

HP:30(10+10+10)

MP:30(0+10+20)

攻撃:31(15+10+6)

防御:24(10+10+4)

魔攻:28(0+10+18)

魔防:27(5+10+12)

速度:35(20+10+5)

幸運:25(5+10+10)



スキル:ロールプレー

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ん?これは強いのか?弱いのか?基準が無いから分からん。職業は…『ゲーマー』ってなんだ?おれは『自称魔術士』だったはずだが…。一応カッコ付きで『魔術士』ってなってるけど。

 まさか、俺の本来の職業は『ゲーマー』だけど、『魔術士』になりきっているってことか?それならさっきの職業適性確認の際、『自称魔術士』だったのにも納得がいく。


「自称ねぇ…。」


 思わずため息が漏れる。ステータスの数値はカッコとかいろいろ気になるが保留だ。強い弱いは現時点で不明だし。まずは他のみんながどのくらいの数値なのか調べてから考えよう。

 スキルのロールプレーは、やはりRPGとかの職業になりきるスキルってことだろう。もしかしたらさっき石版に触れる前に出たポップアップで、『魔術士』以外の職業を選べたかもしれないが、『賢者』とかは選べなかったし、何かしら制約があるのだろう。


 次に、『アイテム』の項目を調べる。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

<アイテム>

なし

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 確かに何も持ってないんだけど、なしって表現されると落ち込むわ。まぁこれからのがんばり次第だな。次は『スキル』の項目か。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

<スキル>

ロールプレー

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ステータスのところにも表示されていたが、俺のスキルはロールプレーだけらしいな。最後は一番気になる『ロールプレー』を選んでみよう。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

<ロールプレー>

ロールプレー中:魔術士/Lv1

過去のロールプレー:なし

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ん?ロールプレー中が『魔術士/Lv1』はわかるが、過去のロールプレーって項目もあるのか。やはり、ゆくゆくは『魔術士』以外に職業を変えることができそうだな。


 その後、俺は職業を変える方法を『メニュー』の中で色々試してみたが、どこにも見つからなかった。





 翌朝、ベルが鳴るとともに、兵士からの朝食の合図があった。


「召喚者の皆様、朝食の準備ができております。食堂へお越しください。」


 結局俺は、メニュー画面の機能を色々試したりしていて、少ししか寝ることができなかった。みんなあまり寝れなかったのか、大半が眠たげな目をしている。中には、泣き腫らしたのか、目を真っ赤にした女子もいる。当然といえば当然か、いきなり異世界に召喚されて魔族と戦えと言われたのだ。

 朝食は、固いパンとやたら塩味の濃いスープ、少ししなびた野菜と干し肉だった。正直あまりおいしくない。このときばかりは、日本の食文化の豊かさを痛感する羽目になった。まだ一日も過ごしていないが、グルレシア王国の文明レベルは産業革命前のヨーロッパ程度だと推測される。冷蔵技術も輸送手段も現代日本から比べると大きく劣ると思われるため、食品の鮮度や味付けについては目をつぶるしかないだろう。




「私はアルフォンス・リューレだ。これから3ヶ月間君たちの教官を務めることになった。主に、剣術を担当する。よろしく頼む。」


 金色の髪をなびかせながら、鎧に身を包んだ背の高い男性が挨拶をする。朝食後に訓練場に集められた俺たちは、これから始まる魔族との戦いに向けた説明を、アルフォンスから受けている。


「君たちは、昨日召喚され、皆すばらしい才能を持っていると聞いている。教えるのが楽しみでしょうがないよ。」


 屈託の無い笑みをうかべてアルフォンスが告げる。アルフォンスは、男の俺から見てもイケメンだ。しかも長身・金髪。見かけは若いが異世界から来た俺たちの教官を任されるのだから、おそらく相当優秀なのだろう。女子の一部からうっとりした嘆息が漏れる。


 アルフォンスから、魔族との戦いに向けていくつか説明を受けたが、まとめると次のような内容だった。


・これから3ヶ月間訓練し、訓練後から魔族との戦いに参加する。

・訓練は座学と実技からなり、魔族の知識と戦闘術の両方を鍛える。

・1ヶ月は全員が共通した訓練だが、2ヶ月目からは職業ごとにそれぞれの指導教官の下で訓練する。


「1ヶ月は全員同じ訓練か…。やっかいだな。」


 ある程度予想はしていたとはいえ、和馬や匡達と同じ内容で訓練することになる。いやな予感しかしない。


「じゃあ早速始めようか。いきなりだが、みんな剣を持ってみて。」


 アルフォンスが、全員に剣を持つように指示を出す。


「みんな、準備はいいかい。今日は初めてだから、武器の扱いの初歩の初歩を学んでもらう。まずは好きなように構えてみて。うん、君はいい構えだね。柴橋くんと言ったかね。さすが勇者様だ。隣の君はもう少し肩の力を抜いた方がいいね。」


 アルフォンスが、各々の構えについて一言一言コメントを出していく。


「今、好きなように構えてもらったのは、君たちの戦闘経験とセンスを測るためだ。戦闘経験でいうと…、君名前はなんていうの?」


 アルフォンスが沙織の隣にいる小柄な女子に目を向ける。


「大戸、美奈…。」

「君は戦闘経験があるようだけど。どこで学んだのかな。」

「私は剣道部だから。」

「ケンドウブ?」

「えっと、美奈ちゃんは剣術を習っているの。」


 アルフォンスの問いかけに大戸美奈が答え、沙織が捕捉する。


「なるほど、理解したよ。道理で動きが慣れているわけだ。あと、根田和馬君だったかな。君からも武器になれている雰囲気を感じるんだが。」

「オレかぁ?まぁ喧嘩で刃物使ったこともあるしな。」

「そうか。実戦経験者か、頼もしいな。」


 アルフォンスに目をかけられ、和馬が得意げな顔をする。アルフォンスの中では喧嘩イコール実戦らしい。


「現時点で実戦に心得のあるものもいるようだが、魔族との戦いは君たちの想像を絶するほど過酷だ。訓練も厳しくなると考えてもらいたい。そして、戦闘技術だけでなく精神面でも、戦闘慣れしていってもらいたいと思っている。」


 アルフォンスから半日実技・半日座学の指導を受け、初日の訓練は終了した。


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