第80話 神に仕える騎士を名乗る者達
メセ聖堂の司教達を追い払ってから2週間後。
今度は教会騎士団と名乗る人達がやってきた。
白地に銀の縁取りがしてある豪奢な鎧を身に纏っている、屈強な感じの3人、女1人男2人が扉の前に陣取っていた。
そのなかの、リーダーらしき朱い髪の女性が、恐い顔をしながら前にでてきた。
先日の司教達を追い返したことが問題になったのだろうか?
でも、帰らせただけだし、僕のことは忘れろと細工しておいたはずだ。
そんな僕の思惑を余所に、女騎士は用件を伝えてきた。
「お前が薬師のヤムだな。
今からパウディル聖教の総本山であるパウディル神聖国に来い。
拒否は許可されない。
お前がサキュバスであることも承知している。
その為我々は全員魅了対策をしている。
さらに、この家の近くにいた子供を我々が保護している。
お前が私と共に大人しく聖国に来ないというのならば、その子供を背教者として扱わねばならなくなる。
場合によってはこの街そのものを背教者の巣窟として対処せねばならなくなる。
何よりこの命令を拒否するということは、神パウディルの意思に逆らったということになる。
自分の立場を理解したか下等な淫魔よ。
理解したらいますぐ出立準備をしろ。
5分やる。1秒でも過ぎたら保護した子供もこの街も背教者だ」
いや、用件じゃなくて脅迫だった。
多分子供というのはルルナちゃんの事だろう。
この人達は、あのギルド長の娘と同じ、卑怯な人達だ。
僕に言うことを聞かせるために、なんの関係もない人を人質に取り、簡単に命を奪うつもりだ。
前世では僕の味方はいなかったから、そんなことは起こらなかったけれど。
それにしても、こんなことをしてでも教会の意思に従わせるのが、正しいパウディル聖教の教えだったりするのだろうか?
僕の知っている宗教家達は間違ったパウディル聖教の人なのだろうか?
僕としては、この教会騎士の人達が間違ってると思いたい。
ともかく僕は、製薬道具とポーションと薬の全て、金剛杖とフード付きマントを、神様のバッグに詰め込んだあと、女騎士の前に立った。
「4分か。なかなか殊勝だな」
女騎士は不機嫌そうにそういった。
「ルルナちゃんに会わせてもらいます。無事が確認できなければ同行しません」
僕は、あったばかりの騎士団のこの人達に対して本気で腹を立てていた。
これでもしもルルナちゃんになにかあったら。
街の人達になにかするようなことがあったら。
僕は、神様達に教わったことの全てを用いて、この人達を排除するかも知れない。
厄介な人達の登場です
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